表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/103

初仕事③

「何を言っている?時間が無いんだ。爆撃に巻き込まれるぞ!」

「大丈夫です。間に合います」

 もちろん根拠はない。だがそう言い切る総矢の真剣な表情を見て、男は総矢を止めることを諦めて社員証を差し出す。

「使いなさい。私がついて行っても邪魔になるだけだ。正面門はここからそう遠くない。私は1人でも脱出できるから……」

「ありがとうございます。気をつけてください」

 社員証を受け取り、総矢は建物の入口で男と別れ、施設の奥へと向かう。相変わらず激しい雨が降り続けているため視界は悪い。その中を『D棟』へと向かい走り出した。


――その頃、レイルは店でとある人物と、連絡を取っていた。

『何?私今寝てたんだけど』

「緊急で入った仕事を新人が1人でやってる。だがどうにも状況がよくない。サポートに回ってくれないか?」

『私の専門分野は戦闘じゃないのよ。他を当たってよ』

「どいつもこいつも今は無理だった。だから仕方なくここにいた新人に行かせた」

『……それ、おかしくない?いくらなんでも全員が対応できないなんて……』

 レイルは相手のその言葉で初めて気付いた。

「……確かに妙だな。慌てすぎて気が付かなかったな」

『まぁいいわ。行ってあげるわ。なんだかコレのテストには丁度良さそうだし』

「……分かった。無理言ってすまない……」

『それで場所はどこ?』

「遺伝子研究所だ。リミットまで大体だが1時間切ってるから急いでくれよ」

 そう言うとレイルは電話を切り、首を傾げる。

「これで、まぁ大丈夫だろ……。それにしても、どういうことだ……」


「あった。『D棟』、ここだ」

 総矢は男に貰った社員証の地図のおかげで迷うことなく目的地に到着した。入口は先程目にした『G棟』と同様にガラスが破壊されている。だが、入口付近で防火シャッターが下ろされ、外からの進入ができなくなっている。何とか入ろうとシャッターに攻撃を加え続ける二つの巨体が入口の外からでも確認できる。

「今度は熊かよ……とんでもない動物園だな……」

 文句を言いながら熊に気付かれないよう建物に沿って歩く。一周するが中に入れるような場所は見当たらない。窓にも格子が張られて入れそうにない。困った総矢は再度地図を確認し、中に入る方法が無いか調べる。

(……これは?ケーブル整備用のトンネルか!ん?結構いろんなとこと繋がってる。なんだ、最初からコレ使えばよかったな)

 建物内部から地下に伸びた通路のようなものがあり、それは総矢がいる所から近くにある全ての棟だけでなく、正面門に近い『A棟』の方にも伸びている。すぐに近くにあり、シャッターの閉まっていない『I棟』に入り、地下へ続く階段へと向かった。地図でもう一度内部に繋がっていることを確認し、総矢は扉を開けて階段を下りる。社員証がカードキーとなっていたために、貸してもらった男に心の中で感謝を告げる。

「急がないとな……」

 総矢は慎重にはしごを降りる。下から漏れる弱々しい明かりは総矢の降りるはしごまでは届かないため、手探りで何とか下まで降りた。弱々しい明かりが総矢の目の前の太い配管やケーブルの束を照らしている。

(もう少し明かりがあってもいいもんじゃないのか?)

 などと不満を感じつつ、総矢は先へと向かう。建物の内部へ続く扉がすぐに総矢の目の前に現れる。扉の鍵は『I棟』と同様に社員証で問題なく開錠できた。出口を見つけ、静かに扉に近づく。そっと扉を押し開け、向こう側の様子を伺う。

(何もいない……誰もいない、か)

 扉を一度閉じて地図を取り出す。現在置と屋内の部屋の位置を確認し、総矢は人がいそうな場所に目星を付ける。

(暴走が始まった時間から考えると大体の人間は1階の植物のある部屋か2階の研究室にいたはず。そこから逃げ出すとしたらこの階段を使うだろうから……)

 状況を想定し、順に研究者達の足取りを推測する。

(3階の会議室か4階の休憩所。……いや、扉の造りからして会議室が妥当か)

 総矢はそう結論付けると三階へ上がる階段へと向かう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ