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突入⑬ -再会-

 三人が部屋の外へ出る間に腰の抜けた理沙に総矢に近寄る。互いに言葉を発すること無くただ見合っている。かける言葉が見つからない。

「……理沙、なんだよな?」

「……兄、さん……」

 絞り出した言葉は互いの存在を確認するものであった。妹の無事を知り、総矢は涙を浮かべておもむろに理沙を抱きしめた。

「無事で、良かった……ホントに、ホントに……」

 理沙は強く抱きしめられた腕の中で、久しく感じていなかった人の体温を噛み締め、家族の生存を改めて実感した。静かに瞳から流れ出る涙は、すぐに自身の心の壁を決壊させ、大声で泣き叫んだ。

「夢じゃない、んだよね……? うっ、うあぁぁぁぁ! 兄さん、兄さん、兄さぁぁん!」

 総矢の腰に手を回し、思い切り涙を流す。

「ここにいる。もうどこにも行かない、大丈夫だ。もう大丈夫だ」

「ごべんなざい、ごめ……うぅ、うぇぇぇん!」

「いいよ、いいんだよ。はは、汚ったねぇな。ちょっとは顔を拭けよ」

 総矢も泣きながら自分のシャツで理沙の涙と鼻水を拭う。

「ヴン」

 それでも顔はぐしゃぐしゃだった。そんな中でも理沙は笑いながら返事をしていた。総矢も泣きながら、もう一度互いに抱きしめ合った。


煉の処置を終え、二人を待って部屋の外で待機していた三人にも、声は聞こえていた。おもむろに煉が口を開く。

「なぁ、清正、大塚」

「なんだ?」

「どうしたの?」

「さっきのは総矢の能力で間違いないと思うが、アレってどういう能力だ?」

「今まで総矢自身が言っていたのは『相手の思考を読み取る』だし、暴走して能力が反転してしまった結果の『自分の思考を読み取らせる』じゃない?」

「……そうかもしれないが。俺は少し違うような気がする。断定は出来ないが……」

 清正は言葉を最後まで口にすることを躊躇った。二人も見慣れない悩む表情をしていた。

「どうした? 否定だけって珍しいな」

「考えがあるなら聞かせてよ」

「……ま、そのうち分かるだろ。不確定な事は置いておいて、それより今後の話をするぞ、総矢の妹とやらについてだ」

 清正の表情が普段通りに戻る。

「殺しあった相手、だからね」

「だが、向こうにも事情がありそうだ」

「事情があるっていうより俺達と同じ様な立場だな」

「でも兄弟で殺し合いになるなんてね。お互い顔も覚えてないって不仲にも程があるわよ」

「死んだと思っていた家族と会えたんだ。結果で言えば良かったじゃねぇか」


 手当を終え、休んでいた煉達の元に総矢達が姿を現す。

「すみません、お待たせしました」

 壁を背にし、座っていた三人が兄妹に目を向ける。理沙は総矢の陰に身を隠し、腕にしがみつきながら強ばった表情を覗かせていた。そんな理沙を総矢は強引に前に押し出す。総矢の手から離れた理沙は深々と頭を下げる。

「本当にすみませんでした。あんなことをして、許されるとは思っていません。でも……せめて、せめてあの人達を止める為に何かさせてください!」

 開口一番に告げられた謝罪に清正達は冷静に対処する。

「謝罪は受け取っておく。だが今後どうするかはここでは決められないな。ひとまずここから出るぞ。君も来てもらうよ、いいかな?」

 顔を上げ、なんとも言えない表情をしながら理沙は頷いた。そんな理沙の頭に手を乗せ、総矢が無言で励ます。清正を先頭に、総矢達は元来た道を引き返していった。地下から出ると、まだ薄暗いものの、互いの姿は確認できる程度まで明るくなっていた。

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