第10話
放課後の誰もいない教室。
「そんなに落ち込む事ないって〜!!」
「そうそう。やりたい事なんて、そう簡単には見つからないよ。みんなそうだよ?」
「でも…2人はさ、方向が見えてるじゃん?私、本当に真っ暗で、何にも見えなくて…。」
「明里…。」
「まださ、進路について考えるのは始まったばかりなんだから。大丈夫だよ。こうやって悩む事にさ、価値があるんじゃない?」
「…そうかなぁ…。」
何の解決策も見当たらないまま、最終下校時刻になったので、私達はそれぞれ別れて帰った。
生ぬるい夏の風が頬をなでる。
稲の緑が生き生きと背を伸ばしていた。
気持ちが悪かった。
(私は…どうしたいんだろう…。)
いつもの公園を抜ける。
遠くの方で、男がいつもの様に、作業をしていた。
ふいに、衝動が起こった。
(あの人に話しかけてみたい…。)
自分の中にあるモヤモヤを何かでかき消したかった。
明里はスピードを上げて男に近づいて行った。
(そう言えば、私、あの人の顔を見た事がない…。)
(行って何をするの?)
(なぜ毎日ゴミ拾いをしているのですか?って、聞く?)
(急に、そんな事聞くなんて変じゃない?)
(じゃあ、町を綺麗にしてくれて、ありがとうございます。とか?)
(いや、そんな事、高校生の私が言うなんて偉そうじゃない?)
(どうしよう…。でも、何か…。)
自問自答しているうちにいつの間にか、かなり男に近づいている事に気がついてハッとした。
そして、男は、近くに自転車の気配を感じたのか、パッと顔を上げた。
(……!!!)
明里は、ほんの刹那、男の顔を見た。
とても声をかけられる表情ではなかった。




