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「Bitter」  作者: 神井
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※一応BLの形にはなっていますが、あまり腐向けではありません。



…………………




都市の郊外に建てられた公立高校。



もう少し時間が早かったら、思春期真っ只中の少年少女の笑い声が聞こえてくるはずだが…



放課後の校庭にもう人の気配はほぼない。



すでに17時を回っており、空はオレンジ色に染まっていた。



季節は秋に向かい、日はどんどん短くなっている。



それゆえ大半の部活は活動を早めに切り上げており、学校に残っている生徒はもうほとんどいない。



残っているのは生徒会役員と、一部の運動部くらいだろうか。



夕日のかかる校門の石段の上で「親友」を待つ少年が一人。



顎のあたりまである烏の濡れ羽のような黒髪。

雪を欺く白い肌。

品のある美しい顔立ち。

身長172cmのほっそりとしたスタイル。



こんなユニセックスな美貌を持つ彼の名は岡咲 和也 (おかざき かずや)。



この高校の2年生である。


容姿端麗なだけでなく、成績も理系クラスの首席でスポーツも万能な彼。



だから勿論女子には人気がある。

しかし協調性のなさから男子からは不気味がられ(多少の嫉妬もあるかもしれないが)、友人はほとんどいない。



待ち人来たらずと和也が石段の上に腰を下ろすと



彼のもとに少女が一人、駆け寄ってきた。



制服のリボンの色ですぐに1年生だとわかる。



彼女は和也の前に立ち止まると、もじもじしながら何かを言おうとしていた。



「何か用?」



和也はぶっきらぼうに問い掛けた。



すると、彼女は上擦った声でこう言った。



「わっ…私っ…岡咲先輩のこと、ずっと好きでした!つっ付き合って下さい!」



恋の告白だった。



和也はやや困惑の表情を浮かべ、顔を逸らせた。



「………悪いけど、俺彼女作るとか考えらんない。」



数秒の沈黙のあと、少女は俯いたまま軽くうなづいた。



それから回れ右をして、逃げるように走り去って行った。



彼女が袖口で目元をそっとぬぐうのが見えた。




(……あの子だれだっけ?)



思い出そうとするのは辞めた。

誰だかわからない相手から告白をされるのは彼にとっては日常茶飯事だ。




「おーい、和也〜」



聞き慣れた声に振り返ると



「親友」が息をはずませて走ってくる。



水泳で鍛えたたくましい身体つき。

健康的な肌の色。

まだあどけなさが残る薄顔。

身長は2、3cmほどしか変わらないものの、和也とは対照的な容貌だ。



彼は斎藤(さいとう) 賢一(けんいち)という。



小学校から和也の親友であり、唯一の友達である。



誰にでも優しく親切なお人よしではあるが、少々気弱でおつむも弱い。

だからこそ和也のような人間とも親友になれるのだろうが…。



「おせーよ!馬鹿!」



つい口調が荒くなる。

口が悪いのは今に始まったことではないが。



「わりー、わりー。コーチが『タイム伸びたやつ、ブッチキス』とか言い出してさ〜…あ、そういえばさっき1年のるなちゃんが泣きながら、走っていったんだけど…」



賢一は不思議そうに後ろを振り返った。



「ああ、好きだって言われたけど、ふったよ。」



賢一と同じ方向を見つめながら、和也はまた無機質な声で答えた。



「ええっ。あの子、この学校ではアイドル的な存在だよ!?もったいねー。」



「…そうなのか?どっかで見たことあるとは思ったけど…。」



和也はたじろぐ賢一をおいてスタスタ歩き出した。



賢一は慌てて追いついた。


「…つうかお前、どんな可愛い子が告ってもふっちまうんだな。女子のみんなが噂してたぜ。」



賢一が面白くなさそうにつぶやいた。



「…………。」



それもそのはず、和也が想っているのは………。





……つづく………


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