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「Bitter」  作者: 神井
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内海(うつみ) 千春(ちはる)



賢一と同じ看護クラスであり、



同じ水泳部でもあった。



実は席も隣同士。



活動的ではきはきしているタイプの女子である。



「内海さん、帰ったんじゃなかったの?」



「斎藤君が心配で帰るに帰れなかったわよ。


最近なんか調子悪そうだし、無茶苦茶するし…。


思いきって見に来たら


こんなことになってるし…。」



千春は深くため息をついた。



「内海さん…」



千春は顔を上げると真剣な眼差しで賢一の目を見た。



「斎藤君………岡咲君と付き合ってるの?」



賢一はまた慌てた。



「ま、まさか違うよー。あいつとは大親友だったけど、そんな関係じゃないよ。」



そう、大親友「だった」のだ。



もう今となっては…




「そう、それなら…



私と付き合って!」




賢一は驚いて一時停止状態だった。



「………ええっ!?つ、付き合うって、お、俺と!?」



「ずっと斎藤君のこと好きだったの!」




………




一方、和也はというと…



心の苦しみに耐えられず、



3日間学校を休んでいた。



今まで無遅刻無欠席だった和也が。



まともに飲食も、睡眠もとれない状態だった。



一日中クローゼットに閉じこもっているのだ。



彼方も自分と同じ短所を持つ弟の処理に困っていた。



「昨日先生から電話あったわよ。


最近あんた変だって。


成績は極端に落ちるし、授業中も上の空だと思ってたら、学校を休むしで、

家庭で何かあったんですか、だとさ。」



部屋のドア越しに彼方が言う。



「ぷっ」



和也は吹き出した。



「『家庭で何かあったんですか』?ははっよくゆーわ、あのクソ教師。」



見ているようで見ていない大人たち。



「和也…」



彼方は一呼吸おいて話しだした。



「あんた、自分がいなくなれば、


賢一君はいじめられないで済む、


自分のことを忘れて健康的に過ごせるって思ってんのかもしれないけど。」



…また図星だ。

全く彼方には何も隠せない。



「今ごろ、賢一君は一人でいじめに耐えてるかもしれないんだよ?

それでなくても、あんたに突っぱねられて心の支えがなくなってるかもしれないんだよ?

和也が賢一君のことを大切に思ってるように

賢一君も和也のことを何にも替えられない存在って思ってるはずだよ?

この10年間が答えじゃないさ!」



彼方の言葉に



和也は目からうろこが落ちたように思えた。



なんて自分は子供で、浅はかだったんだろうと。






つづく

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