改革への道(欧州編)(8)
今日のリモート会議参加者は、仏蘭西大統領だ。
「これは、内政干渉です。直ちに止めて頂きたい。」
挨拶も早々に切り上げ、本題を切り出した大統領。
「内政干渉? 一体何の事でしょう。」
「二つあります。パリでの暴動。海外県並びに準海外県独立。
これらに対する介入です。」
「そもそも、巴里での暴動は、貴国が鎮圧に失敗した。
それを自衛隊の説得で、矛を収めさせた。これは、協力です。
断じて、内政干渉に非ず。言いがかりですよ。」
「そもそも、そちらが『逆関税』をしたのが、問題なのです。」
「そもそも、『鰻』の『絶滅危惧種指定』の件が、内政干渉です。
そう言う『身勝手な発言』をしなければよいだけですよ。」
「それは、国際的な枠組みです。日本だけの話ではありません。」
「それですよ。それが、『身勝手な発言』なのですよ。
そもそも、貴方達が、砂糖を無駄遣いしていることが問題です。
それを抑制しようと言っているだけ。内政干渉ではありません。
『鰻』の『絶滅危惧種指定』の件こそが、内政干渉です。」
「だから、ウナギは国際的な枠組みです。日本だけの話ではありません。」
「そういう自分勝手な言い分は、許しません。
『妥協点』を見つけないのであれば、この会議は打ち切り。
方針変更もしません。」
「自分勝手は、そっちだろう! いい加減にし……
今、『妥協点』といいましたね。ならその内容を伺いましょう。」
「では、『妥協点を受け入れる』と言う返答が無い場合、
会議は打ち切りです。それでも宜しければ、お話しましょう。」
「まず、情報開示をする。それが、筋と言うものです。」
その台詞の途中で、回線を切断するように身振りで指示した。
更に再起動した。待つこと暫し、回線が復旧した。
「では、日本から『妥協点』の提案をします。
それは、仏蘭西は、『地球連邦に加盟する事』です。」
「成程、では、こちらの『妥協点』の提案をします。」
その台詞の途中で、回線を切断するように身振りで指示した。
ここで、今日のリモート会議は、お開きとした。
* * *
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理だ。
「しかし、フランス大統領の件、よかったのですか。総統。」
「結局、奴さんの言い分は、『俺の要求を呑め』だけでした。
なら、内戦に発展したとしても止むを得ないですな。
むしろ、もっとやれです。違いますか。総理。」
「では、次の手は如何致しましょう。総統。」
「恐らく、デモ参加者は、全員勤め先から解雇されるでしょう。」
「根拠は、何でしょうか。総理。」
「そもそも、仏蘭西には、『表現の自由』が、あります。
故にデモを厳罰に処すことができません。
そこで、企業側に解雇させて無職にすれば、罰した事になる。
仏蘭西政府が、考えそうなことです。」
「成程、それで大量発生した失業者を雇う訳ですか。総統。」
「そこで、民間軍事会社の登場です。失業者を全て雇うのです。
そして、海軍に配属し、訓練と称し洋上に連れ出します。」
「それが、どうなります。総統。」
「注意点は、仏蘭西人に限る事です。移民は、不採用にして下さい。
また、『アフリカ連邦』から移民をどんどん送り込む事も忘れずに。」
「成程、そうして失業者の移民率を増やしていく訳ですか。総統。」
「更に、移民への人道食糧支援と同時に武器も配布します。」
「しかし、移民が必ず暴動を起こすとは、かぎりませんが。」
「ええ。ですから移民は、百万人を予定しています。」
「はぁぁぁっ! ひゃクマン人ですか。無茶苦茶でしょう。」
「百隻の船で、ピストン輸送させる。物理的には可能です。」
「そうやって、出入国管理局を混乱させる事が目的ですか。」
「違います。それは、手段ですよ。海岸線の防備を手薄化させたいのです。」
「で、不法入国者をフランスに連れていく訳ですか。総統。」
「勿論、彼らを民間軍事会社で。雇用します。
彼らは。陸軍軍人として巴里に常駐させればよい。
その内、合法移民に職が行き渡らなくなります。
そうして、『持っている奴から奪う』事を企図するようになる。」
「では、同じことをフランスも実行する可能性がありますよね。総統。」
「この件についてわが国には、圧倒的なアドバンテージがあります。」
「それは、何でしょう。総統。」
「予算ですよ。それだけ人を移動させるのに、予算が幾らかかるのか。
その予算を通すのに、議会を納得させる必要があります。
故に、同じ手を使おうとすると、仏蘭西は、一年かかるでしょう。」
「しかし、我が国は、総統の命令一つで、実行可能。
即刻実行可能だと仰りたい訳ですか。総統。」
「分かったのなら、実行しなさい。即刻。」
「分かりました。総統。」
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