捜索⑫ -協力関係-
総矢は、固まったまま思い出していた。爆発の瞬間の機内を、轟音と共に聞こえる悲鳴を、そして、迫りくる赤と黒の爆炎を。迫る赤と黒の波を目の前にして目を閉じたところで総矢の記憶は途絶えている。回想を終え、総矢は一度目を閉じて深く深呼吸した。
「その……鬼団ですか? 何でそんなこと知っているんですか?」
改めて驚いて尋ねる総矢に対し、清正はニヤリと笑って答えた。
「今は教えられないなぁ。手を組んで、俺達に有益な情報をくれたら、あるいは俺達に何かしら協力してくれれば教えるよ。それで、どうする?」
数秒間の沈黙。総矢は考えながら煉、みこと、清正の順に視線を移動させる。やがて導き出した答えを口にする。
「分かりました。手を組みましょう、といっても出来ることは限られるとは思いますが」
「あぁ、それで十分。これからよろしくな、志井鍵矢」
清正と握手を交わした。その直後、緊張の糸が切れた総矢は座り直した椅子で意識を失った。
「……もう、限界だったんだな」
「おい、清正。今更だが『能力』について聞いてないぞ」
「目が覚めたら使えるようになってるでしょ?」
「そうだな。煉、まだ空き部屋あったよな?」
「泊めるのか? そんなことしたら……」
「相手の考えが分かるんなら外へ連れ出しても大した意味は無いだろ?」
「まぁ、確かにな……」
「でも、勝手に動かれても……外から施錠できる部屋にしておいた方がよくないかしら?」
「それなら物置部屋が丁度いいな、古いがソファーもあったはずだ」
「また俺が担ぐのか……」
総矢を連れて三人は物置部屋へと向かった。
翌日、総矢が目を覚ますと見知らぬ天井が目に入る。
(俺はまた、気を失ったのか……)
見ていたかのようなタイミングでみことが部屋に入ってきた。思わず総矢の表情が硬くなる。
「起きたのね。丁度いいわ。……そんなに警戒しないでも平気よ。ここの協力者になった以上、私が手を出すメリットもないからねぇ」
「そ、そうですか。それなら安心です……」
表情と言葉は全く一致していない。その様子に不満を感じつつもみことは用件を伝える。
「来て。水谷さんと煉が待ってるから」
「え? あぁ……でも俺に何の用が?」
「昨日はちょっとうやむやになったから、今からあんたの『能力』を調べるのよ」
エレベーターで地下へと向かう。連れられた先の部屋にいたのは煉と清正の二人だけだった。異常にテンションが高まってる様子の煉が尋ねる。
「朝飯抜きでも『能力』使えるよな?」
昨日の部屋と比較すると非常に広い。その上かなり壁面が頑丈そうにできている。
「いけるはずです。それよりこの部屋は?」
「ここは、簡単に言うと訓練場だ。割と外部の人間に見せられない道具も使ったりするんで、窓のあるような場所に作るのがちょっと、な」
清正が頬を掻き、苦笑しながら答えた。
(確かレイルのとこでも初めて行った時の武器訓練も地下だったな……てことは……)
過去の記憶と比較し、取り扱っている道具とやらをイメージすると同時に嫌な汗が頬を伝う。
「あんたの能力もだけど、どれくらい戦えるのかも知りたい。って事で煉が少しばかりあんたと戦いたいんだってさぁ」
「はい? 今から?」
みことの突然の発言に大声で聞き返した。煉のテンションは更に上がっている
「平気平気! 死なない程度に能力抑えてやるから、覚悟はいいな?」
気付けば清正とみことは総矢達から離れて壁際で観戦状態になっていた。
(いつの間に。仕方ない、か……よし。いける)
能力を発動させる。だが腰は引けた状態のままだ。
「い、いいですよ」
「っしゃ、いくぜっ!」
煉が勢いよく総矢に突っ込んだ。