第十話「不幸男街に出るその三」
映画が見終わった俊作達は、お昼を近くのファミレス「るいざりあ」で取ることにした。「るいざりあ」はRPG風の雰囲気が味わえるファミレスで、店員さんが戦士のプロテクターをつけたりしている。
「どの席になさいますか?」
俊作達は戦士のプロテクターをつけた店員さんに席の種類が書かれた写真付きのメニューを見せられた。ちなみにネームプレートには「あああああ」と書かれていた。
①ダンジョン風テーブル
石造りのテーブルと椅子、薄暗い洞窟の中のような個室。
※コメント
ダンジョンに迷い込んだような気分が味わえます。スリルを味わい方にはおすすめです。極稀にエンカウント致しますので、ご了承ください。
②酒場風テーブル
木のテーブルと木の椅子。傾いているのが特徴。
※コメント
RPGの酒場に迷い込んだような雰囲気が味わえます。酒場の喧騒BGM付きです。極稀に喧嘩に巻き込まれますのでご了承ください。
③王様の城風テーブル
長テーブル。周りは中世ヨーロッパのような作り。
※コメント
王様のような気分が味わえます。給仕はメイドか執事が選べます。
④円卓の騎士風テーブル
丸いテーブル。
※コメント
円卓に集った騎士たちのような気分が味わえます。今なら期間限定で鎧を貸出します。
⑤牢屋風テーブル
※コメント
牢屋に囚われた囚人の気分が味わえます。今ならボーダーがチャーミングな囚人服を貸出します。
俊作達はしばらく悩んで酒場風テーブルを選んだ。理由は一番まともそうだったからだ。店員さん(あああああさん)に案内されて、酒場風のテーブルに座った。
「椅子ががくがくだな」
「テーブルもよ。いつのなんだか分からないよ」
店員さんはメニューを置いていって去っていった。メニューは所々、敗れた古ぼけた布製のメニューで文字がかすんでよく見えなかった。値段の表示はゴールド表示だった。
○メニュー
ぱるぷんてランチ 七百五十ゴールド
腐ったしたいのよだれ汁(みそ汁)三百五十ゴールド
さんちょのしちゅー 五百ゴールド
かんだだの手ごねハンバーグ 六百五十ゴールド
会心の一撃ピラフ 六百ゴールド
大王いかのイカスミスパゲッティ 六百五十ゴールド
ばくだんいわのばくだんカレー 五百五十ゴールド
……
「あたしおかねないの。だからみずでいいの」
「世話になってるからおごるよ」
「恵梨には?」
「恵梨はデイトレードで稼いでるだろ」
「ケチ」
「ありがとうなの」
それよりも俊作には気になるメニューがあった。『コックの気まぐれ味付けぱるぷんてランチ』だ。このように説明書きがある。「コックのその日の体調とその日の気温と前の日のきょじんの試合結果で決まるよ。勇気のある人チャンジだー。オプションとして胃薬が付きます」その説明書きの隣には可愛い擬人化したライオンのイラストがそえられていた。
ライオンから吹き出しが出ていて「目ん球飛び出るおいしさ??」と書かれてある。
「お兄決まった?」
「ちょっと待ってくれ」
「早くしてよね」
(非常に気になるメニューだが、あまりにもデンジャラスがなメニューだ。どうしよう……いや、しかしここは食べるしかないな)
「僕は決まったぞ。みんなは?」
「もうとっくに決まってるわよ」
「きまったの」
「決まりました」
みんな何を頼むか決まったようなので大声で店員さんを呼んだ。しばらくするとプロレスラーのようなスキンヘッドのいかつい男がやってきた。ネームプレートには「店員C」と書かれてある。
「ご注文をお聞きします」
「ドリンクバー四つとみんなは?」
「恵梨は大王いかのイカスミスパゲッティ」
「かいしんのいちげきぴらふなの」
「私はうーん。ばくだんいわのばくだんカレー。辛さはメガン○で」
「僕はコックの気まぐれ味付けぱるぷんてランチをお願いします」
一瞬、店員さんの表情が固まった気がした。
「コックの気まぐれ味付けぱるぷんてランチですか?」
「そうですけど」
「よろしいのですね?」
「はい」
「では、こちらの同意書にサインをお願いします。
店員さんがポケットから紙を取り出してテーブルの前に置いた。
『コックの気まぐれ味付けぱるぷんてランチ同意書』
るいざりあ殿
私こと、○○はコックの気まぐれ味付けぱるぷんてランチを食べるにあたり、下記の内容に同意します。
1,ランチを食べるにあたり、吐き気、頭痛、目眩等の症状があった場合、全て同意の元の自己責任として、るいざりあはその件に関して、責任を負いません。
以上
○月○日
○県さまるとりあ市さまるとりあ
店長
「あのこれって」
「同意いただけた方のみ、お出ししております」
「やばいものなんですか?」
「詳しいことはお話できません」
「ちょっとお兄絶対、やばいってやめなって」
「ちなみに食べ切れた方にはるいざりあより一万を差し上げております」
「一万円くれるんですか?」
「はい」
「藤堂君。おかしいと思いますよ」
「あの……食べ切れた方っているんですか?」
「……」
店員さんは無言、無表情だった。
(いないんだ……まあここまで来たら引くわけにはいかない)
「お願いします」
俊作は止めればいいのに同意書にサインをした。
「あ、はんこもお願いします」
「お兄やめなって……あーあ。知らないからね」
恵梨が止めたにも関わらず、俊作は構わず怪しいメニューを頼んでしまった。