武器と転送装置
「断るって、どういうことですか?」
「言葉通り紹介を断るってことだ」
「理由を聞いているんです。なぜ断るのかを」
身を乗り出し、総矢はレイルに迫る。
「落ち着けって。政府関係の人間の依頼は大抵向こう側からご指名があるんだよ。そんな重要な仕事をどこの誰とも知らない奴に頼むほど馬鹿じゃないからな」
「……どうすれば政府の方々に自分を売り込めるんですか?」
レイルがにやりと笑う。
「そりゃまぁ、仕事重ねて名を売っていかないとな。最初は誰でも簡単な仕事から始まるもんさ、何でもそうだがな」
「それしか、ないんですね」
「ま、簡単とは言っても結構ヤバイのもあるけどな。仕事中は何があるか分からないから皆武器を携帯している」
「でも、武器なんて持っていたら目立ちませんか?仕事内容によってはばれるとまずいものもあるんじゃ……」
「だから大体のヤツはコイツを使っている」
レイルが総矢に腕時計を見せる。当然ながら総矢は首をかしげる。
「腕時計……ですよね?それが武器ですか?」
「まぁ見てな」
そう言うとレイルは腕時計についているボタンを押した。と同時に腕時計から光が溢れる。光はレイルの持つ腕時計の上方を照らしている。
「それは一体……」
言いかけた総矢は目を丸くする。光の先から一本の刀が落下し、レイルの手に収まった。
「とまぁこういう感じで……」
「説明してください。今のは一体何ですか?」
「簡単に言うと転送装置だ。コイツは超小型化したものなんで武器一つ分で精一杯だがな」
「こんなものがあるなんて……」
レイルに手渡された転送装置をじっくりと眺める。
「知らないのは当然だ。これを持っているのはごく一部の人間だけだからな。それにこの装置に関することでさえ情報レベルは1だ。」
「情報レベルが1、ですか」
驚き、手元の腕時計を見つめる。
「まぁそういうことだ。下のボタンを押してくれ」
レイルに言われるがまま指示されたボタンを押す。レイルが持っていた刀が先転送装置から発せられた光へとゆっくり進み、総矢達の前から完全に姿を消した。
「という訳で、転送装置を1つやる。いずれ代金は頂くがな。よし、それじゃこっち来な」
総矢はレイルの後をついてゆく。入ってきたドアと別方向のドアを開けると地下へと続く階段が顔を出す。階段を下りながら総矢が口を開く。
「あの、俺は武器なんて今まで何も使ったことないんですけど」
「皆そんなもんさ。色々試して自分にしっくりくるのをここで選ぶんだ」
階段を下りきると大きな部屋に出た。
「まずはコレ使ってみろ」
地下に到着するとレイルは総矢に別の腕時計を渡した。レイルの指示通りに総矢は上のボタンを押し、手元に木製の長い棒を転送させた。
「よっし、それじゃいくぞ」
同様に棒を転送させたレイルが突然総矢に襲い掛かる。
「いくぞって、うわっ!」
レイルの振るった棒が総矢の鼻をかすめる。勢い余って後ろに倒れる総矢に対し、レイルは笑いながら続けて拳を繰り出す。
「オラ、のんびりしてると怪我だらけになっちまうぞ!」
かわしきれず、レイルの拳が総矢の右頬に当たった。