プロローグ
あらすじえらい大がかりに書いてますが、簡単に言ってしまうと魔法使いと王子の恋愛ものですね(笑)
王道ですがちょびっとダークな部分も入れつつ、物語を進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします!
商店が建ち並ぶ街、ランシュリ街。その街のメイン通りの少し外れにその店はあった。
艶やかな漆黒の長い髪を持ったその少女は一人で薬屋を経営している。その背丈はさほど低いわけでもなく、かといって巨人というほど高い訳でもなかった。
少女。だと分かるのは声からの推測に過ぎない。それはあまりにも外見から得られる情報が少なく、街の人たちは誰もその少女の顔だちを視たことがなかったからだ。
その店がオープンした頃から皆が恐れはじめ、今となっては誰一人として近付こうとさえしなくなっていた。
当たり前と言えば当たり前だろうか。顔の見えない者が作った薬など、飲みたくないのだろう。あの店主は魔女ではないのか、毒を売ってるのではないかね、などと根も歯もない噂が飛び交う始末。
それでもその少女は幾重にも重なった黒の布をかぶり、顔を隠していた。その比較的薄いレースの下から、口元だけが見てとれる。
誰から何を言われようとも。他人からどう思われようとも。
その少女はその布を取らない。それがどのような理由で、果たしてどんな気持ちなのか。今は誰にも分かるはずがなかった。
蒼黒の魔法を従えたその少女の瞳を視た者は、誰一人としていないのだから。