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進展⑯ -直前-

 翌日、総矢達は緊張が抜けないまま朝を迎えた。朝一で退院した清正も加わり、内部の情報を少しでも集める。総矢は、未だ昨日の電話の内容を口に出来ずにいた。

「建物内部の地図だ」

 清正の差し出す地図を覗き込む。

「メインとして3棟があり、そこから派生して複数の建屋が連なる形だ」

「……あるとしたら生物関連よね?」

「少なくとも機械関連ではねぇだろうな。……総矢? どうした?」

 煉が総矢の表情が浮かない事に気付く。

「いえ、何でもないです。少し緊張して」

 清正は見抜いていた。総矢の言葉を遮り、言葉を発する。

「……何か知っているのか? 少しでも今日の事に関係があるなら話してくれ」

「多分目的の場所は、そこには描かれていません」

「どういうこと?」

「昨夜、柏木さんに聞きました。超能力関係の研究は少なくとも提供されている場所では行われていないんです。だからほぼ間違いなく……」

「なるほど。政府が関与してるのは確実って事か。俺は覚悟していたが……」

 清正は全員の顔を順に見る。

「バカが、今更何を言ってんだ。俺はあの時から罪を背負う覚悟は出来てんぞ」

「私だって逃げるつもりは無いわ。泣き寝入りなんて絶対しない」

「俺は……」

 総矢は答えられなかった。自分で決めたはずの答えを求めた事が今になって正しい事か分からずにいた。『覚悟』には当然誰かを殺める事も含んでいる。自分の意思で人を殺した経験はある。間違いをこれ以上重ねさせない為に。だが今度は自らがその罪を犯そうとしている。総矢はそれがどうしても納得できない。黙り込んだ総矢に清正が声をかける。

「……迷っているんだな。俺達は相手が誰だろうと引く気はない、進み続ける。分かっていると思うが必要であれば人を殺める事にもなる。お前はどうだ? 今ならまだ踏み込まずに引き返せる。無論、記憶は消せない。お前は生涯、疑問と不満を抱えたまま生きる事になると思うが」

 総矢の体がビクッと動く。

(引き返す? 俺の真実を求める覚悟はその程度だったのか? でも、これ以上誰かを殺すのは……)

「俺は……」

「水谷さん、ストップ。今日連れて行くにしても、こんな状態じゃ返って足手まといよ」

 みことの否定的な意見に、煉が反論した。

「待て、こいつは連れて行く。総矢、俺は無理矢理にでもお前を連れて行くぞ。反論は聴かねぇ、もし逆らうってんなら今日のあの店を灰にする。店長もあの子もまとめてだ」

 煉の驚くべき発言に総矢は目を丸くして、睨み付ける。

「何をいきな」

 総矢の言葉を遮り、胸倉を掴んで持ち上げる。

「反論は聴かねぇって言っただろうが! 何なら今から燃やしに行ってやろうか? がたがた抜かさず来いって言ってんだ、分かったか!」

 胸倉を掴まれながらも、総矢は煉を睨み付ける。煉は総矢を床へ叩き付けた。首を押さえ、体は起こすものの顔は上げられず視線は床に落としたままだった。

「……」

「それともう1つ、着いてからは俺の命令には絶対に従え!」

 煉はそれだけ言って煙草を手にし、外へ出た。みことがすかさず後を追って外へ出る。

「……っ!」

 能力を使えばすぐにでも煉の行動の意味もすぐに分かった。だが、総矢は出来なかった。目的地へ着くまで能力を使うなという清正の厳令を守るわけではない。ただ単純に、総矢は怖かった。これ以上踏み込んでは本当に引き返せない、踏み込んではならない。そんな気がしていた。

(火口さんがあんな事を言うのは、無理にでも俺を連れて行きたいから。その理由は……? 俺の能力を利用したいから、あるいは俺を戻れないところまで引き込むため? ……ちがう、きっと俺の為に……)

「総矢、能力を使わずとも分かるだろ? 決めるのはお前だ、どうする?」

 清正が淡々と問いを投げかける。

「……踏み込んだらいけない気がしたんです。でも踏み込まないと見えてこない事もあると思うんです。俺はただ怖かった、逃げ道を完全に失う事になりますから……それでも、背中を押されたら進まない訳には行かないじゃないですか」

 総矢の決意は固まっていた。清正は口元に笑みを浮かべ、頷いた。


「火口さん、どういうつもり? 戦力不足は分かっているがそれでもあのまま連れていっても危険が増すだけじゃないの?」

「分かってる。でもここで引かせたら、きっとアイツは一生後悔する。それだけじゃない。1度でも機会を逃したらアイツも俺達も求める答えに生涯辿り着けない、多分な」

「いつもの勘?」

「ああ。だから無理にでも連れて行く必要があると思った。何で分からねぇがそれは確信している」

「……」

「悪い、我侭だったな」

「確信があるんでしょ? でもそれなら火口さんがフォローしてよ」

「心配なのか?」

「戦力が減るのが、ね」

 緩やかに日は落ちていった。

『進展』が終了……ふぅ

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