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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

死斑で文字を紡ぐ異常者

作者: HORA
掲載日:2025/07/11

今年も夏がやってくる

日中に上がった地表面の温度により上昇気流が発生し

カミナリ雲となる積乱雲が大雨を降らせる

ある日を皮切りにそんな雨の夜には人が出歩かなくなる

それは雷や雨を忌避してではない

雨の日の夜に連続殺人鬼が現れるからだ


2025年7月。その日は夕方から雨がポタリ、ポタリと降り始め、夜になる頃にはザーザーと大雨に変わる。雷が短い感覚でゴロゴロ、ピシャーーン!!と鳴り渡る。



夜が明けるころには雨の勢いは弱まってきたもののまだしとしとと降り続けている。1件目の事件が起こった。都会の広くないその公園には全裸の3体の遺体が横たわっていた。年齢・性別はバラバラ。新聞配達員が見つけて通報。早朝から規制線が張られ、幸いに小学生の目に入る事は無かった。


背中に「雨」「ニ」「モ」のメッセージ。

死因は溺死。ただし溺れた液体は水ではなく血液。

溺死させられた3人のいずれとも違う血液はAB型のRh-の血液。

状況から3人は殺害されここに捨てられたのだろう。溺死に用いられたAB型のRh-の血液は犯人の血なのか…それとも、また別の人物の血液であるのか…

別の人物の血であるならば既に4人目の被害者が存在するのか…

更にもう1つ。背中のメッセージは被害者の死斑により浮かび上がった文字であった。

背中に血の澱である死斑で文字を書くためにそのような型を押し当てて圧力をかける。

理論的には単純ではあるが、僅か1人で1文字を浮かび上がらせる。

自らの血液を凶器に、被害者の血で1文字とする狂気。

警察では対策本部が設立されるが、大雨であったことから証拠集めは難航する。

捜査本部、捜査員達は刑事の勘から不穏な空気をすでに感じ取っていた。


翌夜にも雨が降り続く。

夜が明けるころに2日目の現場は1日目から250km程離れた地点の公園。背中に「負」と書かれた遺体が見つかる。これは宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」が嫌がおうにも彷彿とさせられる。6文字で終わるのだろうか。それとも。


3日目

全国的に夜に雨が降らず死体は発見されなかった。

4日目

全国的に夜に雨が降らず死体は発見されなかった。


5日目

夜に東北地方にて雨が降る。「ケ」。

6日目

夜に四国地方にて雨が降る。「ズ」。


雨が降る地域に犯人は移動しながら犯行を行っている。


7日目

全国的に夜に雨が降らず死体は発見されなかった。


6人で終わりとなるのかそれとも雨を待っているのか。

通り魔的な犯行なのかどうか、

異常者なのか、

サイコパスなのか、

計画的犯行なのか、

警察も被害者の関係者から聞き込みを進めるが捜査は行き詰まる。

被害者の層や地域がバラバラであるので全員に殺害動機を持ち殺したかった訳では無いだろう。

特定の人物を狙った動機を隠すためだとプロファイラーがプロファイルしているが、

カタカナ一文字のため、動機も無く殺されている人物が不憫でならない。


そして最初の雨から8日目。夕方から雨が降り始める。

犯行からわずか1週間程。

街は静かになり、店はシャッターがおりている。

皆が警戒していたのだが…。無情にも翌朝に全裸で背に「風」と浮かび上がった死体が発見される。


ここまでで犠牲者は7人。共通点は全員の死因がAB型のRh-の血液での溺死。全裸で公園や空き地に倒れており、背中に一文字。地域に規則性や共通点は無いように思える。


2025年夏の被害者は24人。夏ノ暑サニモ「マ」

2026年夏の被害者は28人。(いか)ラズイツモ「シ」

2027年夏の被害者は26人。

2028年夏の被害者は31人。


………


2039年夏の被害者は11人。モノニワタシハナリタ「イ」

夏の雨の日の夜。死体が発見された日は365日。殺人の被害者366人。犯人の自殺により367文字目の「イ」にて幕を降ろす。


ここ15年。366人もの人物を殺害せしめた凶器は犯人自身のAB型のRh-の血液であった。

犯人自身の死因は水中毒。かなりの短時間に雨水を10L程を飲み干したことによる中毒死。

これまでの死体と同様になるように全裸での自殺であったとみられている。

宮沢賢治の詩の締めくくりとなる犯人の背中に浮かんだ死斑「イ」の文字。

どのように自らにつけられたのかは依然不明であるが。

以降同様の犯行は起こらなくなった事から

犯人は間違いなくこの世からは消えた。

その動機や主張、犯行の方法を水面下に隠して。


夏の夜

雨が降ると

人が死ぬという

365日は

人々の心に1滴1滴と恐怖を滴らせ

沈み溺れさせるには十分であった

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― 新着の感想 ―
 雷雲より物騒な連続殺人と豪雨や夏の熱波より恐ろしい血文字への執着……理解がおいつく暇があるか怪しい拘りですね。  行動力の無駄遣いを極めた奇怪な所業と、その被害者への同情などが書かれた物語、読み応え…
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