突入⑥ -能力妨害-
「……っつぁ~。い、痛ぇ……」
煉が目を覚まし、傷を触って生きている事を確かめる。みことに支えられながら体を起こす。出血は止まっているものの、鋭い痛みが未だに残る。顔を歪める横顔にみことが声をかける。
「ちょっと、大丈夫なの? 無理、しないで……」
「大丈夫だ。それよりどれくらい時間が経った? あの野郎は?」
「煉、慌てるな。さっきの奴はもう起きない。お前が気を失ってから10分程度しか経ってない。少し先を見てくるからお前はもう少し休んでろ。総矢、お前も来てくれ」
頷き、立ち上がりった清正に続いて奥へと一人進む。
「横になってて。少しでも休んで」
みことが煉の頭を強引に自分の膝へと抱え込んだ。安心しきった煉は力なく再び目を閉じる。
奥の部屋には大きな装置が設置されていた。その装置の中心部に透明のカプセルが視認できる。その中に総矢達が相手をした年齢くらいの子供が入っていた。二人は憤りを感じ、言葉に詰まる。しばし動きを止めていた清正が覚悟したように口を開く。
「煉は貴重な戦力だ。この先、あいつに更に無理を強いる事になるかもしれない」
「……」
「それでも、ここで終わらせなければならない」
「俺に火口さんを援護しろってこと、ですよね?」
「逆だ。どんな状況になろうとも煉の意志を汲んでやってほしい。納得出来なくてもな」
清正の言葉をそこまで聞けば総矢にも言いたい事が分かる。
「見殺しにするつもりですか!?」
「俺だってそんな事はしたくはない。いいか、俺達の目的は復讐だ。俺も煉も、お前と大塚も同じ被害者だ。どうであっても赦せないものはある」
清正が興奮しながら答える。あまりの剣幕に総矢は口を閉ざす。
「結果的に見捨てることになったとしても、あいつの復讐も俺が、俺が必ず果たす」
「……俺は死なせたくはないです、味方も敵も可能な限り。俺にとっての最優先は人命です。そこだけは、譲れません」
清正と総矢は無言で見合っていた。清正が再び視線を逸らし、深く呼吸した。
「最悪の状況を避けたいのは俺も同じだ。総矢、一度能力を使ってくれ」
清正に促され、総矢が能力を発動させた。総矢が首を横に振る。
「ダメです。また誰も察知できません」
「能力妨害か。一度地上で分かったのは俺達を誘い込む為って事だろう。さっき俺と分断されてた時には能力使えたんだよな?」
「一度だけ強制キャンセルされました。水谷さんの思考を読み取ろうとした瞬間に、です」
「その時、煉や大塚は能力を使えていたか?」
「能力で扉を破壊してました」
総矢の返事を聞き、考えて黙り込む。無言のまま部屋の中を軽く探索してから煉達の元へと戻った。みことに支えられているものの、煉は自分の足で立っていた。
「能力キャンセルについてだが、効果範囲はあまり広くはなさそうだ」
「だが厄介な事には変わらねぇ」
「対処法を考えた方がいいわね」
みことの言葉に頷きながら、煉が口を開く。
「ただ、能力の使用ができなくなるのは相手も同じだ。俺が実演した通りにな」
清正が、悩んだ挙句にある提案をする。
「攻撃タイミングを逃すと死に直結する。だから能力を常に使用し続けろ、微量でいい。能力が使えなくなった瞬間に敵と距離を取るって程度しか対策を取れないな」
他には特に良い提案が思いつきもしなかった三人は、渋い顔をしながらも頷いた。
一応書き続けてはいますがネット環境がまだ整備されてないので
投稿は非常に亀になります。ご了承ください。