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護衛⑧ – 用件 -

 館長は銃を一度下ろし、不満そうに総矢に声をかけた。

「なんだ、お前か。あの娘を連れてきた働きには感謝しているが命令には従え。部屋には入るなと言っただろう」

「残念ですが俺の仕事は終わってます。もうあの子をちゃんとここに連れてきたんですよ」

「そうか。それならとっとと帰れ、邪魔だ。金はもう払ったんだ、用もないだろう」

 館長は冷たい視線を総矢に送り続ける。

「それがそういうわけにもいかないんですよ」

「何だと?」

「こっから先は個人的な俺の用件ですから、誰が何言おうとも聞きゃしませんよ」

 総矢の表情が一変した。閉じていた目を開き、館長を真っ直ぐに見る。その目は怒りに満ちていた。先程の館長の比ではない程に怒りを迸らせている。ロブは館長を下がらせ、総矢に近づいた。

「いいから今は外に出て……」

「あんたも……コイツ等の仲間なんだよな……」

 ロブが総矢の正面に立ち、部屋から総矢の体を押し出そうと手を伸ばす。しかしその直後、ロブは背筋に寒気を感じた。目の前に立つ総矢の纏う空気がロブに異常さを伝えた。腕力では勝っている相手でありながらもロブは身の危険を感じられずにはいられなかった。無意識に防衛本能が働き、伸ばした手を硬く握り、総矢に殴りかかった。

「……」

 拳を楽々と受け流すと、無言で手にした武器でロブの顔面を打つ。ロブは鼻血を吹きながらそのまま床に倒れて気を失った。命を奪わなかったのは、総矢が怒ってはいたものの復讐には取り付かれていなかった証拠だ。突然の出来事に怯えた館長はすぐに声を張り上げる。

「お、おい! 誰かいないのか! て、敵だ!」

「今更ピーピー騒ぐな」

 館長の目の前まで歩み寄った総矢は右手で首を掴み、再び睨みつける。

「俺の質問に答えろ。嘘はついても無駄だ。死にたくなかったら正直に答えろ!」

「た、待機させていた他の奴らはどうした?まさか……」

「全員そいつと同じように眠ってもらってるだけだ。それより答えろ!」

 右手の指に少し力を入れると、館長は黙って首を縦に振る。

「これまでに売った密輸物の中で使い道が分かっていたものはあるか?」

 首は縦に振られる。

「その中で今年の7月7日に起きたテロ事件に使われたものがあるか?」

 この問いにも館長は首を立てに振った。直後に部屋には総矢の怒鳴り声が響き渡った。

「答えろっ!! 誰だっ!! それを誰に売った!!」

「わ……分からないんだ……今年、まだ春になる前に妙な男がただ『売ってくれ、金はあるから』と言って……大量に我々から買っていったんだ」

「何故その男だと分かるっ!!」

「そいつが、電話で話しているのを俺の部下の1人が聞いたんだ『……7月の航空機の分は入手しました……』って……だから、きっと……」

 館長は嘘をついていなかった。歯を食いしばると無抵抗の館長の顔面を思い切り殴った。倒れて気を失った館長を前に、堪えきれない怒りを壁に思い切りぶつける。

「……ハァ、ハァッ! クソッ!」

呼吸を整え、机の上にあった偽りの報告書を破り捨てる。呼吸を整え、リゼの父親に顔を向けて話しかける。

「……先程はすみませんでした。お怪我は大丈夫ですか?」

「あ、ああ。いや、そんなことよりありがとう。助かったよ」

 戸惑いながらも総矢に礼を言う。総矢が差し出された手に掴まって立ち上がろうとした時だった。レイル達三人が総矢のいる部屋に静かに顔を出した。

「お父様っ!」

 総矢が振り返ると、そこには駆け寄るリゼの姿があった。リゼは総矢と自分の父親の間に立つと総矢に向かって大声で叫んだ。

「お父様から離れてっ! もうどっか行ってよ! 二度と私たちの前に現れないで!!」

 必死で叫ぶその顔には再び涙が浮かんでいる。総矢は力一杯叫ぶリゼを見て安心してため息をついた。そんなリゼを父親が後から抱きしめた。

「リゼ! 無事だったんだな……よかった。本当によかった……」

 父親の抱擁にリゼは動揺している。二人を見ていた総矢の肩に手がかかった。振り返るとレイルがすぐ後ろに立っていた。レイルの後ろに体を隠しながら総矢を睨む優衣もいた。

「言いたいことは分かってる。でも少し待ってくれ。リゼにもまとめて説明するから」

 怯える優衣に声をかけると、レイルと総矢は部屋の中で倒れているロブと館長の手足を縛り、拘束した。レイルの手際の良さ、楽しそうな表情には総矢も言葉を失った。

「……」

「ほら、早くしろよ。目覚ます前に終わらせるぞ」

「……ああ……」

今更ですがPCで読んで下さっている方はお気づきと思いますが、ちょいちょい『(改)』っての(再編集の印)が付いていますが、内容は変わってません。


タイトルの投稿ミスや、句読点等の修正を加えているだけです。

内容は一切変更入れてないのでご了承下さい。

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