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護衛⑪ - 帰国 -

「まずは改めて礼を言わせてくれ。本当にありがとう」

 リゼの父親は深々と頭を下げた。

「そんなに気にしないで下さい。あの騒ぎの中、俺達を匿って外に出してくれただけで十分です」

「だが昨日は色々あって大した礼もできてないから……」

 どうにかして礼をしなければと思っている様子だ。レイルはすぐさまそれを察した。

「……そうだなぁ。礼をするなら何か大切なものをあげなきゃなぁ……」

 リゼの父親が突然話し出したレイルの方を見て興味津々に相槌を打つ。

「しかし今貴方がコイツに差し出せてこいつが喜ぶものと言ったら……」

「何ですか? 何がありますか?」

全てはレイルの一存で決まりかねない状況だ。

「コイツはロリコンだからなぁ……やっぱりお嬢さんをあげるしかないですね」

 当然の如く笑顔で言い切った。

「なんですと!? むぅう……いや、だが私も彼ならば……しかし娘の気持ちが……」

「イヤイヤイヤイヤ。ちょっと待ってくれません? 何そっちで話を勝手に進めてんですか? しかも俺はロリコンじゃないって言って……」

 総矢が止めようと間に割って入る。だが、

「私はぜひ彼のような人間にと思ってはいるのだが、やはり娘の意思を尊重しないと……」

 リゼの父には聞こえていない。

「それなら大丈夫。既に娘さんもコイツのことは気に入ってますよ」

 レイルは聞こうとしていない。

「お父様っ!!」

 リゼの叫び声に、流石にハッとして振り向いた。

「何で勝手に話を進めてるんですか!?」

「なんだ、総矢のこと嫌なのか?」

 にやけながらレイルが一言尋ねた。リゼは視線を逸らしながら答えた。

「嫌いじゃないわ。でも、す、好きでもないわ……」

 リゼの反応に優衣は複雑そうな顔をしている。リゼの父は娘に笑いながら声をかける。

「本気にするんじゃない。ただの冗談だ」

 視線を娘から総矢に移しながら、話を続けた。

「……それに、君にはまだやるべき事があるだろう? 何かあったら何時でも連絡をくれ。可能な限り君たちへの協力を約束する。すまないね。今はこれくらいしかできなくて」

 総矢は頷いて苦笑しながら答えた。

「ありがとうございます。本当に近いうちにお願いするかもしれないです」


 リゼ達の訪問は僅かな時間だった。帰り際に店の戸の所で不意にリゼが振り返る。

「これ……私からのお礼。色々と、ね……ありがとう」

 両手で持った小包を総矢に差し出す。

「あ、あぁ……開けてもいいか?」

 中に入っていたのは薄桃色の綺麗な石だ。石を掌に乗せ、じっくりと見つめる。

「石? 宝石……じゃないよな?」

「宝石じゃないけど、価値は負けないわ。効果抜群のお守りよ」

「ほぉ。効果抜群、ね」

 胡散臭いと言わんばかりの顔でもう一度手にした石を眺めた。リゼは再び全員に向き直り、礼と別れを告げた。

「ホントにありがとう……それじゃ、さよなら」

 優衣が不満そうな顔をしてリゼに別れの挨拶を訂正させた。

「『また』ね! 元気でね、リゼ」

「! うん、『また』ね、ユイ! ソウヤ達も元気で」

「ああ、『また』な」

 嬉しそうに手を振りながらリゼは車へと走っていった。リゼが最後に見せた笑顔は総矢が見た中では最高のものだった。優衣は走り去る車に涙を隠そうともせず手を振り続ける。そして、そのままリゼは自国へと帰っていった。

はいどうも。

護衛編が終了です。


次話も現在進行形で製作中です。

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