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初仕事⑤

 総矢が中に入ると、二人の男性がすぐに扉を閉め、複数の机を扉の前に移動させる。

「怪我しているじゃないですか?早く手当てを」

「すいません、ありがとうございます」

 会議室に避難していた人間は全部で七人。その中の一人が総矢に応急処置を施す。応急処置を受けながら避難者達の顔を順に見る。避難者達の中に画像データで見た顔の男性を見つけて話しかける。

「有馬さん、ですね?あなたの娘さんの依頼で助けに来ました」

 避難者達は総矢の発言に驚き、目を丸くする。総矢は何とか生き延びてきた避難者の一人と思われていたのだ。

「助けにって、一人で?」

「怪我しているじゃないか?」

「無理よ。外には危険な奴らがたくさんいるのよ!逃げられないわ!」

 生存者達は次々と総矢に悲観的な言葉をぶつける。負傷して辿り着いた総矢を見ると不安が更に高まる。

「時間がないんです。早くここから脱出しないと時間が……」

 言いかけて総矢は言葉を止める。

(これ以上パニックになるとどうしようもならなくなる。ここで言う訳にはいかないな)

 総矢はレイルすぐに連絡を取る。

「レイル?聞こえるか?目的の人物を見つけた」

『おお、そうか!で、その人は無事か?』

「無事です。ただ、ここに辿り着くまでに俺が結構怪我しました。その上生存者が7人いて、俺1人じゃ護衛しながらここ脱出するのは正直厳しいんですが……」

『そんなことだろうと思ってそっちに1人送った。多分それで大丈夫だ』

「どんな人です?」

『女だ。特徴は……多分ジーンズはいている』

 電話越しに聞こえるレイルの言葉に質問を返す。

「ジーンズ?いや、そういうのじゃなくて人としての特徴は……」

『特徴って言われてもな……見れば分かると思うぞ。店を出る前に俺が渡した携帯でアイツにはお前の居場所は分かるから合流は問題ないはずだ。それまでに少しでも正面門に近づいておけ。……それと、バリケード完成までもうホントに時間がないからな』

 レイルはそう告げ、電話を切った。通話を終えた総矢は生存者達に呼びかけた。

「すぐにもう1人来ます。正面門に向かうのに一番近いルートを教えてください。合流するまでに少しでも正面門に近づきましょう」

「もっとちゃんとした助けが来るまでココに篭城した方がいいんじゃないのか?」

 画像で確認した少女の父、有馬が総矢に尋ねる。

「……ここには長くいられないんです。待っていても助からないんです。……詳しくは話せませんが本当に早く脱出しないと駄目なんです」

 パニックを恐れて言いだせない。

「それだけでは納得できないな。何か理由があるようだが、内容を話してくれないと我々だって……」

(ここで黙っていると、皆会議室から動いてくれそうにもないな。……仕方ないか)

 総矢は諦めて事情を説明した。始めは誰もが動揺していたがパニックにはならなかった。総矢が言葉を続ける。

「皆さんは何としても俺が守りますから、信用してください。行きましょう」

 そうは言うものの総矢の傷を見て、不安は高まる。だが会議室に残ることは絶望的なことをよく理解できたために、生存者達は正面門に向かうことを決意した。

(何とか全員無事に脱出しないとな……)

 頭で考えながら扉に向かい総矢は歩き始めた。その時だった。

(本当に大丈夫なのか?)

(やっぱり外に出るのは危険じゃ……)

(怖いなぁ。何か来るんじゃないのか。いや、もう外に何かいるかも……)

 総矢は後ろを振り返る。生存者達の不安そうな顔が窺える。もちろん誰も声は出していない。

(……何だ?今のは?ん……これは、外に何かいる?)

 感じた疑問をすぐに忘れ、扉の向こうに注意を向ける。

おまけ

――通話後――

レイル

 「特徴か……目立った特長ないんだよなアイツ」

優衣

 「髪型とか何かないの?」

レイル

 「最後に直接会ったのがいつか分からないから……今どうなってんだろ」

優衣

 「性格は?」

レイル

 「普通」

優衣

 「……レイルさん……」

レイル

 「そんな冷たい目をしないでくれ……」

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