調査⑬ -撃破-
「危ないっ!」
総矢は飛び出し、廊下の壁に向かって玲子を突き飛ばすと同時にロボットを反対側の壁へと蹴り飛ばした。だが、ロボットは総矢の想像をはるかに超えた重みであったために、殆ど動かなかった。そのため十分に玲子と引き離すことが出来なかった。
「う、くっ」
玲子の右の太股に刃物は突き立てられ、床を赤く染めた。総矢が慌てて玲子の足から刃物を引き抜こうとしたが、それを玲子が止めた。
「先にあっちを何とかして! 右腕の連結部に一発打てば止まるはず!」
総矢に銃を手渡し、ロボットを指差す。総矢は銃を受け取り、立ち上がる。転送装置で棒を取り出す間にも、ロボットは迫ってきている。銃撃時とは異なり、走って。
「早く撃って!」
玲子の言葉が耳に入るが、銃のセンスが無いのを知っている総矢は、直接打ち込まなければならなかった。そのためには
「一撃は受けなきゃならない!」
縦に勢いよく振り下ろされるロボットの刃物を棒で受け止める。ロボットを蹴り飛ばせなかったことから、総矢は攻撃の重さを覚悟できていた。だからこそ、その一撃を受け止められた。右手で精一杯棒を握り、左前腕でも棒を支える。当然全力だ。
「うぐ……こ、これで……」
重みに耐えながら左手に持った銃をロボットの右腕接合部に向け、引き金を引いた。途端に全身を襲っていた重みが緩む。すぐにロボットの腕を振り払い、今度は両足の間接部を撃った。
「ちょっと! 何してるの?」
「右腕に柏木さんが知らない武装があったんですよ。足にも何かあるかもしれないと思って、念のためですよ」
ロボットは身動きが取れなくなり、その場で動くことは出来なくなったが、システム自体が停止した訳ではない。足を引きずりながら近づいた玲子がロボットを覗き込む。
(……あれ? これ私のじゃない……)
無言で覗き込む玲子を無理矢理ロボットから引き離し、総矢は手当てを始めた。
「何してるんですか? さっさと手当てをしないと……」
「あ、うん……ありがと」
玲子が転送装置で取り出した包帯で応急処置のみを施した。総矢が包帯を巻いている間、玲子は動けなくなったロボットをじっと見つめていた。
(構造は殆ど私が作ったものと同じ。ただ、戦闘機能が追加されていたことが気になる……でもおそらく試作機の段階みたいだし、セキュリティの厳重性から情報は外に出てないと考えてもいい。なら地下さえ破壊すれば……そのためにも、私のも破棄しないと)
玲子は歯を食い縛った。痛みと勘違いした総矢は慌てて包帯を緩めようとする。
「あ、すいません。きついですか?」
「あ、違うの……ただ、そのロボットだけど」
玲子の言葉が途切れ、一瞬沈黙が生まれる。
「私の作ったものじゃないの。おそらく私のを元に新たにココで作られた戦闘ロボット」
「新たに?」
「武装を追加している点、表面材質が私の作ったものより硬い点、その2点から攻撃、防御共に性能を上げていることからほぼ間違いない」
「設計図とそのデータを完全に消す必要がありますね」
総矢の意見も玲子と同じものだった。だが、その意見には僅かなずれがあることには気付いていなかった。
「手当てアリガト。とにかく今は進むよ」
「肩貸しますよ。それともお姫様抱っこがいいですか?」
冗談混じりに言った総矢を冷たく突き返す。
「キモい。自分で歩ける。そもそも私が油断したのが原因なんだから」
「時には人に頼ることも必要ですよ。どうせそうやってずっと1人で探し回っていたんじゃないですか? 今は俺と手を組んでるんですから、頼ってもいいんですよ」
総矢はため息をつき、強引に玲子に肩を貸した。玲子は総矢から顔を逸らしたが、僅かに口元が動く。ハッキリ見えはしなかったが、玲子が嬉しそうな顔をしている事は容易に想像できた。
だらだら書き連ねてしまいました。『調査』はもういっその事まとめて投稿してみようかとも考えています。書き終えたらになりますが...
※リアルですが、面接が迫って慌てています。
色々な意味で泣きそう。