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「ケン君!今日クッキー作ってきたの!食べてちょうだいっ。」
「ありがとう、千春。」
賢一と千春は清い交際を始めていた。
二人が付き合いだしたことで、
賢一と和也の噂は消え、
いじめっ子も手が出せなくなっていた。
「ヒューヒュー。ラブラブだなっ」
賢一の友人たちが二人をひやかす。
「よせよおっ!」
賢一は照れていたが、
その顔はどこか寂しそうだった。
千春はそんな賢一の顔を覗き込んで
茶目っ気が含んだ声でこう言った。
「何を考えているか当ててみようか?」
「え…?」
賢一は動揺した。
千春はますますにこにこ微笑みながら続けた。
「岡咲君のことでしょ?
きっと彼も同じことを考えているわよ。
10年間続いた頼もしい友情なんだから。」
(……女の子ってなんて敏感なんだろう。)
賢一は度肝を抜かれてしまった。
「私はね、岡咲君みたいな気難しい人とも大親友になれる、そんな優しいケン君が好きなの。」
「千春………。」
千春は賢一の手を握った。
「もう一度、向き合ってみたら?」
千春は力強く言い聞かせるように言った。
賢一は千春の手を握り返していた。
…一方、学校に戻った和也はというと。
屋上や校庭のベンチで笑い合う
賢一と千春をみては、
切ない気分になっていた。
羨望もあったかもしれないが、
もう賢一と話すことはできないのか、という
悲しみの方が大きかった。
同時に
いくら自分の気持ちを隠すためとは言え、
賢一にもっと優しくするべきだった、
もっと感謝の気持ちを示すべきだった、
という後悔も押し寄せてきた。
和也は自分の幼さが情けなくなった。
「賢一のために」と言っても、
結局自分の主観でしか見てなかった。
いつも賢一に「馬鹿」と言っていたが、
馬鹿は自分の方だ。
自分があんなにひどい態度で接しても
賢一はいつも優しかった。
いつも自分を支えてくれた。
それは和也が特別な存在だからと言うよりは
賢一の人柄がそうであるからなのかもしれない。
しかし、だからこそ惹かれた。
だから愛した。
賢一がいつも隣にいたこと、
それは当たり前のことなんかじゃなく、
かけがえのないことだった。
素晴らしいことだった。
賢一は自分に伝えてくれた。
素直な、誠実な気持ちを。
なら、次は自分が賢一に気持ちを伝えなくてはならない。
和也はそう思った。
続きます




