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退院

 矢口の提案を聞いてから一夜が明けた。

「名前は決まりましたか?」

「はい。『崎見(さきみ) 総矢(そうや)』にします」

「……普通ですね。と言っても普通じゃなければリスクが上がるだけですが」

 矢口は鍵矢の新たな名前を入力していく。

「後でまとめて確認してもらうとして、残りは……生年月日ですね。どうします?」

「生年月日は2071年7月7日にして下さい」

 鍵矢は即答する。初めから決めていたことであった。

「事件の日ですか。分かりました……これで登録データは完成です。確認してもらえますか?」

 矢口は電子ボードを差し出す。上から順に確認をし、住所蘭に目を留める。

「この住所は、どこなんですか?」

「私の知人の自宅です。ここを出たらまずその住所に行ってください。力になってくれると思います」

 行き先に少し不安を感じつつも鍵矢は了承した。

「問題なければ一番下の『登録』を押して下さい」

「はい」

 迷いなく鍵矢は『登録』を押す。その直後、院長室に置いてある機器の一つからカードが出てくる。矢口は鍵矢にそのカードを手渡す。

「これが新しい君のIDカードです。総矢君」

「……どうも」

 受け取ったカードを眺めるが何の変哲もないIDカードだ。

「少し危険ではありましたが、君のIDカードのレベルは少し高いものにしておきました」

「IDカードのレベル?」

「民間人が関わることはあまりないので表沙汰にはされていませんが、機密情報にはいくつかのレベルに分けられています。その情報はIDカードのレベルに対応して取得が可能となります。全部でレベルは5段階ありますが、一般の方のレベルは0です。何か功績を挙げたりすることでレベルは上げられます。君の新しいIDレベルは1です」

「1ですか。貴重な情報を手に入れるためにはそれに応じるIDカードのレベルが必要ってことですね?」

矢口は頷き、

「ちなみに私のIDレベルは3です。IDレベルが3を超えると、一部ではありますがその地域の人間のデータ管理する権限が与えられるのです」

「だから俺のデータを……」

「当然政府の人間に知られるとレベルは1になってしまいます。それと、7月7日の事件については私のIDレベルでは一般情報しか得られませんでした」

「あの事件は本当に何もないか、高レベルの機密情報ということですね?」

(レベル3で……機密情報だとしたらこれを調べるだけで全て分かりそうだな)

 鍵矢が考えていると、疑問が浮かぶ。

「ん?でもIDレベルを上げるのは大変なことじゃないんですか?」

「そうです。まっとうな手段であればレベルを1上げるのに普通10年はかかります」

 驚くべき年数に思わず鍵矢は噴き出す。

「ですから、そのためにも必ず最初に先程お伝えした住所に向かって下さい。詳しくは向こうで話を聞いた方が早いと思います」

「分かりました。色々とお世話に……」

 言いかける鍵矢に矢口はメモを手渡す。

「私の連絡先です。何かあったら病院ではなく直接ここに連絡を入れて下さい」

 鍵矢は受け取り、改めて礼を言う。

「お世話になりました。」

「全てが分かったら、私にも話してもらいますよ」

「内容次第、ですよ」

 鍵矢は振り返ることなく病院を出て行った。その背中に矢口は一言呟く。

「退院、おめでとう……」

病院編これにて終了です。


※数少ない読者の皆様、投稿が遅くなり申し訳ありませんでした。

 可能な限り早く、と思っていますが投稿が遅くなることもしばしばあるのでご了承ください。

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