捜索⑥ -能力の威力と目撃情報-
みことは廃墟の入り口で炎の海をただただ呆然と見ていた。
(こんなに……威力があるなんて……んっ!?)
直後、突然の眩暈に膝を突く。想像を超えていたのは威力だけではなく、その分の体力の消費もであった。
(……とにかく、1階にはいなかったようね。次……)
深呼吸して、次の炎球を投げる体勢に入った。
階段から流れてきた熱い空気が総矢に階下で起きた出来事を伝えていた。
(本気だ……この威力、洒落にならない。避ける避けないの問題じゃない!)
総矢は外へ出るべきと判断した。だが既に一階は炎の海だ。
(2階だし飛び降りるのは問題無いけど、その後は……だ、大丈夫だよな?)
不安に思いながらもガラスの入っていない窓枠に手を掛けた。その時、下で攻撃態勢に入っているみことに気付く。
「げっ、やばっ!」
慌てて飛び降りた総矢を見て、みことは攻撃の手を止めた。
(出てきてくれて助かったわ。一発でこれだけ体力奪われるのは厳しかったのよね)
体力に不安があるのはみことだけではない。だが、みことは総矢に悟られまいと必死に余裕を見せる。
「避けるのは得意みたいだけど、耐えられる訳じゃないものね。避けようが無いと思ったのかしら?」
「俺は誰にも話すつもりはありません。それでも殺す必要がありますか?」
「何? 今さら命乞いなの? 言っておくけど見逃すつもりは無いわよ」
みことが険しい顔で睨む。
「別に秘密がどうこうは今は大した問題じゃないのよ。あの事故での生き残りはもう私だけのはずよ。あんたは一体何なの?」
「俺は確かに志井鍵矢です! でも俺にも……」
口に出しかけたが、咄嗟に留まる。
(なんて言えばいい……それに信用してくれるのか?)
「嘘ばっかり言って……その人はもう死んでるのよ! 他人の名を語る偽者め!」
みことの両手に赤い光が灯る。
(偽者扱いかよ。いや、そんなことより何とか生き延びないと……こうなりゃ仕方ない。どっちの体力が先に切れるか我慢比べだ!)
総矢は能力を使わずにいる余裕が無いと判断した。
清正は朝に総矢が目撃された公園とは別の公園で聞き込みをしていた。
――ブブブブブ――
ポケットに入れていた携帯が振動する。
「はい」
『あ、水谷さん? 目撃情報です。頂いた画像データの人とよく似た人が今朝早くバスに乗ってたらしいです。行き先は、聞いた停留所からだとおそらく丘の上の慰霊碑のところです』
「よし、でかした! 今度食事を奢らせてもらおう」
『まじっすか? それじゃ期待し……』
相手の返事を聞き終わる前に清正は電話を切っていた。すぐに自分の車に戻り、煉に連絡を取る。
「俺だ。目撃情報だ。お前もすぐに今から言う場所へ移動しろ」
『了解、場所は?』
「テロ事件の犠牲者たちの慰霊碑だ。当然だがその周辺も探せ」
『分ーかってるって。すぐ向かう』
あけましておめでとうございます。