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第十一話「不幸男街に出るその四」

 待っている間にみんなでドリンクバーを使って、一番誰が変なジュースを作れるか勝負することになった。このファミレスはドリンクバーが有名で百種類ほどのドリンクがあるので、色々な配合ができる。

 じゃんけんをして混ぜる人と飲む人を決めた。

「恵梨からいくね」

「僕が飲むのかよ」

 初めに恵梨がジュースを作って、そのジュースを俊作が飲むことになった。五分ほどした所で恵梨が戻ってきた。

「どーぞ。名付けて底なし沼ソーダだよ」

「……」

 恵梨は恐ろしいほどの濃さの緑のジュースを持ってきた。あまりの濃さに太陽の光も通さないほどだ。それとジュースのサイズが……。

「おい。しかもなんでピッチャーなんだ」

 なぜか恵梨は業務用のピッチャーに汲んできた。

「お兄のいいとこ見てみたい! 一気! 一気!」

 しかも、恵梨は俊作に一気飲みを強要してきた。恵梨は「恵梨がせっかく作ったんだから飲まないわけがないよね」という目線を寄越してきたので、俊作は飲まないわけには行かなかった。

「仕方がないな。分かった。行くぞ……ごく、ごく」

 恵梨のジュースを俊作が飲んでいく内に、顔が赤いではなく段々と緑にというか青くなっていく。体をぷるぷると震わせながらも俊作は何とか飲みきった。

「……う……うぶへええええええ」

 しかし、あまりにまずさに耐え切られず、俊作はトイレに駆け込んだ。

 五分後、真っ青な俊作が戻ってきた。戻ってきたなり、恵梨に吠えた。

「恵梨、殆ど青汁じゃねえか!」

「青汁濃度百二十%とおーい番茶とクリームソーダを混ぜてみました」

「くそ。今度お前の水筒に青汁混ぜてやる」


     ◇


「つぎはあたしなの」

 次は天使ちゃんが作ることになった。天使ちゃんはカフェオレのような色のジュースを作ってきた。それを里奈が飲んだ。

「あれ、意外とおいしいです」

「やくるととここあとみろを混ぜてみたの」

「僕もそれが飲みたかったー!」

 里奈がおいしそうにジュースを飲んでいる姿を見て、俊作はテーブルを揺すりながら悔しがった。


      ◇


「次は僕です」

 次は俊作が作ることになった。ここには古今東西、また製造中止になったジュースもある。入手経路は不明だが、懐かしジュースマニアにとっては嬉しい限りだ。

「懐かしジュース略して懐ジュー詰め合わせだ。もものてんねんすいとちからすいとはちみつれもんを混ぜて見ました」

 そのジュースを恵梨が飲むことになった。恵梨はしばらくジュースを持ち上げて、光に当ててみたり、匂いを嗅いだりしていたが、やることをやってしまったら恐る恐る飲みだした。

「どうだ? 恵梨」

「普通……」

「あっそう」

 俊作は懐かしジュースにこだわりすぎて、普通のジュースを作ってしまったようだ。


     ◇


 最後は里奈が作ることになった。

「私、実はこれやってみたかったんです。シミュレーションはばっちりですよ」

 里奈は殺る気満々だった。意気揚々とドリンクバーまで行くと、すぐに真っ黒なジュースを作って持ってきた。

「名付けてブラック――」

「お待たせしました。大王いかのイカスミスパゲッティのお客様」

「はーい。恵梨でーす」

 店員のああああああさんが料理を運んできた。料理が来たので、混ぜジュースタイムは自然と終了となった。

「私のは誰も飲んでくれないの……」

 里奈のブラックジュースは永遠に封印されることになった。ちなみに配合はコーラ+コーヒー+黒ごまジュースでした。


     ◇


 他の三人の料理は来たが、俊作の料理だけがいくら待ってもなかなか来なかった。三人ともうまそうに料理を頬張っている。

「僕のが来ない」

 仕方が無いので、近くを通ったあああああさんに聞いてみることにした。

「店員さん。僕のが来ないんですけど」

「すいません。今作らせますんで」

「あ……はい」

「作らせます? どういうこと?」

「ど……どうなんだろうね」

 里奈の顔はなぜか引き攣っていた。俊作は楽しみにしているので早く来て欲しいと思っていた。

(これから作るのならまだ時間がかかるだろうから、体調を万全にするためにトイレに行ってこよう)

「僕、トイレ行ってきますー」

「いってらっしゃーい」

 俊作がトイレ行った帰りに厨房から怒鳴り声が、聞こえてきた。

「うぉらああ! このコックがああ! はよ作れや! 俺が怒られたじゃねえかよ!(怒) ああ? いいって。いいって、適当でよお。ほら手伝ってやっから。これいれろよ。これも、これも、これも……」

「……」

(何か聞いてはいけないものを聞いてしまったな)

「大変お待たせいたしました。コックの気まぐれ味付けぱるぷんてランチです」

 席についてしばらく経ってから、俊作のコックの気まぐれ味付けぱるぷんてランチ来た。

一見すると普通そうなランチ見える。ハンバーグにスープとライスにサラダだ。

「うわ。あれ頼む人いるんだ」

「この間……で……病院に……だって」

「嘘?」

 周りから嫌な感じのひそひそ話が聞こえる。

(仮にもお店で出しているメニューなのになにを大げさな……)

「ではいただきます」

 ナイフでハンバーグを切り分け、フォークで口元に運んだ。

「お兄……おいしい?」

「……ん。意外とうまい……ん……あああああああああああああ」

「お兄??」

「藤堂君?」

「辛らあああああああああああああ! 水、水、水、お水うううう」

「藤堂くん。ブラックジュースです」

「ありがとう。ってまずううううううううう!」

「お兄。底なし沼ソーダアルファだよ」

「ありがとう。って臭! しかもまずうううううう!」

 俊作はその後、食べては水を飲みを繰り返してランチと格闘したが、結局最後まで食べ

ることができなかった。


     ◇


 ファミレスから出たら、夕方近くになっていたので、俊作達は今日の所は帰ることになった。

「ありがとう。俊作君……これで私の夢が一つかなったよ」

「ん……別に、僕も楽しかったからいいよ」

「私うれしかった。また来ようね」

 里奈はとてもうれしそうな顔をしていた。

(それほど、今日のお出かけが楽しかったんだな)

「またいつでも来ようと思えば来れるんだから、また来ようよ」

「その時は、恵梨も一緒に行くからね」

「あたしもいくの」

「分かった。またみんなで一緒に来ような」

(果たして、また一緒に来られる日が来るのだろうか。そうだったらどんなにかいいのに)

 俊作はいつまでもこんな関係が続けばいいなと思った。


     ◇


 帰りの電車は丁度帰宅ラッシュにあたったようで満員電車だった。俊作は満員電車に乗るのは初めてだったので、押しつぶされそうなこんな感覚は初だった。俊作が体勢を変えようとした所で思わず何か柔らかいものに触れてしまった。

「この人痴漢です」

「え……」

 近くにいるOL風の女の人に手を握られ、持ちあげられた。

「お兄……痴漢するなんて」

「藤堂君、やはりあなた……私ならいつでもいいのに」

「天使ちゃんは……どこだ」

 満員電車の押し合いで手が離れていた。探しまわると天使ちゃんは遠くのほうで必死に上の雑誌を拾っていた。

「君、次の駅で降りなさい」

 俊作はサラリーマン風のメガネの男に羽交い絞めにされた。

「え、ちょ……違いますよ。おい。お前ら他人のふりするな」

 俊作はサラリーマンとOLと一緒に次の駅で降ろされた。仕方が無いので、他の三人も一緒に同行することにした。結局、俊作達が帰られたのは深夜だった。


     ◇


「お兄! お兄! お兄! ちょっと早くドア開けて」

 俊作が自分の部屋で落ち込んでいる所に、恵梨が慌ててやって来た。ドアをガンガンと叩くので、俊作はドアが破壊される前にあけてやった。

「なんだ。どうした? 兄さん落ち込んでるんだよ」

「お兄! 大変!」

「なんだよ。今度は」

「パパがテレビに映ってる」

「はあ? 親父は死んだんだぞ」

「いいから来て」

 恵梨に手を引かれて一階の居間まで連れていかれた。

「これ見て!」

「……親父だ」

 死んだはずの親父がテレビに写っていた。親父はガンジス川で見事なバタフライを披露していた。こんなことをするのは親父しかいない。冒険途中で行方不明になった親父とおふくろは必死の捜索でも見つからなかった。見つかったのは親父のメガネとおふくろの「こけし」だけだった。俊作と恵梨はテレビの画面を見つめながら、しばらく放心して立っていた。


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