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進展⑧ -左腕-

 九月五日の夕方、顔に痛みを感じて総矢は目を覚ました。目を覚ますと右頬を引っ張られていた。

「お久しぶりですね、崎見総矢君」

「先生、医者が患者にそういうことするっていいんですか?」

「外傷無し、CTにも異常は見られませんでした。健康体の君が幸せそうな寝顔でゆっくり休むことで私の仕事を増やしていると考えると不満に感じてね」

「す、すいません。……っていうか患者の心のケアはしなくていいんですか?」

 総矢は反論した直後に冷たい視線を向けられ何も言えなくなっていた。

「話は変わりますが君の友人ですよね? 片腕を失って運ばれてきたのは」

「そうです。俺の知り合いです。あの、その人の傷の具合は?」

「命に別状はないですよ。切断された腕があれば繋げられた可能性もありましたが……傷自体はもう塞いであります。また何か厄介事に首を突っ込んでいるみたいですね」

「そう、ですね……」

「それにしても驚きましたよ。大塚さんと一緒にいることには流石に驚きました」

 みことと再会し、命の心配が無くなった事を矢口に伝えていなかったために矢口は総矢が死体で運ばれてきたと勘違いしていたそうだ。『情報屋』と『能力』に関しては触れないまま、総矢は事情を説明した。

「なるほど、危ないところを彼らに救われ、行動を共にするようになった訳ですか。すると彼の腕は大塚さんが原因で?」

「いえ、昨夜は別の不審者に襲われて……」

「不審者? どういう訳かは分かりませんが、その犯人の刃物は恐ろしいですね。あそこまで綺麗に骨まで切断された状態の腕は初めてです」

 迷った末、総矢は『能力』について話した。だが、清正や煉については本人の許可を得るべきと判断し、話したのは男の『風の能力』についてのみだ。

「何とか反撃して彼に手傷を負わせて撃退しました。昨夜、ここに俺の知り合い以外に急患で運ばれた、あるいは緊急手術を受けた方って知りませんか?」

 総矢は少しでもその男について繋がる情報が無いか矢口に尋ねる。

「昨夜、この病院に運ばれてきたのは君達だけですよ。私も当直医だったのでそれは確かです。他の病院にも問い合わせてはみます。何か分かりましたらこちらから連絡します」

 総矢と会話の中で記憶や体調不良などの問題も無いと判断され、矢口は病室から出て行った。

「あ、もう大丈夫なのですぐに退院です。まぁ今日は構いませんが。明日、早めに病室開けてくださいね」

 最後の一言に総矢は苦笑いするしかなかった。居心地が悪くなり、総矢は清正の病室へと足を運ぶ。点滴が繋がれ、僅かに変色した左腕の包帯が出血の激しさを物語っている。

結局その日、清正は目を覚まさなかった。病室に戻った総矢は見舞いに来ていた煉から、気を失った後に起きた出来事を一通り聞いた。


「ん? ここは……?」

「あ、水谷さん。気が付きましたか。ココは中央病院です」

 ベッドの脇で椅子に腰掛けた総矢が答える。総矢の後ろに見える窓の外の景色が暗いことから、時間帯が昼間ではない事だけは分かる。

「総矢か。ああ、俺はどのくらい眠っていた?」

「今日は9月6日、時刻は午後7時です。一応看護師に連絡入れておきます」

 部屋の近くを偶然通り掛かった看護師に状況を伝えた後、総矢は気がついて間もない清正に順を追って説明した。病院に搬送された清正は出血が酷く、かなり危険であった事。処置が終わってから二日近く眠っていた事。その間に煉がみことの能力を鍛えていた事。総矢も同様にあの後運ばれた事を付け加えた。

「俺もそのまま半日以上寝てた訳ですけどね。……水谷さん、本当にすみませんでした。俺のせいでその、左腕……」

 清正が包帯を巻かれたままの左腕に視線を移す。左右に釣り合いの取れない長さの腕を見て、目を閉じ静かに答える。

「気にするな。俺の腕よりお前の方が戦力になると判断しただけだ。それにな、能力自体は使える」

 総矢の目の前で水を操る。左手の動きに合わせて水が空中を漂う。

「とは言えこれでは繊細なコントロールがイメージしにくい、か。総矢、煉を呼んでくれ」

「ああ、それならもうすぐ」

 話をしていると同時に煉が現れた。

「清正、起きたか。大方は総矢から聞いているな」

「ああ、それよりもだ。俺は」

「腕のことだろ? 分かっている。頼りになりそうな人間に連絡は入れてある」

 煉と清正の会話に全く付いていけない総矢はその場で黙っているより他ならなかった。

「総矢、お前のおかげでこの前貰った名刺の人間に連絡したんだ」

「柏木さんに? どうして?」

「俺の義手を作るためだ。煉、完成予定は?」

「明日の昼までには仕上げると言ってくれた」

(どんだけ早いんだよ。不良品じゃないだろうな……)

 総矢は一人不安を胸に抱いていたが、煉と清正は心配をしていない様子だった。

「悪かったな。左腕、回収できればくっつく可能性あったかもしれないのに」

「済んだ事だ。その分お前が仕事してくれよ」

 苦笑いしながら煉は病室から出ていった。

話の中で日付を書いたのが久し振りです。

しょっちゅう何時が何時か忘れそうになります。

因みに簡単に纏めます。

工場潜入は9/4(日中)

襲撃受けて反撃に行ったのは9/4(夜)

病院搬送が9/4(深夜)


書いた期間は半年以上...アレ?

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