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捜索⑨ -連行-

 煉が総矢の提案に反対する。

「方法はともかくだ、明日お前がまたここに確実に来るって俺は信じきれねーな、なぁ清正」

 清正はその言葉にニヤリと笑うと、煉と反対の意見を口にした。

「そうか? 俺は信じられるぞ。信じられないならお前が責任持って今日は監視しろよ。それから彼は今日、能力使いすぎたせいでロクに立てやしないみたいだからな」

「あ、汚っ! お前それは……」

「ならその役目なら私が()るわ」

 二人の話し合いにみことが自ら申し出た。

(じょ、冗談じゃない! せめてどっちかは付いてきてくれ! 今『やる』って明らかに意味違ったぞ!)

「大塚さん? 分かってるよな?」

 改めて清正に注意を促され、みことは再び体を硬直させる。

「……しゃーねーな、俺がやりゃいいんだろ」

「悪いな。任せるぞ」

「おい、車には乗せろよ」

総矢は煉に肩を借りながら何とか立ち上がる。

「分かっている、こっちだ。大塚さんも乗っていきな」

 全員が清正の後に続いた。


「さて、どうする? コイツをアジトに連れて行く訳にはいかねーだろ?」

 助手席の煉が運転席の清正に話しかける。

「いいんじゃないの? もし問題があるようならその場で……」

(……もしや俺はとんでもない危険地帯に連れ込まれるんじゃないのか!?)

「大塚さん、俺はアジトを殺人現場にしたくはないんだが」

 清正はみことの発言に対し、あくまで冷静に対応した。

(え? 平然と何言ってんだよこの人!)

「別に手足縛って外に連れ出して人気のないところで()ればいいだけだろ?」

 煉も平然とそんな事を言ってのける。

(ヤバイ! この人達とんでもなくヤバイ人達だ!)

 総矢が目を見開いて引きつった顔をしていることに煉が気付いた。

「そんなに怯えんなよ、大丈夫だって。今の話はあくまで最悪の場合の対処法だから」

「いや、あの……ですね」

「どうした? 君が嘘偽りを言っていないなら何も心配はないだろ?」

「……」

 清正の声は相変わらず単調だ。みことは無言のまま総矢を睨んでいる。

「嘘偽りは確かに無いですけど、堂々と人殺しの算段始めるような人達を危険と思うのは至極当然のことじゃないんですか?」

 煉と清正が顔を見合わせる。二人の表情は『何か変なこと言ったか?』と言わんばかりに頭の上に?(クエスチョンマーク)を浮かべているような表情だ。

(だめだ。この人達、普通の人間じゃない……危ねぇな)

「す、少しならまだ『能力』使えると思いますから……」

 何としても彼らに連れて行かれることを避けるために総矢は苦し紛れに口を開く。

「駄目だ。体力が十分な状態でない場合『能力』はかなり質が低下するんだ」

 清正によってあっさり却下される。

「要は俺達が怖ぇってことだろ? ならお前が行き先を指定しろよ」

「……あんたの自宅は?」

 察した煉の提案にみことが乗る。

「俺が目を覚ましたときには焼け落ちていました」

 事件後、総矢の家、つまり志井家は全焼してしまっていた。

「そ、そうか……それなら君は今どこで寝泊りしてるんだ?」

 清正は総矢の遠くを見る目と暗い表情から嘘ではない印象を受けた。何とか会話を続けようと口に出した質問は総矢にとってまたもや答えにくいものだった。

「色々と事件に巻き込まれて、主に病院です……」

「……」

「……」

「……ホントに?」

 誰もが疑問に思ったことをみことが口にした。当然ながら信じがたい話だ。

「事実ですよ」

「どう信用しろっていうの?」

 総矢は困惑した。実際、証明のしようがない。証拠になるようなものはないし、あったとしても受け入れられるかどうかも怪しい。選択肢は一つ、総矢は『当事者だから知っている事実』を口にすることを決めた。

「信用してくれる事を前提に話します。もちろん全て話すことは出来ませんが俺が事件に巻き込まれたから知っていることを話します。それで信用するかの判断はお任せします」

 総矢は深く息を吸ってから話し始めた。

「少しばかり前にあった遺伝子研究所の事件、それと先日の大使館での事についてです」

 タイトルめいた事を口にしただけで清正の目が鋭くなる。

「待て、『事件』? 今、遺伝子研究所の『事件』って言ったか?」

「え? あ、はい。『事件』ですが、それが何か?」

 総矢は自身なく返答する。その返答で気付いた煉とみこともハッとする。驚き固まる車内の空気に総矢が驚いた。数秒の沈黙の後、

「き、清正、どういうことだ?」

「あれは世間一般には事故として扱われているはずだ。それを知っているということは……」

 清正が深く考え込む。みことは相変わらずの視線を総矢に向けながら口を開いた。

「水谷さん、コイツが犯人だからじゃないの?」

「その可能性もあるが、それならそれはそれで重要人物だ……仕方がない。大塚さん、これで彼の目を塞いでくれ」

「え? おい、清正。まさか」

「アジトに連れて行く。だが流石に行き先は教えられない、ということ。勘弁してくれよ」

 総矢には既に選択肢が無くなっていた。必死に不安を心の中でかき消そうと努力した。

(殺されたり……しないよな、マジで!)

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