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「Bitter」  作者: 神井
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「このウスラボケのすっとこどっこいがっ!」



殺風景な勉強部屋に和也の怒声が響く。



「なんで、Don't forget to turn the light offが『左に曲がるのを忘れないで』になるんだよ!馬鹿じゃねーの。中学からやり直せよ!」



和也はいらつきにまかせ、壁を叩いた。



「す、すまねえ!」



おどおどした声で謝る賢一。



賢一がテストで赤点をとって和也に泣きつくというのは毎度のことである。



そのたびに和也は文句を言うものの、丁寧に教えてやるのだった。



「お前なー、名前が賢一なんだからちっとは賢くなれよ!」



「和也こそ、名前の通り和やかになってくれよぉ!」



「お前がいらいらさせるからだろ!お前が賢くなったら和やかになってやるよ!」



男子高生にありがちな売り言葉に買い言葉なやりとり。



(あーあ、和也に憧れてる女子達がこんな状況をみたらなんて言うか。)



賢一は思った。




和也がこんなにも感情をあらわにしているのは賢一の前だからである。



学校ではこうはいかない。


和也は看護系の賢一とはクラスが違うため、一日中誰とも口を利かないことがほとんどだ。



表情すら変えない。



そこが女子には

「クールで渋くて一匹狼でかっこいい」

と思えるのだろうが…。




賢一はあれやこれやと思いを巡らせていた。



しかし次の瞬間、何かを思い出したように英語の宿題に戻った。



このままボーッとしていたら、



「何ボサッとしてんだよ!」



と、和也に教科書でひっぱたかれる。



彼とは10年以上の付き合いではあるが、



ここ数年和也の態度がどうにも可笑しい。



以前にも増して荒々しいのだ。



元々口が悪い和也だから大して気には止めなかったが、


最近の彼と言ったら

話の最初に「馬鹿!」と言い、

話の最後にも「馬鹿!」と言う。



さすがに鈍感な賢一も、



だんだん自分が嫌われ始めているのではないか



という不安が頭をよぎり始めた。




思えば、昔から自分は和也に頼りすぎている。



普通の5教科だけでなく、


家庭科や情報などの実技教科まで和也に教えてもらうことも多々あった。



(………俺は体育しかできない運動ばかだ……。)



そんな自分が和也の親友であっていいものか。



成績優秀、スポーツ万能な和也の。



和也に申し訳がない気持ちでいっぱいで



胸が塞がる思いの賢一だった。




……つづく……

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