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『日本改造計画』  作者: 桃太郎
改革への道(外交編)(2)
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改革への道(欧州編)(5)

「何だと。ウナギの件で、そんなに怒るのか。たかがウナギだろう。」

「本当に、非常識な連中だ。クジラだって諦めたんだ。ウナギだって同じでいいだろう。」

「まったく、二次大戦の時に滅ぼさなかった事が、今になって悔やまれる。」

「本当だ。世界にとって『無用』『無益』『無駄』な事、おびただしい。」

「で、日本側からの要求とは、謝罪と賠償。『GBCO』加盟ですか。」

「冗談じゃない! 何故謝罪と賠償が、必要か。我らは、EUぞ!」

「そうだ。日本なぞ何するものぞ! EU!」

「EU!」

 その後は、シュプレヒコールになり、なし崩しにEU議会は、お開きとなった。


 * * * 


 今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省欧州支局長だ。

「挨拶など不要。まず、報告しなさい。」

「はっ。欧州支局長より、報告申し上げます。総統閣下。」

「はっ。報告申し上げます。EUより要求文書が届きました。

 要求内容は、『逆関税』の解除と、日本側の謝罪と賠償になります。総統閣下。」

「今、『要求文書』と言いましたね。欧州支局長。」

「はっ。正式な形の文書が、届いております。総統閣下。」

「官房長官を呼びなさい。今日の定例記者会見に一件追加です。」

 しばらく後に、リモート会議に加わった官房長官だった。

「官房長官。まかり越しました。総統閣下。」

「では、官房長官、あなたへの指示です。

 『EUより届いた要求文書の日本語による読み上げ並びに丸めて床に落として、踏みつけなさい。これを記者会見の場で実行する事。』

 以上です。」

「はっ。『EUより届いた要求文書の日本語による読み上げ並びに丸めて床に落として、踏みつける。これを記者会見の場で実行する事。』

 以上復唱致しました。総統閣下。」


 * * * 


「まずは、諸君。こちらをご覧下さい。」

 大型スクリーンに映っていたのは、日本帝国官房長官による記者会見だった。

「何だ? あの紙は。それにわざわざ日本語で読み上げる必要があるのか。」

 ここで、文書内容を掲げ、居並ぶ記者たちに撮影させる官房長官だった。

「あ! あれは、我らからの文書ではないか!」

「Noっっっっっ! 丸めた上で踏みつけるだとぉっ!」

「許さん!」

「その上で、日本側が、『逆関税』をかける品目を増やすそうです。半導体などです。」

 詳細は、大型スクリーンに映し出されていた。

「ふざけるなぁっ! これじゃPCや自動車の生産に支障をきたす!」

「オランダ! 生産量を増やせ!」

「現状、日本から購入している分を全部生産するのでしょう。

 一朝一夕には、無理ですよ。設備投資にお金だってかかります。」

「五月蠅い! 文句言う暇があったら何とかしろ!」

「と言うか、そもそも『ウナギの絶滅危惧種指定』のせいでしょう。」

「我らは、EUぞ! 協力しろ!」

「だったら、金出せ!」


 * * * 


 今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理だ。

「随分ひどい有様ですね。これじゃあ、纏まる話もまとまらないでしょうに。」

「認めたくないものだな。若さゆえの過ちと言うものは。」

 総統の「連中は、自分の過ちを認められないのです。こうなる事は、当然自然必然の流れですよ。」は、「認めたくないものだな。若さゆえの過ちと言うものは。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某赤い彗星とも無関係に相違ない。

「しかし、欧州議会には解散総選挙も弾劾もありません。2029年まで待つのですか。

 そもそも時間稼ぎだけでは、解決しようがありません。総統。」

「当然です。時間稼ぎだけでは、解決しません。が、時間の問題ですよ。」

「そこまで仰るなら、何かを待っている訳ですね。何を待っているのです。総統。」

「ならば、『説明しよう』!」


 * * * 


「本日のニュースです。ドイツで大統領の弾劾請求が、提出されました。

 また、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、オランダ。ベルギーの六か国でも

 検討がなされているとの情報もあります。目が離せなくなりました。」


 * * * 


「成程、確かに総統の言うとおりに動いています。が、全て上手くいくとは……。」

「みなまで言わずともよい。むしろ、この弾劾は、『不成立』の方が都合がよい。」

「は? 何故そうなるのです。総統。」

「今度は、国民運動が始まるからですよ。そもそも缶詰を始めとする加工食品価格。

 これが、『逆関税』と共に値上がりの一途を辿っています。国民の怒りは爆発寸前。

 大統領が頼りにならないなら議会。議会が頼りにならないなら自分達でですよ。

 この様な経緯を辿って草の根運動が始まります。」

「成程。ならば大統領も国民の声に耳を傾けざるを得ない。上手くいくますかね。」

「その時は、デモ隊に武器弾薬食料を供与するだけですよ。この際です。

 欧州人同士で殺し合ってもらいましょう。できる限り『ドッ!』派手にね。」

「なんなら、欧州議会議員を殺害してくれれば、尚よしですか。総統。」

「しかし、弾劾が上手くいった時の対応も必要です。さすれば選挙で親日の大統領を

 推します。後は、独新大統領が、EU脱退を表明。するとこちらは『逆関税』の

 料率検討を表明。すると、欧州議会で意見が紛糾。独脱退を阻止しようとする。

 すると、鰻の話どころではなくなる。有耶無耶から立ち消えになる可能性大です。」

「後は、ドイツ、フランス、イタリア辺りが、『GBCO』に加盟すれば、

 他の国も追随せざるを得なくなる。」

「更に、2027年には、欧州の各国で選挙の年です。ここでも親日大統領を推します。

 誰か一人でも当選してくれれば、そこの国とだけ交渉。他の国は無視します。」

「すると、他の国も親日大統領に追随せざるを得なくなる。確実性には欠けますね。

 むしろ、『デモ』の方が、上手くいきそうですね。総統。」


 * * * 



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