進展④ -攻撃-
「なっ……」
思わず言葉を失った。炎の主は、煉でもみことでもなかった。
『くそっ! いきなりか! だがなんとか全員分間に合った』
清正が咄嗟に全員を水で包み、難を逃れていた。爆炎が収まり、三人は水の中から出る。
「2人とも無事か?」
「清正、悪いな」
「ありがとう、助かったわ」
(よかった、無事みたいだな。それにしても今の爆発は)
「上だな」
唐突に煉が口にした。突然の発言に清正とみことは顔を見合わせる。
「おそらく屋上だ。警報を鳴らして俺達を中に留まらせた。狙いは間違いなく俺達だな」
「他は分かるが、屋上って根拠は何だ?」
「勘」
言いきり、煉は階段に向かって走り出した。清正とみことは何も言えず、煉の後を追った。階段を駆け上がりながら清正は考え続けていた。
『爆発物を予め用意していたのかことは間違いなさそうだ。俺達を誘い込んだってのも頷ける。他の階を見る限り爆破はさっき俺達がいた階だけ。つまり俺達の動きを相手は把握しているはず』
上っている間、何も仕掛けが作動する気配もない。総矢も同様の疑問を感じていた。
(犯人が上にいて、仕掛けてこないってことは俺達に何かを仕掛ける必要すら無いってことか? それとも何か別の目的が?)
階段を駆け上がる音だけが建物内に響き渡る。そうするうちに屋上に出る扉の目の前に辿り着いていた。
「着いたぞ」
迷いなく扉を開けた。扉を開けて正面に一人の人影が見える。夜景に照らされ、三人に背を向けているために顔は確認できない。だが、服装から性別は判断できる。
「女か?」
煉の問いかけに黙ってゆっくりと振り返る。短めのスカートが僅かに浮かび上がる。耳元に当てていた携帯を上着のポケットに押し込む。
「いらっしゃい。あの爆発でも無事だったのね」
電話と同様に声は機械的なものに変換されていた。
「その声……やはりお前が電話の主か? 仲間を殺したのもお前か?」
清正の問いかけに言葉では答えず、薄く笑った。口元のみが見える仮面を着けたふざけた格好にみことは我慢ならなかった。
「間違いないわね! それなら容赦はしないわ!」
みことが炎球を投げつけた。女は身軽に跳ね、炎を避ける。だが、着地時をみことの炎球が再び襲いかかる。それでも女は余裕な笑みを浮かべている。誰もが直撃を確信していた。だが、足が着いた瞬間に女は加速した。細く、華奢に見える足では到底不可能な程に。
「えっ?」
思わずみことは声を出してしまった。突然の事に驚き煉と清正も一瞬固まった。その隙を逃さず、女が反撃を繰り出す。
「痛ってぇ!」
「ぐっ、何だ?」
煉と清正は瞬間的な痛みに悲鳴を上げた。誰もが攻撃を把握できずにいた。
「何? 2人ともどうしたの?」
相変わらず黙ったまま笑みを浮かべている。炎球ではなく、炎を女性の周囲に展開させる。
「何とか言いなさいよ! このっ!」
みことは女を睨み、炎で取り囲んだ。そのつもりではあったが、またも突然の加速により避けられる。と同時に鋭い痛みがみことをも襲う。痛みに耐えながらみことは炎を繰り出す。
「何なのよ! コイツッ!」
更に苛立ち、攻撃が荒くなる。何故か先程から、みことよりも煉と清正に対して執拗に攻撃を繰り返している。その為、二人は能力も満足に使用できない状況に苦しんでいた。
「落ち着け! ……それじゃ無駄撃ちだ。うぐっ!」
頭に血の上ったみことを止めたのは清正の一言だった。攻撃を止め、様子を窺う。
「さっきからコレって何? 瞬間的で大したダメージはないけど、狙いがずれるし集中も遮られて厄介すぎる! コイツも能力者?」
みことは呼吸が荒くなりつつあった。対して、相手の女は依然として余裕の笑みを浮かべている。清正は顔を歪めながら考えを口にする。
「能力者だ。その能力は、この感じ……電気だな」
遅くなりました。遊びまわってきました。
最近夏が終わりに近づいている気がします。