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護衛⑨ – 和解 -

 全員を拘束し、優衣とリゼを監禁した部屋に放り込むと総矢とレイルはリゼ達のいる部屋へと戻った。落ち着きはしたものの、二人の少女は戻った総矢に対し敵意を剥きだしている。

「黙ってて悪かった。今から話すからそれ以上の敵視しないでくれ」

 頭を掻きながら謝罪をする。深く呼吸してから総矢は話を始めた。

「元々、大使館の奴らからレイルの店にリゼを捜索するよう依頼が来ていたんだ。俺やレイルは当然こんなことになるなんて思いもしなかった。原因が家出と聞いていたからな。今日中に説得してここに連れて来ればいいって程度に考えていた」

 視線をリゼに絞り、話を続ける。

「だがリゼが狙われ、誘拐されそうになった。俺はそこにまず引っかかった。質問に何も答えないリゼを見て、何かあることは確信した。更にその後出てきたロブって大男。あいつに対しては優衣ちゃんが感付いてくれたおかげだ。あの怯え様は尋常じゃなかったからな」

 そこまで黙って聞いていたリゼが総矢に向かって声を張り上げる。

「とにかく貴方はあの人達の手助けをしたんでしょ! やっぱり貴方は私達の敵よ!」

「落ち着けって。俺にお前ら2人の救出を頼んだのは総矢だぞ」

「……え?」

 リゼと優衣は口を開けたまま固まった。

「総矢は今回の館長達の行動を知って、館長側の人間を全員片付けることを考えた。だが2人を人質にされたらどうしようもないから先に俺に保護しておいて欲しいって頼んだんだよ。その為に俺が忍び込む時間を少しでも稼ぐために敵の振りもしたんだ」

「レイル、俺が話していたんですけど……」

 いつの間にかレイルが説明している状況に総矢は戸惑う。だが、二人が敵視されていた総矢が話すより冷静に話を聞いていたのも事実だ。そこで当然の質問が結衣から飛んできた。

「じゃ、じゃあ何で私達に何も言ってくれなかったんですか?」

 少し間を空け、総矢は答えた。

「……それは、全てを話して協力してもらうより敵に捕まっていた方がまだ安全だと……」

「『演技が下手でばれると思う。ばれたら更に厄介になるから言わないでおく』だってさ」

 言い終わる前にレイルが横から口を挟んだ。

「バッ! 言うなっ! いや、違うぞ。演技力が不安だったんじゃなくて安全性を考えて……」

 必死に弁解しようとする総矢を見て二人はくすりと笑った。店にいるときのようなレイルと総矢の振る舞いに、二人は既に総矢に対しての敵意を解いていた。

「ううん、もういいです。私達もう総矢さんが敵じゃないって分かりましたから」

「でも、ソウヤももう少し私達を信用してくれても良かったんじゃないかしら?」

 納得した二人の言葉に総矢は安堵した。その総矢に今度はリゼの父親が疑問をぶつける。

「しかし君は一体何時、館長達の行動や行為を知ったのかね?」

 それは総矢にとっては最も難しい質問であった。『俺は人の頭の中が読めるんです』などと言っても通用するかは分からない。それ以前に、そんな力を持っていることを他人に話すべきなのかを悩んだ。

(下手に話すのは気が引けるな……。この力、ここで話す必要……ないよな?)

「それは、企業秘密ってことで勘弁してください」

「分かった。ともかくもう一度礼を言わせてくれ。本当にありがとう」

 リゼの父親は深く頭を下げた。


 その後、すぐに駆けつけた警察により館長達は逮捕され、事件は翌日のトップニュースとなった。だが、そのニュースに総矢達が関わったことは何一つ取り上げられず、全てはリゼ達親子の大活躍として報じられた。館長達に加担していた者達を除く大使館の職員も総矢達の存在を知ることなく事件は幕を閉じた。

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