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幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい  作者: ゆずまめ鯉


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6話「社会貢献に尽力しよう」後編

 翌日の午前十時過ぎ。ミレアは、ルパート王太子が手配した屋外のオークション会場にいた。侯爵家代表として参加する、エミールに付き添いを頼まれたのだ。他にも声をかけたそうだが、全員断られたという。だからハウスメイドで代替の効くミレアが傍で待機することになった。


「退屈しない?」

「いえ。色んな品々を拝めて楽しいですよ」

「そうか。それならよかった」


 侯爵夫人とイザベラも出席しており、自分の提供したものにどれほどの価格がつくのか、期待に満ちた表情で待機している。


「……あら?」

 会場をふと見渡すと、フランドル侯爵邸にいるはずのジョルジュの姿が目に入った。ジョルジュはミレアの弟だ。ルパート王太子に話しかけられていた。


「どうしてジョルジュが、ルパート王太子と一緒にいるのかしら」

「ん? ジョルジュくんなら、炊き出しの際によく王太子と一緒にいるのを見かけているよ」

「そうなんですか?」

「うん。王太子は気さくな方だから、ジョルジュくんも心を許してるんじゃないかな」


 原作でも、王太子は没落令息であるジョルジュを気にかけていた。そう頻繁ではないが接点はある。

 ミレアが断罪された後、弟の消息は語られておらず不明だ。もしかすると、王太子に助けられて生き残っていた──なんてこともあるのかもしれない。

 考え事に夢中になっていたところに、三毛猫が突如現れ、ミレアを目にするなり走ってきた。


「にゃー♪」

「きゃあ!」


 オークションが終わるまでの三時間。招待客は着席していたが、ミレアは立ちっぱなしだったこともあり、いきなり現れた猫に気を取られ、あろうことか転んでしまった。


「も、申し訳ございません」


 猫のせいで転んだというのに、勝手に驚いて走り去ってしまった。ついてなさすぎる!

 侍女が粗相をしてしまい、外で侯爵令息に恥をかかせてしまった。すぐさま謝ると、エミールは手を差し出した。


「大丈夫?」

「え、ええ。平気です」


 手を借りていいものか迷いながらも、ここで無視してしまえばフランドル侯爵夫人の耳にも入るかもしれない。すぐさま移動するべく手を借りると、先ほどまでエミールが腰かけていた椅子に座らされた。


「怪我してない? ちょっと失礼するね。ああ……膝が切れちゃってるね。ここで待ってて」

「え!? このくらい、平気ですよ!?」


 膝を捲られ脚を見られると、なんと膝からは出血していた。大した傷ではないのに、エミールは左右を確認すると、近くの草むらの方へ向かってしまった。たかがメイドの手当てのためだけに、誰かを呼びに行ったわけではなかったので安堵する。程なくして戻ってきた。


「あの、それはなんですか?」

「ノコギリソウとオオバコだよ」


 手にしていた二つの薬草に驚きつつも、どこから取り出したのか小鉢と棒で摩り潰して傷口に塗布してくれた。どういうわけか慣れた手つきだ。それだけではなく、ポケットから取り出したハンカチを引き裂き、包帯のように巻いてくれた。手当てしてくれた。


「これで大丈夫だ。一応、家に戻ったら傷口を洗ってね。これはあくまで応急措置だから」

「……ありがとうございます」


 どうして手当てできるのか。この時代に生きるならば、当たり前にある知識なんだろうか。ミレアは不思議そうにしていると、エミールは「本で見たんだよ」と答えた。


「ところで、歩けそう? おんぶしようか?」

「だ、大丈夫です!」

「そっか。それじゃあ、帰ろうか」


 なんとかフランドル侯爵夫人に見られることなく退散できたので、不幸中の幸いだった。邸宅に戻ってからは、午前中に抜けてしまった分の仕事が押し寄せてしまい、膝の怪我を気にしている余裕はなかった。その忙しさのおかげでかえって助かった。

 途中、イザベラに呼び出され、オークションでつけられた値段を聞かされたり、アフタヌーンティーにスフレパンケーキを要求されたりと、いつも通り過ごした。

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