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捜索⑦ -制止-

 みことが、かつての病院を再現するかのように総矢に炎を投げつけていた。

「病院ではどうやら私のこの能力について喋らなかったみたいね、それについては感謝してるわ!」

 必死に避け続ける総矢に叫ぶ。

「だから言っただろ! 他の人間に言うつもりは……」

「つまりこれであなたの口ををここで封じれば、私の能力の事が知られる心配が無くなるってことね!」

「聞けって! うおっ、あっぶね!」

 炎が総矢の肩の上を掠める。病院で腕を焼かれた時の記憶が総矢に冷や汗を流させる。

「相っ変わらず上手く避けるわね……でもこれでっ!」

 総矢は自身の能力、他人の考えを理解する力を使っていた。だからこそ次のみことの攻撃が分かった瞬間、必死に叫んだ。

「俺は誰にも言ったりしない! それに俺は確かに志井……」

「うるさいっ!」

 みことの両手から炎が線のように伸び、広範囲に広がる。やがて総矢を囲う円となると、炎は高く上に伸びて脱出不能の壁となった。そこから徐々に円が縮まり始めた。

(やっべ! 前より炎の使い方上手くなってるし、まだ体力もなさそうだ。コレはさすがに……どうすれば、とか言ってる場合じゃ!)

「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 総矢の悲鳴は燃え盛る炎の壁が一箇所に集中した瞬間の轟音にかき消された。

「ハァ…ハァ……」

 大塚みことはかなりの体力を消費していた。病院でかつて総矢を殺そうとした時より炎の扱いにも慣れ、体力も十分な状態だったとは言え、避け続ける総矢に能力で攻撃した量も相当のものだった。

「ハァ……何とか、間に合ったか」

 総矢は生きていた。正確には水口によって生かされていた。

「た、助かった……のか?」

炎の壁が総矢を包み込んだかと思われた瞬間、みことと反対方向からやってきた水口によって助けられた。後方から突然、水が炎の壁をぶち抜いて浸入し、総矢の全身を包んだ。その水膜により総矢は炎の壁から守られた。

「水谷さん? どうして助けるの!?」

 当然ながらみことは我慢ならない様子で叫ぶ。

「彼は私の能力を知っているのよ! それにテロ事件の犠牲者を装っていた! だから生かす理由なんて……」

 途中で言葉を止めた。清正の眼鏡越しに見る瞳が恐ろしく冷たい。

「何か? 文句は、ないよな?」

 言葉は至って普通だ。他人が聞いても別に何とも思わないはずの言葉、

「……わ、分かったわ」

 だが、みことは大人しく従っていた。視線を外し、従順に従うその姿は親に怒られる小さい子供のようだった。

(何だ、この人? 大塚さんがこんなに素直に従うなんて……)

 驚きのあまり総矢は言葉を失っていた。

「大丈夫だったか? 君に少し話を聞かせてもらいたいんだ」

 微笑みながら座り込む総矢に手を差し伸べる。

「あ、はい。ありがとうございます。うわっ……あれ?」

 清正に引かれ、一度は立ち上がったものの膝に力が入らず思わず座り込んだ。

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫、ではあります。ただ少し疲れて……話は座ったままでも?」

「ああ、問題ない。では早速、」

 清正の表情が真面目なものに変わる。

「先程、『俺は確かに志井……』と言っていたが、君は志井鍵矢なのか?」

 直球だ。総矢はここで嘘をつくような真似をしようものなら間違いなく命が無いことを確信し、話すことに躊躇いはしなかった。だが、それだけではない。何故か分からないが目の前の人間には話すべきだという直感が働いた。

「……そうです。信用してもらえることを前提に話しますが、俺は確かに志井鍵矢です」

「では何故君は死んだことになっている?」

 清正の二つ目の問いかけにも総矢はすぐに答えた。

「分からないんです。テロに巻き込まれて、病院で目が覚めた時は既に『志井鍵矢』とその家族は全員死亡していたんです。妹に至っては存在すら無くなっていました」

「……」

 黙って聞いていたみことが拳を硬く握り、歯を食いしばる。

(よくそんなことを平気でいえるものね! 私達をバカにしてるの?)

 みことが総矢を再び睨む。表情の変化を清正は見落とさない。

「大塚さん、駄目だからな」

「……」

「では続けて、君は能力を使える、違わないな? 君の能力は何だ?」

「……え?」

 総矢は耳を疑った。みことに焼かれる直前に現れた清正が知っている理由など思い当たらない。頭の上に疑問符が浮かんでいるような表情の総矢に爽やかに話す。

「『どうして分かる?』って顔だな。簡単だ、今の君の状況を見ればすぐに分かるさ」

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