2話 美人なお姉さん、姫野瑠花
私の名前は姫野瑠花。現在27歳で上席主任統括と言う大手モノづくり業界、エンジニア部門の管理職の会社員です。今日は夏のビアガーデンという事で、日頃の疲れを労うという形で社員達との屋外での飲み会……正直余り気が進まないですね。
「姫野しゃん〜飲んでまふかぁ?」
「真島さん、酔い過ぎです。お酒は程々にしないと駄目ですよ?」
「はぁ〜い♪ ひっく……ふわぁ♡ 姫野しゃん、良い匂いがしますぅ♡」
「こら、どさくさに紛れて胸揉まない!」
「うひひ〜姉ちゃん、良い乳してまんねんなぁ〜♡」
この子は私の部下の真島奈津美さんです。茶髪のボブカットヘアーにパッチリとした瞳の愛らしい女性だ。明るい性格で誰に対してもフレンドリーなので、男性社員からの人気は凄まじい。
「姫野しゃ〜ん。なんれ……こんなにも、おっぱい大きいのれふかぁ〜! 痛たっ……!? 頭叩かないでくだしゃいよぉ〜!」
「いい加減になさい。来週から真島さんの仕事量増やすわよ?」
「ひぇぇ!?」
はぁ……早く帰りたい。会社の飲み会に参加するのは毎度憂鬱だ。私はお酒弱くてあんまり飲めないし……でも、会社の上席主任統括と言う役職を頂いてるからには飲み会に出るしか無い。部長や課長からの【勿論、姫野君も出るよね?】と言う圧力の前には屈するしかありませんでした。あのセクハラ部長の接待をするのが一番嫌。過去に私をホテルに誘おうとしたエロおやじだ。
「にゃ〜ん……にゃ〜お……」
「あら? 真島さん、今……子猫の鳴き声がしなかったかしら?」
「んん? どこどこぉ? 子猫ちゃんおりゅの?」
気になって声のした方へと向かって見ると、何とテーブルの下に白いもふもふとした小さな子猫ちゃんが居たのです! 見た目はかなり汚れており、足元もフラフラと覚束無い様子でかなり弱っていますね。
「ふわぁあああ♡ か、可愛い♡ 白いモフモフな子猫ちゃんだぁ♡ 姫野しゃん〜この子どうしますぅ?」
「この子、かなり弱っているわね。お腹が空いているのかしら?」
「姫野さん、この子は恐らくまだ産まれてから間も無いと思います。子猫用のミルクがあれば良いのですが……」
「あら? 貴方酔ってたんじゃないの?」
「あっ……ごほんっ。姫野主任の横顔に酔っちゃいました♡」
「ふ〜ん……あそ」
「ふぁっ……!? まさかの塩対応!? 姫野さんちょっと塩くないですかぁ? こんなに可愛い後輩を持って嬉しくないのですか!?」
「ごめんなさい。定食に付いてくるパセリはいらない派なの」
「もお〜またまたそんな事言っちゃって〜姫野さんはツンデレですかぁ?」
本当にやかましい後輩ですね。口を開けば1人で一生喋っていそうです。良し、面倒な仕事の案件を真島さんに投げてやろう。これも上司として、部下の成長を促す為よ。うん、そうしよう。
「にゃう……」
「あら、子猫ちゃん大丈夫?」
「がるるっ……」
私と真島さんで怯える子猫ちゃんをどうしようかと眺めて居たら、次第に周りの社員さん達も集まって来ました。
「にゃーん……!?」
「あぁ、驚かせてごめんね? 大丈夫、安心して」
瑠花は子猫を怖がらせない様に、笑顔で接しようと話し掛ける。しかし、瑠花は元々目付きが少しキツイ為、笑顔のつもりが逆効果となってしまい、白い子猫は身体をプルプルと震えさせながらその場で固まってしまった。
「姫野統括主任、どうしたのです?」
「あ、長島主任。ここに野良の子猫ちゃんが居るのですよ」
「こ、これは……子猫ちゃん相当弱ってますね。命の危険があります……でも、まだ幼いだろうから固形物のご飯は食べれないだろうし……それに親猫は?」
「周りを見るとこの子のお母さんらしき猫ちゃんは見当たらないですね……」
「ふむふむ、もしかして親猫に捨てられてしまったのかな?」
こんなに幼い子猫を捨てる何て……もしかしたら、何か事情があったのかな? でも、今はそんな事考えてる場合じゃないわね。この子の命を守らないと!
「長島主任、私この子を急いで連れて帰ります。部長や課長には、姫野は急用で帰りましたとお伝えくださいませんか?」
「あぁ、分かりました。僕の方から言っておきますね」
「ありがとうございます」
さてと、問題はこの子猫ちゃんが素直に抱かせてくれるだろうか? 見た所、人間慣れしてないのか物凄くこちらを警戒しているわね。少しだけ……私の表情も固いと言うのも自覚はしているけど、私だって感情はしっかりと持ち合わせて居るんだから! スマイル……スマイル……意識すれば私だって!
「にゃー!」
「こ、子猫ちゃん大丈夫よ。良かったら、私の所に来てくれるかな?」
「にゃお……」
「うん♪ 良い子良い子♪ 私は貴方の敵ではありません♪」
まずは頭を撫でて落ち着かせよう。この子はただ怯えているだけなんだから。私は敵ではありませんと安心させてあげる必要があるわね。
「子猫ちゃん、おいで」
「にゃう……」
「うわ、軽っ……!? え、子猫ってこんなにも軽いの……!?」
力の無い私でも、片手で簡単に持ち上げる事が出来ちゃいました。これは一刻も早くこの子にミルクをあげなくちゃ! 本当に餓死してしまう!
私は子猫ちゃんを抱いて急いで我が家に帰宅しました。