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「Bitter」  作者: 神井
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9



和也から絶交を言い渡されてからというもの



賢一はみんなが練習を終えて帰宅したあとも一人プールに残って練習していた。



コーチに叱られて



「このままじゃいけない」と思ったのもあるが、



何かを一生懸命やっていないと



どうにかなりそうだったからだ。



一人になると和也の顔がちらついて落ち着かなかった。



賢一にとって和也はかけがえのない存在だ。



勉強ができるからではない。



勉強なら先生に教えてもらえばいい。



けれど賢一は和也に教えてもらいたかった。



「全くお前はしょうがねえ」と文句を言いながらも



丁寧に教えてくれる和也が好きだったのだ。



他の友人にはない何かが和也にはあった。



もう二度と和也と仲直りができないのなら。



もう「親友」なんて持ちたくない。



どんなに優しい人でも



どんなに賢い人でも



和也にはなれない。



和也ほど愛せない。



そう思った。



もう既に二人は親友以上の関係なのかもしれない。



賢一が水面から顔を出すと


大きな青いビーチボールが


顔を直撃した。



「ぶっ……!」



「ケンちゃん偉いね〜。こんなおそくまで練習しちゃってー。」



また例の奴らだ。



「そんなにがむしゃらになってどうしちゃったのかな〜?和也キュンにふられちゃったのぉ?最近一緒にいないもんねー。」



「…………。」



当たらずとも遠からずである。

賢一の心は悲しみに沈んだ。



「きゃっ図星ぃ?」



彼らは賢一の腕を掴むとプールから引きずりだした。



「ちょっ……何するつもりなんだっ!?」



「こうするんだよ!」



彼らは賢一の手足を抑えつけると、



口、腕、脚をガムテープで拘束した。



「ケンちゃん、水泳部のエースなんだっけ?まあ、その格好じゃあオリンピック選手だって泳げないよな。はははっ」



「!?」



次の瞬間、彼らは手足が不自由になった賢一をプールに蹴落とした。



「ざまーみろ!はははははっ」



賢一の視界に青い世界が広がった。



彼らの笑い声が遠くなる。



(こんなふうに…和也も…)



浮かんできたら、沈め、



浮かんできたら、沈め、を



何十回、いや何百回されただろう。



「やべえ、このままじゃ死んじまうぜ。」



賢一が引き上げられた瞬間、



「ちょっとあなたたち!何やってんの!」



女子生徒の凛とした声が響いた。



「やべえっ」



奴らはそっこうで逃げていった。



賢一に女子生徒が駆け寄ってくる。



「斎藤君、大丈夫!?」



彼女は賢一の手足や口のガムテープを剥がし始めた。



賢一はだるそうに目を開けた。



最初は視界がぼやけてて誰かわからなかった。



しかし、だんだん目の前がはっきりしてくると…見慣れた顔であることがわかった。



ヘアピンで止めた長い髪。


小柄だが、しっかりした身体つき。




「内海さん…」






つづく。

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