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第八話「不幸男街に出るその一」

「すごい組み合わせね」

「考えられないカップリングよ」

 教室中でひそひそとうわさ話が飛び交っている。なぜなら、この教室に不幸男の藤堂俊作と不幸女の小林里奈に加えて、幸福女の天使ちゃんがいるのだ。まさかの光景に俊作達は今や注目の的だ。俊作の教室にはその珍しさから、見物人がひっきりなしだ。勝手に写真を取っていくものまでいく。

「はい。はい。立ち止まらないでください!」

「写真撮影は禁止ですのでお止めください!」

 クラスメイトがあまりの混雑ぶりに整理誘導をしている。

「ごめんね。藤堂くん……私教室に居づらくて」

「別に気にしないで。僕は気にしてないから」

 最初は気にしていたが、俊作はもう慣れてしまった。それよりも結局天使ちゃんのご利益は大したことがなかった。今も俊作の席で小銭を数えている。天使ちゃんは俊作と友達になった以来、よく俊作の教室に来るようになった。理由を聞いてみると、俊作と友達になってから小銭をよく拾うようになったらしい。

(まあ……なんとなく不幸も減ってきているような気がするからまあいいか)


    ◇


 最近はお昼も一緒に俊作と里奈と天使ちゃんとで食べるようになった。ただ、注目されるので屋上で食べることにしている。

 里奈は異常に上機嫌だった。今まで友達がいなかったのでうれしいらしい。カラスが俊作の弁当をねらいに来るのでブロックしながら食べないといけないのが大変だが、俊作もみんなでわいわい食べるのは嫌いではなかった。

「ねえ。今度お出かけしませんか?」

「なんでまた」

「私ね。みんなでわいわいお出かけするのが、子供の頃からの夢なんですよ」

 どうやら里奈は友達とお出かけに行くのが夢らしい。健気な夢に俊作は思わず、俊作は涙が出てしまった。

「よし。行こう! おっちゃんが連れてってやるから」

「恵梨も行く!」

 突然、妹の恵梨がどこからか降ってきた。

「お前、どこから沸いて出た」

「そんなことはどうでもいいでしょ。華ちゃん。最近いないと思ったらこんな所にいたのね」

「華ちゃ……って?」

「華ちゃんですよ」

 恵梨は天使ちゃんを指した。

「天使ちゃん名前あったのか!」

「当たり前だ! この馬鹿お兄が! それにこの女も見張らないと」

 里奈を睨む恵梨。顔と顔が触れ合うくらいに里奈と恵梨はにらみ合いを始めた。バチバチと見えない火花が散った。

「望むところです」

「あたしもいくの」

「分かった。じゃあみんなで行こう」

 とにかくみんなで買い物に行くことになった。

「それと藤堂君……は普通の格好してくださいね」

「普通って?」

「そのヘルメットとか防弾チョッキのことですよ」

「小林さん。僕に死ねって言うのですか」

「お兄、恵梨もそれ止めて欲しいな。目立つんだもの。恵梨やだよ。何回も職務質問されるの」

「いや……でも」

「恵梨に考えがありますから、任せてください」

 恵梨の自信満々の表情だったが、俊作は不安だった。


    ◇


 お出かけ当日。藤堂家、俊作の部屋で恵梨と俊作が朝から今日着る服で揉めていた。

「恵梨……この装備では不安だ」

「大丈夫ですよ。恵梨も付いてますし、華ちゃんもいます」

 俊作はいつもの防弾ヘルメットと防弾チョッキなしで出かけることに不安を覚えていた。俊作はまるでエベレストに普段着で望むような気持ちはこんななんだと実感していた。

「せめて防弾チョッキだけでも……」

「置いていけ!」

「はい……」

 仕方が無いので、目立たない迷彩の柄の服装にすることにした。

「お兄……それも止めて」

「僕……何着てけばいいの」

「はあ……恵梨が選ぶから」

 恵梨は俊作の部屋のクローゼットから無難なTシャツとジーンズを引っ張り出した。

「これ着て」

「恵梨、これは軽装過ぎないか……外に出るときは肌の露出は最小限にしないと万が一車に轢かれたらどうする」

「……」

「おい。恵梨……なぜ何も言わない」

「いいから黙って着ろ!」

「目が怖いですよ。恵梨さん……」

 俊作は恵梨にメンチを切られた。恵梨は着替えを俊作に放り投げると、ドアを思い切り閉めて出ていった。俊作は黙って、恵梨が用意してくれた服に着替えた。


     ◇


 ピンポーン。

「こんにちはなの」

「おはよう。華ちゃん。あらあんたも来たの」

「来て悪いですか」

 里奈と天使ちゃんがやって来た。駅で待ち合わせても良かったのだが、俊作が不幸に襲われるといけないので家に来てもらうことになったのだ。

「天使ちゃんは制服かよ」

「これしかないの」

 見ると、天使ちゃんは学校の制服だった。俊作は天使ちゃんの普段着はどんななのか期待していたのだが、ちょっとがっかりだった。ちなみに恵梨はピンクのTシャツにジーンズ地の短パンにピンクのキャップ ボーイッシュな感じだ。

「小林さんは……もうちょっと他の無いのかよ」

小林さんはと言うと黒いシャドーストライプのジャージ上下だった。

「いや、素早く動ける服装だから、ほらほら。どう?」

「どうと言われてもな」

 里奈は無駄に軽快なフットワークを見せてくれた。

「高いんですよ。これ意外と」

 よく見ると、某有名スポーツブランドのジャージだ。確かに高い。

(個人的には機能性より、ファッション性を重視して欲しかった……。せっかくのプロポーションをもっているのに、もったいない)

「素早くは動けるんだろうけど、なんだか……なあ」

「盛り上がりにかけますね」

「盛り上がり、なんだそれは」

 里奈はきょとんとしていたが、俊作も人のことは言えないので、我慢することにした。


     ◇


 お出かけは「さまるとりあ市」で、一番大きい都市「さまるとりあ」まで電車にて行くことになった。

「え! 電車でいくのか。嫌だぞ、俺は。走っていくから気にしないでくれ」

 俊作は最後に乗った時に原因不明のトラブルで車を止めたことがトラウマで、それ以来電車には乗っていない。

「恵梨に考えがある。華ちゃんとお兄ちょっと手を貸して」

「なんだ」

「はいなの」

 恵梨は天使ちゃんと俊作の手を掴んで強引に繋がせた。

「こうすればたぶん、華ちゃんの幸福のご利益が直接もらえるんじゃないの」

 どうやら恵梨は天使ちゃんのご利益で俊作の不幸も中和されるのではと、考えたようだ。

「こんなことで上手く行くかよ」

「上手くいくよ……たぶん」

「たぶんかよ」

「とにかく行くわよ」

 俊作達一行はものすごい不安を残しつつも出発した。

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