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調査⑧ -尋問-

(……来た!)

 足音が突然大きくなる。同時に現れる黒い人影と小さく鋭い光。

「ハァッ!」

 掛け声と共に鋭い光を総矢に突き出した。

(っ! スタンガンか!)

 総矢は紙一重で闇の中での襲撃を避け、スタンガンを突き出した左手首を掴み、顔面に拳を繰り出した。だが、総矢の拳を軽々と受け止めると、逆に総矢に足払いをかける。

「しまった!」

 そう口にしながらも総矢はニヤリと笑った。転倒しながら、今度は総矢が足払いを掛ける。足払いを掛けると同時にスタンガンを持っている相手の左手を強引に押し、そのまま相手の胸に当てさせた。

「ぐぅっ……」

 倒れ、気絶し、動かなくなった人影を見てから総矢は再び『能力』で周囲の様子を探る。誰もいないことを確認してから、総矢は部屋の明かりを点けた。

(何だ、コイツは?)

 明らかに工場の人間ではない。総矢と同様にその男は作業服を着ていた。だが所持品を調べたところスタンガンだけでなく、ナイフ、拳銃と明らかに工場での労働とは別の目的で来ていることは一目瞭然だ。総矢は気を失った男の内ポケットから個人用IDを取り出した。総矢はそのID番号から、その男の詳細情報を調べた。

(所属は……政府直轄? 例の調査隊とは別なのか?)

総矢は男が所持していたロープで手足を縛りあげた。男が目覚めるのを待つ間に、部屋の中を見て回る。だが、特に有益な情報を得られなかった。部屋を調べ終わり、一息つこうとした時だった。

「う、うぅ……き、貴様早くコレを外せ! こんなことしてどうなるか分かってるのか!」

 男が目覚めた。総矢は男の下へ歩み寄ると、静かに答える。

「外したらまたスタンガンで襲うつもりじゃないんですか? それとも今度はナイフですか、政府直轄の部隊の斉藤さん?」

 男はその言葉を聞き、総矢が手にしていた自分のIDに気付くと睨みながら口を開いた。

「お前ら下っ端は知らないかもしれないが、工場(ココ)の上の連中は相当危険な事に手を出している! 俺達はそれを止めるために派遣されている正当な部隊だ。だから」

「だから? 『正当』と言いながら何も知らない一般人にスタンガンですか?」

「……時には必要なことだ。子供じゃないんだからそれくらい分かるだろ」

「ここから先は俺が調べます。あなたは知っている事をすべて話して下さい」

「……貴様、ここの人間じゃないな。なら尚更これ以上の情報は殺されたとしても貴様には与えんぞ!」

 強い口調で言い切る男に対し、総矢は肩を落としながら無言で『能力』を発動させた。

「ココに来た目的は何ですか? それからあなたの任務は?」

「……」

「潜入前に入手していた情報は? 工場(ココ)で得た情報は?」

「……」

「なぜこの任務を引き受けたんですか?」

「……? おい、いったい何を?」

 男は最後の質問に対し目を丸くした。

(……なるほど、そういうことか……)

 総矢は『能力』をOFFにしてから立ち上がった。男を見下ろし、一言告げた。

「申し訳ないですが、当分はそのままでいてもらいます」

「何だと!? オ、オイ待て!」

 騒ぐ男を無視したままにしておくと後々厄介になる事は明白だ。やむを得ず部屋の奥へ運び、清正が用意していた即効性の睡眠薬を吹き掛けて男を眠らせてからその場を離れた。

工場(ココ)に潜入して、手にした情報を研究員として潜入した人間に渡すことで外へ、か。脱出用の道具は情報と交換、なんて随分厳しい条件の任務だな。しかし組織の末端である彼には拒否権が無かった……)

 総矢は焦りを感じ、歯を食い縛る。

(おまけに、彼の情報が正しければ俺の水谷さんへの連絡も既に聞かれているハズだ。これ以上不用意に連絡は取るわけにはいかないな)

 斉藤という男が任務の前に得ていた情報の一つに『工場内監視』というものがあった。工場区域内での電波が管制塔で受信され、会話やメールの内容は全て記録されているというものだ。斉藤はそれを避け、正午に潜入する部隊の人間と直接接触するためにこの建物にいた。

「だが……」

 思わず口を開いてしまった。総矢が得たのは悪い情報だけではない。斉藤という男が手にした情報の中には例の『部署』の情報に関するものもあった。

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