改革への道(EU非加盟国編)(3)
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理だ。
「英国への抗議文書です。あなたにもチェックをお願いしますよ。総理。」
「……お疲れではありませんか。総統。」
「頭から離れないのですよ。何か忘れている事が、あってなりません。
例えば、英国で巻き添え殺害された方々の遺族のみなさんへ連絡を入れる。」
「既に総統が、命じましたよ。」
「英国に味方した場合、欧州連合(EU)への『逆関税』を大幅値上げする。」
「その通達なら、既に総統が、命じましたよ。」
「後は、『英国在住邦人警護の為、英国に必要な人数の陸戦部隊を派遣する事』。」
「それも済んでいますよ。総統。……そんなに悩む事でしょうか。」
「いいえ。悩んでいる訳ではありません。」
「では、何を考えているのです。総統。」
「……そうですね。ようやく『言語化』できました。お話しましょう。『悔しい』。」
「……『悔しい』? 何に負けたのです。総統。」
「現英国首相。……彼は、私の『思惑』に気付いています。」
「何故、そう考えるのです。総統。」
「そうと説明しないと辻褄が、合いません。」
「そもそも総統の『思惑』とは、何なのです?」
「……あぁ……そこから説明しないといけませんね。私の望みは、英国内戦勃発です。
そうなれば、後はデモ隊に武器を供与して、双方に甚大な損害を出させる。
後は、頃合いを見計らって、軍を派兵。鎮圧した上で幾つか要求を呑ませる事です。」
「上手くいっているじゃないですか。自衛隊を派遣する大義名分を只で貰えました。
実際に、自衛隊を派遣する様に指示したのです。特に問題ないでしょう。総統。」
「『違う』! それは『間違っている』! 既に私は彼奴の罠にハメられています。」
「? 『罠』ですか。一体どのような『罠』なのでしょう。総統。」
「彼奴の『罠』は、NATOと日本アフリカ連合軍による第三次世界大戦です。」
「ふぁっ! 本気ですか。総統。」
「勘違いしないで下さい。本気なのは、英国首相ですよ。総理。」
「……失礼しました。しかし、今更としか言いようがありませんよ。世界大戦など。」
「私は、常に自問自答してきました。それも『私が彼奴の立場ならどうするか』とね。
そして、その予想は、全て的中しました。これは。危機的状ですよ。総理。」
「しかし、第三次世界大戦とは……負けるリスクだってあるでしょう。総統。」
「否、私には必勝の策がありますよ。総理。」
「必勝? 何です。総統。」
「英仏が、保有する核兵器を日本にばら撒く事です。日本は負けざるを得ません。」
「はぁぁぁぁぁぁっ! 『核兵器』! 正気ですか。総統。」
「勘違いしないで下さい。正気なのは、英国首相ですよ。総理。」
「……失礼致しました。しかし、国際世論と言うものがあるはずでしょう。総統。」
「それとて、『悪役』さえいれば封殺可能。第二次世界大戦を忘れたのですか。総理。」
「た……………………………………確かに言われれば……。」
「諸君、私は戦争が好きだ。諸君、私は戦争が好きだ。諸君、私は戦争が大好きだ! 殲滅戦が好きだ。電撃戦が好きだ。打撃戦が好きだ。防衛戦が好きだ。包囲戦が好きだ。突破戦が好きだ。退却戦が好きだ。掃討戦が好きだ。撤退戦が好きだ。平原で街道で塹壕で草原で凍土で砂漠で海上で空中で泥中で湿原で、この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が、だぁい好きだ。戦列を並べた砲兵の一斉発射が、轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが、好きだ。空中高く放り上げられた敵兵が、効力射でばらばらになった時など心がおどる。戦車兵の操るティーゲルの88mmが、敵戦車を撃破するのが好きだ。悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵をMGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった。銃剣先をそろえた歩兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ。恐慌状態の新兵が、既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える。敗北主義の逃亡兵達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない。泣き叫ぶ虜兵達が、私の降り下ろした手の平とともに、金切り声を上げるシュマイザーにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ。哀れな抵抗者達が、雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのをドーラ80cm列車砲の4.8t榴爆弾が、都市区画ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える。露助の機甲師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ。必死に守るはずだった村々が蹂躙され、女子供が犯され殺されていく様は、とてもとても悲しいものだ。英米の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ。英米攻撃機に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ。諸君、私は戦争を地獄の様な戦争を望んでいる。諸君、私に付き従う大隊戦友諸君。君達は一体何を望んでいる? 更なる戦争を望むか? 情け容赦のない糞の様な戦争を望むか? 鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?」
総統の「故に私は戦争が大嫌いです。」は、「諸君、私は戦争が好きだ。諸君、私は戦争が好きだ。諸君、私は戦争が大好きだ! 殲滅戦が好きだ。電撃戦が好きだ。打撃戦が好きだ。防衛戦が好きだ。包囲戦が好きだ。突破戦が好きだ。退却戦が好きだ。掃討戦が好きだ。撤退戦が好きだ。平原で街道で塹壕で草原で凍土で砂漠で海上で空中で泥中で湿原で、この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が、だぁい好きだ。戦列を並べた砲兵の一斉発射が、轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが、好きだ。空中高く放り上げられた敵兵が、効力射でばらばらになった時など心がおどる。戦車兵の操るティーゲルの88mmが、敵戦車を撃破するのが好きだ。悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵をMGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった。銃剣先をそろえた歩兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ。恐慌状態の新兵が、既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える。敗北主義の逃亡兵達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない。泣き叫ぶ虜兵達が、私の降り下ろした手の平とともに、金切り声を上げるシュマイザーにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ。哀れな抵抗者達が、雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのをドーラ80cm列車砲の4.8t榴爆弾が、都市区画ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える。露助の機甲師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ。必死に守るはずだった村々が蹂躙され、女子供が犯され殺されていく様は、とてもとても悲しいものだ。英米の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ。英米攻撃機に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ。諸君、私は戦争を地獄の様な戦争を望んでいる。諸君、私に付き従う大隊戦友諸君。君達は一体何を望んでいる? 更なる戦争を望むか? 情け容赦のない糞の様な戦争を望むか? 鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某少佐とも無関係に相違ない。
「戦争!! 戦争!! 戦争!!」
総理大臣の「落ち着いて下さい。総統。」は、「戦争!! 戦争!! 戦争!!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某最後の大隊とも無関係に相違ない。
「宜しい、ならば戦争だ。我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ。だがこの暗い闇の底で半世紀もの間、堪え続けてきた我々に、ただの戦争では、もはや足りない!! 大戦争を!! 一心不乱の大戦争を!! 我らはわずかに一個大隊千人に満たぬ敗残兵にすぎない。だが諸君は、一騎当千の古強者だと私は信仰している。ならば我らは、諸君と私で総兵力百万と一人の軍集団となる。我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう。髪の毛をつかんで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう。連中に恐怖の味を思い出させてやる。連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる。天と地のはざまには、奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる。一千人の吸血鬼の戦闘団で、世界を燃やし尽くしてやる。『最後の大隊大隊指揮官より全空中艦隊へ』第二次『海驢作戦』状況を開始せよ、征くぞ諸君。」
総統の「失敬な。私は、落ち着いています。むしろ、私は平凡な人間です。」は、「宜しい、ならば戦争だ。我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ。だがこの暗い闇の底で半世紀もの間、堪え続けてきた我々に、ただの戦争では、もはや足りない!! 大戦争を!! 一心不乱の大戦争を!! 我らはわずかに一個大隊千人に満たぬ敗残兵にすぎない。だが諸君は、一騎当千の古強者だと私は信仰している。ならば我らは、諸君と私で総兵力百万と一人の軍集団となる。我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう。髪の毛をつかんで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう。連中に恐怖の味を思い出させてやる。連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる。天と地のはざまには、奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる。一千人の吸血鬼の戦闘団で、世界を燃やし尽くしてやる。『最後の大隊大隊指揮官より全空中艦隊へ』第二次『海驢作戦』状況を開始せよ、征くぞ諸君。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某少佐とも無関係に相違ない。
「おひおひ……核兵器使用を言及する独裁者の何処が、平凡だ。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「私は、戦争などと言う自国民が傷つくリスクある行動を嫌います。
自国民が傷つかない『安心』と『安全』と『安寧』を保証された場所から攻撃。
そして、敵を殲滅したと言う結果のみを欲する。実に平凡な人間です。」
「それに関しては、平凡を装っているとしかコメントできませんね。総統。」
「私が、彼奴……英国首相の立場ならこうするでしょう。
まず、日本側に第三次世界大戦を引き起こさせ、自ら平定する。
更に、アフリカを再植民地化。後は、国内の移民をアフリカに送り込む。
渡航費用は、日本に全額負担させる。こんな所ですかね。」
「しかし、そうなるとこちらにできる事は、国際世論を味方につけるだけですね。総統。」
「ええ。ですから英国は日本と欧州連合が、鰻を巡って対立を開始した今を狙ったのです。
兎に角、人道食糧支援をしていただけの邦人民間人が、英国政府に殺害された。
この一点を徹底的に世に広め、世間の同情を獲得しなさい。いいですね。総理。」
「はっ。『人道食糧支援をしていただけの邦人民間人が、英国政府に殺害された。
この一点を徹底的に世に広めます。』以上、復唱しました。総統。」
「もう一つ、遺族の許可を取り付けて、殺害された方々の遺影を名前を公表して下さい。」
「はっ。『遺族の許可を取り付けて、殺害された方々の遺影を名前を公表します。』
以上、復唱しました。総統。」
「宜しい。私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
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