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幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい  作者: ゆずまめ鯉


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6話「社会貢献に尽力しよう」前編

 首都ローゼンブリッジには、慈悲深い王太子がいる。その名はルパート・オーガスト王太子だ。年齢は十八歳。エルダークラウンと呼ばれる、部屋の数は七百以上と掃除が大変そうなくらい広々とした宮殿に、国王、女王、弟らと住んでいる。

 ルパート王太子が慈悲深いとされている一番の理由は、十代前半から慈善活動に力を入れているからだ。孤児院や生活困窮者の支援は当たり前で、定期的に貴族らを集め、使わなくなった貴族の私物を収集してオークションにかけている。もちろん運営費は王太子持ちだし、売上は全額寄付だ。

 王太子が身につけている宝飾品も惜しみなく投じるため、王室とお近づきになりたい者や、王太子の私物欲しさに貴族らはこぞって参加していた。

 今回の活動以外にも、率先して街中で炊き出しを行ったり、自然災害が起これば率先して私財を投じ、自ら話を聞きに行ったりするため、市民からの信頼が厚い。次期国王に相応しいと誰もが口を揃えていうほどだ。原作にも登場している人物だ。

 今年も年に数度のオークションを開催するとのことで、フランドル侯爵家にも、不用品を持ち込むよう通達があった。ミレアはイザベラに頼まれ、寄付する品の選別を手伝っていた。


「お嬢様。そのドレスはもう着ないのでは?」


 もう着ないと数分前までは言っていた桃色のドレスを、回収用に用意した箱から取り出し、寝台に置いてしまったのでミレアは指摘する。イザベラの私室にある寝台の上には、物で溢れ返っている。


「気が変わったのよ!」

「お嬢様。そのオルゴールは、壊れているのでは?」


 今度は、数年前に聞けなくなってしまったというオルゴールを箱に入れたので、声をかける。いくら不用品でも、壊れたものを持参するのは外聞のためにも控えるべきだろう。後で、イザベラの身の回りの世話をしているヤングレディーメイドの確認作業があるため、注意されるのは相談に乗っているミレアだ。


「私が気に入って購入したものよ。きっと高値がつくに違いないわ」

「それなら、修理に出しましょうか?」

「でも、修理してしまったら、寄付するのに惜しくなってしまわない?」


 先ほどからこの調子だ。まだ十一歳の彼女は、なかなか決められない。母親である夫人に、不用品を五つ選ぶように言われている。それなのに、一つ決めては一つ戻すので、まったく進んでいなかった。かれこれ一時間はこの繰り返しだ。


「どれも必要だから買っているのに、選べるわけないわ!」

「でしたら、お嬢様が投げて傷のついた、この薔薇のブローチはどうですか?」


 先週、癇癪を起こしたイザベラが腹いせに投げたものが机の角に命中してしまい、小さな傷がある。母親に食い意地を指摘され、いなくなった途端に怒り出して、ものに八つ当たりをした。まだまだミレアの教育は足りないようだ。


「嫌よ。傷物を出すなんて、お母様から叱られるに決まってるじゃない!」

「磨きますよ」

「で、でも傷がなくなったら……」

「お嬢様には見せません。それなら惜しくもなんともないでしょう?」

「そ、それもそうね」


 綺麗に修繕した品物を見せなければ、物欲も治まるだろうと考えた。愛着が湧いているものならそもそも投げないだろう。


「あと、先ほどの桃色のドレスですが、お嬢様が先月、ビーフシチューを零した形跡があるので、そちらも不用品にしてもよろしいかと」

「そんなの、恥ずかしいわ!」

「問題ありません。染み抜きします」


 だいぶ日が経ってしまっているが、染み抜きができなければレースを足すつもりだ。それを言ってしまうと、決心が揺らぐことは目に見えているので黙っている。


「……それならいいわ」

「ようやく二つ、決まりましたね」


 ここからが長いことはわかっている。もしかすると今日中に終わらないかもしれない。オークションは明日なので、なんとか終わらせる必要がある。


「ねえ、これから三つを買いに行って、それを提出するのはどう?」

「ダメですよ」

「なぜ?」

「情が移ってしまって、手放せなくなるお嬢様の姿が容易に想像できるからです」

「う……」


 前回、実際にあったのだ。どうしても五つ選べないからと市場で仕入れるも、気になって買ったものだから絶対に手放したくないと直前でごねたことがあった。その時は、ミレアが適当に選んだものを追加購入しに行き、事なきを得たが大変だった。令嬢の私物として相応しい一品を、五つも探し回るのは二度とごめんだ。


「それなら、これだけは絶対に譲渡したくないものを選んでください」

「そんなの、全部に決まってるじゃない!」

「さすがにサイズアウトしたこのブーツは不要なのでは?」


 三か月前まで履いていたオーダーメイドのブーツを指さす。ワンポイントとして上の方に、黒猫の足跡を刺繍してある。施したのはミレアだ。紐はレースで可愛らしい見た目をしており、半年も履いていないのでまだまだ活躍するだろう。


「我慢すれば履けるわ」

「ですが、無理に履いてしまうと足の形が歪んでしまいますよ? いいんですか?」

「……これにするわ」


 少々強引だっただろうか。気を落としているイザベラに同情しそうになる。そこで、とあることを提案することにした。


「お嬢様。誰かに譲りたくないほどのお気に入りなら、ブーツを模写しておいて、後からまたオーダーすればいいんですよ」

「なるほど、それもそうね!」

「それだったら、あと二つ、選べますよね?」

「うん」


 教育的にはよくないことは承知の上だ。これでは元も子もない。けれど、まだ十一歳という年齢の子どもから、愛用しているものを取り上げることも、やっぱり教育上よくないのでは、とミレアは考えた。

 提案を快く受け入れてくれたので、不要品として四つ目と五つ目もあっさり決まった。寝台の上に散らかっているものを一つ一つ回収し、元の場所へと片づける。イザベラはというと、スケッチブックを取り出し、選んだ五つの品をまじまじと観察しながら絵を描いていた。


「あら。もう終わったの?」

「ええ。お嬢様が描いているものが、今回の不用品です。後はお願いします」

「わかったわ」


 休憩時間を取っていたイザベラのヤングレディーメイドが戻って早々、片づけをしているミレアを目にして驚きを露わにする。前回のひと騒動を傍で見ていたため、信じられないといった様子だ。

 そんなレディーメイドの彼女に、ことの顛末を簡単に説明すると納得してくれた。部屋から退室すると、ミレアは本来の仕事である清掃作業に戻った。

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