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突入① -予測地点-

「いくぞ」

 四人は人気のない実験場の裏口にまでやってきた。

「地図からも確認はしたが、やはり実物は大きいな」

「さて、目印の生物棟のメインはどれだ?」

「地図でもバカみたい大きかったし……アレかしら?」

 みことが外から見えるひときわ大きい建物を指差す。暗い中でもその姿が確認できる。

「……」

 位置を確認する三人を横目に、総矢は俯いていた。

(俺は、俺がここにいる意味は……俺のするべき事は……)

「おい、総矢。行くぞ」

「……ハイ」

 煉への返事は一言だけだった。昼間の事を忘れたかのように振舞う煉に対しての複雑な感情を抱いていた。そんな総矢に清正が声をかける。

「総矢、能力で軽く全体を見てくれ。思考を深く読み取る必要は無いから、人がいる場所を把握しておきたい」

 能力の使用をすれば、必然的に相手の思考を読み取ってしまう。それは煉や清正達も例外ではない。清正は総矢が躊躇うことも想定していたために『深く読まなくていい』と先に口にしていた。

「瞬間的に使えば相手の思考を深く読み取る事無く位置の把握は出来ます」

「なら、早速頼む」

 総矢が能力を使う。能力を広範囲に展開する。

(1、2……)

「最大距離でおよそ200メートル。敷地全体ではないですが、全部で3人です。分かれて個々に3人。巡回中の警備員だと思います」

 地図を見て、およその位置を確認する。

「生物のメイン棟、端に各1人。この方向は……機械棟の部分に1人ですね」

清正が少し考え、詰まりながら言葉を発する。

「……位置は不自然じゃないか? 方向だけじゃなく、高低差は?」

「高低差は全員0です」

 総矢が即答する。それを聞いた清正は更に考え込む。

「……妙だな」

「何でだ? 警備員がいるのは不自然じゃねーだろ?」

「逆だ、人が少なすぎる。何かあった時に対処する人間がいるはずだ」

 それを聞いたみことが疑問を漏らす。

「けど誰もいない可能性が無い、とは言い切れないと思うけど?」

「どっちでもいい。とにかく行くぞ。行けば分かる事だ」

 煉が軽く笑い、裏口の門を押す。

「待て、煉」

 清正が肩を掴んで引き止める。振り返った煉に顎で右上を示す。開く直前だったことが幸いだった。門の鍵は掛かっていないが、センサーは生きていた。

「不注意だ。気をつけろ」

「んじゃどうやって入るんだ? 壁の上は有刺鉄線、門には赤外線だろ?」

「真っ先に警備員に連絡が行くのは赤外線の方ね。塀はずいぶん高い上、『返し』もついてるからこれを超えるのは……」

 清正が得意げに義手を見せつける。

「任せろ」

 左義手から長いワイヤーが引き出される。それを放投げ有刺鉄線に掛ける。清正は両手でワイヤーを掴み、軽々と登っていく。

(予想以上に痛むな……先に登って正解だったな)

 下の総矢達に悟られる事なく上まで登り、義手で強引に有刺鉄線を引き千切った。三人は清正に続いてよじ登り、塀の上に並んだ。

「……そうね、取りあえず不自然なものは無いわ。センサー系統も見当たらない」

 みことがゴーグルを取り出し、内部を見渡す。みことの言葉を聞いた煉は躊躇い無く飛び降りた。上から見ると結構な高さなだけに総矢は慌てた。

「火口さん?」

「大声出すな。木の傍は土だ、地面は硬くない、行くぞ」

 煉の着地を確認した清正が続く。みこと、総矢も飛び降り、四人は音を抑えながら生物主棟へと向かって駆け出す。人気が無く、センサーにも捕まることなく主棟の傍まで辿り着いた。

「ここからが本番だ。建物の構造から考えるとその裏施設は、定番だが地下。それで建物の位置関係からすると確か……あの辺りだ」

 清正が指差したのは生物主棟から更に施設中心へ向かって五十メートル程先だった。

「それは何か根拠があって、ですか?」

「当たり前だ。勘ばっかり頼りにするバカや、行き当たりばったりばかりで先を考えないアホと一緒にするな。建物の柱強度とこの実験場の地盤、水や電気の配管の条件を加えて考えた時の最適位置から判断した」

 移動しながら得意げに説明をしていた。その後ろで不満そうに聞いていた二人の顔を直視しないよう注意しながら総矢は適当な相槌を打っていた。

「それじゃ総矢、もう1度頼む」

 目的地と思しき場所で、総矢は再び能力を使用した。数秒の沈黙。

「……? 誰もいな」

「離れろ!」

 清正がみことを突き飛ばし、煉を蹴り、総矢に水流をぶつける。直後に攻撃が四人を襲う。鋼鉄製の警棒が地面を抉り、土埃が巻き上がる。間一髪で攻撃を回避した。

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