調査⑮ -破壊の準備-
「清正さんといい爆発物なんて危険なものを素人に取り扱わせるなよな、怖ぇっての……」
総矢は小声で文句を言いながら支持された柱に手渡された爆弾を設置した。
(だが、どうやって説得する? さっきの調子じゃここにいる人間全員を殺しかねないぞ)
新たな問題に総矢は頭を抱えていた。そうそういい考えが思い浮かぶわけでもなく、言われた箇所へと爆発物をセットし、総矢はすぐに玲子の下へと戻った。玲子はとても嬉しそうな顔をしている。
「終わった、みたいですね」
「まぁね。この部屋はおしまい。それじゃ次行くよ」
「さっきの続きですけど、奪還が目的って本当は嘘だったんですね」
「まぁ、ね。今更って感じもするかもしれないけどね。盗られたデータと研究成果は消去するわ。こんな形にされたらもう残すわけには……」
玲子自身が一番納得出来ずにいた。それでも必死で自分に言い聞かせている。
「次の部屋、行きましょう」
総矢は玲子の顔を見ることなく肩を貸し、歩き始めた。地下に降りてきたエレベーターに戻るまでに、通路の左右には合計四つの部屋があった。三部屋にはただただPCと資料らしき書類ばかりが置かれたものとなっていた。だが、最後に調べたエレベーターに最も近い部屋に入る。注意深く部屋の中央に置かれた見覚えのあるモノの周りをじっくり眺めながら一周し、立ち止まった。
「見つけた。今度こそ。うん、間違いない」
それだけを口にしてただただボーっと突っ立っている。
「また誰もいない、か」
総矢は人が全くいないことがとてつもなく不気味に思えた。
(さっき倒れていたので全員か? ん? 何か忘れているような……何だ?)
必死に思考を巡らせていた総矢を気にかけることは無く、玲子は自身が作成したロボットへと歩み寄り、転送装置を起動させる。取り出したのはこれまでに全ての部屋に取り付けてきた、先程のものと同じ爆弾だ。
「ごめんね、ごめんね……」
自身が製作したロボットには、全て玲子自身が破壊の準備を行った。涙が機器の表面を濡らした。部屋を出た二人は、再度全ての部屋を調べてから地上に戻るためエレベーターに乗った。エレベーターに乗った時には、玲子は吹っ切れていたのか非常にいい笑顔になっていた。
「よっし、これでやっと帰れる。布団で寝るのは久し振り」
「え? まさかずっと風呂とかにも……」
「し、失礼なこと言わないでくれる? ここには社員用のシャワー設備とかあるから……」
慌てて玲子は弁解する。
「でも、下着とかは流石に……」
「ま、まだ2日目だから(あ、いや3日目か)」
狭いエレベーターの中で玲子から距離をとろうと総矢は後ずさる。
「ちょっと? その反応は失礼だと思うけど? そんなに臭くないって、ホラ」
と言いながらエレベーターの隅の総矢に詰め寄る。体が近い。
「い、いや。あのですね、これは決してそういうつもりじゃ」
(近い近い近い! 別のことが気になるっての! その角度は駄目だって!)
総矢を見上げる玲子の顔のすぐ下に目が行ってしまう。服装は決して露出が高いわけではないが、僅かに見える首元の鎖骨に思わず体が硬直する。
「どしたの?」
ビクッとして総やは視線を逸らす。
「何でもないです。においも気になりませんから少し離れ……」
チン、という音と共にエレベーターの扉が開く。一階に到着した。だが、
「あら、生キのびタのがイるの? ってこトは、アレは壊レちゃッたのカしら? クククカカククカ」
聞き覚えのある声に二人は動きを止めた。だが、表情は記憶に無い不気味なものだった。
デュワッ!