改革への道(EU非加盟国編)(4)
今日もリモート会議だ。参加者は、私、陛下、日本帝国総理、宮内庁長官。
まずは、宮内庁長官の挨拶があり、総理、私、陛下の順に挨拶する。
「陛下にご報告並びに謝罪しなければならない件が、ございます。」
「謝罪? ……なんでしょうか。総統。」
「私は、倫敦で実施されているデモ隊に、人道食糧支援をする様命令しました。」
「はい。それなら報告を受けていますよ。総統。」
「そのデモ隊もろとも私の指示で倫敦入りした食糧配給者を射殺したのです。英国政府が。」
「……………………何と、痛ましい事でしょう。で、何と対応なさるのです。総統。」
「まず、抗議です。更に、遺体の返還要求。併せて事実説明となります。陛下。」
「妥当と思います。で、あちらのご返答は、如何なものでしょう。総統。」
「全て返答並びに返還拒否でございます。理由も併せてご報告申し上げます。陛下。
まず、遺体が残っていません。これは、英国政府が投入した兵器に大問題がございます。
これは、人体を水風船の如く破裂させます。故に、遺体と言う原型を留めないのです。」
「……何という事でしょう。それでは、誰の遺体か分からないと言う事ですか。総統。」
「はい。陛下。そこで、陛下に輔弼奉る案件がございます。」
「何なりと言ってください。総統。」
「英国で、落命した邦人の御霊を慰める儀式をお願い申し上げます。陛下。」
「分かりました。天皇の名において儀式を執行しますよ。総統。」
「有難うございます。陛下。で、宮内庁長官にもお願いがございます。」
「はっ。何なりと仰って下さい。総統閣下。」:
「陛下が、大層心を痛められ、邦人の御霊を慰める儀式を実施していると公表して下さい。」
「はっ。『陛下が、大層心を痛められ、邦人の御霊を慰める儀式を実施していると公表。』
以上、復唱しました。総統閣下。」
「では、私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *
今日もリモート会議だ。参加者は、私、日本帝国総理である。
「ここは、英国用に『二の矢』をつがえます。そこで、事前に打ち合わせをします。」
「ほぉ……英国用の『二の矢』ですか。是非とも聞きたいですな。総統。」
「まず、前提として現在の英国首相は、私の『狙い』を看破する程度には優秀です。
思い出してください。私の『狙い』と何だったのか。総理。」
「ああ……あの場でデモ隊に人道食糧支援すれば、『あそこに行けば食料を貰える』
そう考える者が、あの場にやって来る。結果デモ隊の人数が増えるでしたね。総統。」
「その通り。即ち、英国首相の思考は、『ブッ殺す。そう思った時には、実行完了後なので相手は死体になっている。故に使ったことが無い。』
と言うくらいに優秀です。」
「おひおひ……それは、何処の『兄貴』だよ。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「……私には、むしろ『残虐非道』と言うしかありませんな。総統。」
「さて、そんな私の上を行く人物を上回る為に必要な物とは、なんでしょうか。総理。」
「より『残虐非道』になることでしょうか。総統。」
「それは、『やり過ぎくらいで丁度よい。』そう考える事です。総理。」
「やり過ぎですか。……総統のやり過ぎは、むしろオブラートに包むべきでしょう。」
「英国内戦勃発。それが、私が考えた英国用の『二の矢』です。総理。」
「つまり、『平時に乱を起こす』と言う事でしょうか。総統。」
「否、平時ではありません。既に英国は、戦闘ヘリを三十六機繰り出しました。
故に戦は、始まっています。後は草莽崛起あるのみです。総理。」
「そもそもの話は、『アフリカ連邦』で、英国の有色人種移民を受け入れる。
渡航費用は、自己負担と言う話だった筈。雪だるま式にも程がありますよ。総統。」
「その責、戦闘ヘリを三十六機繰り出した英国首相に全てあります。
こちらとしては、デモと言う『穏当』な手段で満足していたのですよ。総理。」
「……分かりました。では、着地地点と具体的な手段をお願い致します。総統。」
「着地地点は、英国を日本帝国の属国とする事です。具体的には、誓約書です。
英国政府王室は、日本帝国に忠誠を誓う事、ウィリアム、ヘンリー両皇太子を
日本帝国皇室へ養子に差し出す事、両皇太子及び子孫は、日本の元皇室女性を
妻に娶る事。以降、ウィリアム、ヘンリー両皇太子の子孫を英国王にする事。
また、英国王室は、日本から出国を禁ずる。こんな所ですね。」
「つまり、英国王室を形骸化させる訳ですね。総統。」
「いずれ、日本帝国皇室と英国王室を統合。それも姻戚関係で解決可能です。総理。」
「……分かりました。では、具体的な手段をお願い致します。総統。」
「件の『戦闘ヘリ』の一件、ネットでは様々な意見が飛び交っています。そこで、
『このままでは危険だ。ヤられる前にヤってしまえ。』と言う意見の非白人に、
呼びかけます。欧州製の対戦車ばすーかや火炎放射器等を備蓄している倉庫の情報、
倫敦の重要拠点の地図。これらを教えた上で、『ヤられる前にヤってしまえ。』と
念を押し続けるのです。後は、時間の問題でしょう。総理。」
「………………上手くいきますかね。」
「勃発は、時間の問題ですから時間の問題です。武器は、定期的に供与すればよい。
人員だって補充可能です。最大八億人はいけます。」
「八億人? その数に根拠はあるのですよね。総統、」
「では、アフリカ大陸、『アフリカ連邦』の人口は?」
「約15億人、約4億人です。」
「つまり、未加盟国の人口は、約十一億人。その中で成人ですから最大八億人です。」
「しかし、必ず英国に渡航するとは、限らないでしょう。」
「私は、『増員』と言ったのですよ。総理。つまり内戦は既に勃発しているのです。
既に、内戦により警察軍隊など治安維持組織の人員は減少。よって、犯罪の取り
締まりに裂ける人員も減少。よって、犯罪もやり易い訳ですよ。総理。」
「しかし、渡航費用はどうするのです。総統。」
「潜水艦で送り届けます。支払いは、現地で手段を問わず稼いでくれればよい。
それに、内戦ともなれば、スーパーなどの小売店が閉店する事疑い無し。
そこで、自衛隊の方々に『闇市』を開いてもらいます。価格はぼったくりでね。」
「おひおひ……そりゃ何処の世紀末覇王伝説だよ。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「……それは、英国を滅ぼす気満々としか言いようが無いのですが……総統。」
「この程度で滅びるようなら、その程度の国だったと言う事です。それに、こちらは核兵器を使っていません。よってそこまで言われる筋合いなどありませんよ。総理。」
「NATOが、動いたら如何致しましょうか。総統。」
「確率は低いでしょうが、ありえます。よって、その場合は内戦自体をお開きにします。
まず彼らの困難は、反政府勢力に『指揮系統』が、存在しない事です。すると、内戦を
終結させるには、どうすればよいか。分かりますか。総理。」
「……それは、『皆殺し』でしょうか。総統。」
「では、何故『皆殺し』以外の手段が、存在しないのでしょう。総理。」
「それは、『やめろ』と命令する者がいない為、個人が自己の判断で戦闘するからです。」
「そこで、自衛隊を多量増員し、反政府勢力を『皆殺し』にします。証人も隠滅可能。
何ならNATOが、撤退した後でアフリカ人を増員してもよいですね。」
「分かりました。質問は以上になります。総統。」
次の会議の台本が、できた所で会議はお開きとなった。
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