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「Bitter」  作者: 神井
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8



拒まれた。



賢一はそう思った。



ショックのあまり



雨の中呆然と立ち尽くすしかなかった。



いじめっ子たちは



賢一のことを



「気が弱いうえに単純バカだからちょっとからかえばなびく」



と予想したが、それは間違いだった。



賢一はいじめなんて恐れてなかった。



ホモだとか、なんだとか、噂されることより



和也の方が大切だからだ。



和也と同じ辱めを受けられるなら本望だった。



いや、むしろ



和也を助けることができないのなら



和也と同じ苦しみを与えられたかった。



自分はいつだって和也と同じ気持ちでいたかったのだ。



それが親友だから。



(和也…もう絶交なのか?)



結局自分は和也の何だったのか、と自分を責めた。




一方、精神的にかなりまいってしまったのは



和也の方だった。



賢一は和也を「親友」と思っているから



こんなことは何でもないのだろうが



和也は図星なだけに



ダメージも大きかった。



もうこんなことになった今、



賢一を突き放すしかない。



彼から離れればこの想いからも解放されるかもしれない。



無論、喜びもなくなるが。





それからというもの



二人の生活はめちゃくちゃになった。



和也は数学のテストでひどい点数をとり、



担当教員から呼び出しをくらった。



「岡咲っ…!どうしたんだ、この点数は!斎藤じゃあるまいし!しっかりしてくれよ!」



賢一は水泳のタイムが大幅に伸びてしまい、コーチに叱られた。



「最近のお前の泳ぎは何なんだ!全然なってない!私はお前を買い被っていたのか?」



勿論、自分達の思惑どおりになったいじめっ子たちは大喜び。



「かーずやくんっ。最近どうちたのかにゃ〜。ちょーし悪いねー。」



和也を丸く囲んで罵る男子生徒たち。



「ケンくんにフラれちゃったのぉ?それとも変な物でも食べちゃったのかなぁ?例えば腐りかけの女とか。アハハハハハっ。」



和也の後ろにいた男子生徒が鉛筆削りの削りかすを和也にふっかけた。



和也はそれでも人形のように大人しくしていた。



「何すかしてんだよ。落ちぶれた分際でさ。お前のそういう高慢ちきなところ、まじむかつく!」



今度は中心にいた、冷たいメガネの男子生徒が和也に墨汁をぶっかけた。



それでも和也は無反応だった。

やり返す気力もないのだろうか。



「なんとか言えよお!ゴキブリ!」



今度は横にいた茶髪の男子生徒が和也に向かってゴキブリスプレーを発射した。


和也の黒髪が真っ白に染まっていく。



先ほどのメガネの男子生徒が和也を机ごと蹴り飛ばすと、和也の頭を踏み付けた。



「落ちぶれたお前なんて、いじってもちっともたのしかねーよ。アハハハハハっ」



和也の周りにいる男子生徒たちが一斉に笑い出した。



「………っ!」



ここでやっと和也が口を開いた。



「……………やるなら俺だけにしろ。」



「え?聞こえなーいっ。」



茶髪の男子生徒が聞き耳を立てた。



「…………………やるなら俺だけにしろ、賢一には手を出すな。」



和也は低い声で呻いた。



その言葉に一瞬、みな固まった。



「なにかっこつけてんだよ。馬鹿じゃねえの!」



「ゴキブリが口利いてんじゃねーよ!」



彼らは少し動揺したものの、和也を痛めつけ続けた。




つづく

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