第7話
その頃、横山は不機嫌そうにアパートの一角の部屋の中にいた。
(こう雨ばっかりじゃ、仕事が進まねぇ…。)
どうしても現場仕事は、内容によっては天気の影響をもろに受ける。
(今月の給料は低いかもな…。)
テーブルのタバコに目をやり、火をつける。
窓に流れる雨の跡をぼーっと見つめる。
ふと人影が窓の下あたりをかすめた。
あぐらをかいたまま窓辺に近づき、下を見た。
透明なカッパを着た男が袋を持って歩いていた。
「なんじゃあ、あいつは。何してやがる。ホームレスか何かか。」
そこは特段、治安のいい場所ではなかった。単身の中年男性が集まりやすい、家賃が休めのアパートが多い地域だった。そして、横山にとっては、ホームレスなど珍しくも何ともなかった。土木作業の日雇いで、彼等とたまに一緒に仕事をする事もあったからだ。一般人よりかは、彼等についてよく見知っている事を、横山は多少自慢にすら思っていた。
(誰だって、色んな過去を背負ってるもんだ…。)
しかし、横山の見たその男は、いくばくかホームレスとは様子が違っていた。空き缶を専門に集めている様子でもない。大きなリアカーで荷物いっぱい運んでいる訳でもない。ましてや、今日は雨だ。
一つ一つ、何かを丁寧にトングで拾っていた。
目を凝らす。
(吸い殻か、ゴミか…。)
(しかし、何でこんな所でそんな事を…?)
上から覗く形だったので、男の顔はよく見えなかった。しかし、だいたいの背格好はわかった。痩せ型で、髪は癖のあるやや長めの髪。おそらく背は低め。猫背。黒っぽい服に透明のカッパ…。
男は淡々と、横山の目の前の道を、まっすぐに、拾い、歩いて行った。




