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『日本改造計画』  作者: 桃太郎
改革への道(外交編)(2)
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改革への道(アフリカ編)(8)

「ツアーのお客様は、こちらに並んで下さい。」

 メガホンを片手に旅行客を誘導する案内人。その数約五十人。

「おトーさん、ダイトーリョってどんなゴハンたべてるの。」

「今晩、大統領と同じ献立メニューなんだって、楽しみだな。」

「ウン。たのしみぃ。」

「よかったわぁ。あなたが、くじに当たってくれて。本当良かった……。」

 後半は嗚咽が勝り言葉にならなかった奥さんだった。

「ほら、ハンカチ使いなさい。」

 この後、動き出した列に従って、クルーズ船に乗り込む。


「おトーさん。このフク、キツイよぉ。」

「大丈夫だ。レンタル品だし、旅行代金に含まれてるから無料だ。汚してもいいよ。」

「ウン……。」

「はい。チーズ。」

 シャッターを切るカメラマン。この家族写真は、後日送られる。

 そして、晩餐の時間となる。家族毎に違うテーブルに着席した。

「ウワァー。みどりいろノスープだぁ。」

「枝豆の冷製になります。」

「あのぉ……エダマメって聞いたことないんですが……。」

「はい。大豆の一種、大豆が熟れる前、緑色の状態で収穫したものです。」

「これが、豆なんですか。」

「しかも、塩味ほとんどしないのに、豆の味だけで美味しいわぁ。」

「これ、産地は何処なんです?」

「日本です。」

「へぇーー……。大統領の食事って日本から買ってたのかぁ。……うまっ!」

 その後も野菜と魚の酢漬けなどに舌鼓を打つ家族達だった。

「本日のメインは、黒毛和牛のステーキです。」

「うわぁ……。オッキイおニクだぁ。」

「え? ワギュウって、ひょっとして日本産かい。」

「はい。」

「おトーさん、ウマクきれないヨーー。」

「ほら、手伝ってやる。」

「凄っ! 赤身と脂身が、ほどよく混ざっているわぁ。」

「本当だ。脂身が溶けて、口の中で広がる。スゲェ肉だぁ……。」

「オイシーー。」

 デザートの抹茶アイスクリームまで堪能しきった家族だった。


 * * * 


「大統領っ! 判明しましたぁぁっ!」

「本当ですか。で、大統領府を包囲した挙句、投石しているあの連中は何者です。」

「間違いありません。今回の一件、『Who』より『Why』です。大統領。」

「ほぉ……。で、連中の『Why』とは、何です。」

「こちらをご覧ください。大統領。」

「何だ。SNSの写真かよ。随分豪勢な食事だな。」

「材料は、全て日本製。しかもここをご覧ください。」

「ん? 『大統領の献立メニュー』って、どう言う事だよ。」

「同種の書き込みが、何百件もされており、かなりバズっています。

 そこで、この食事を食べさせろと言う抗議行動が、膨れあがっているのです。」

「ふざけるなぁっ! 誰があいつらを守ってやっている! 仕事だってくれてやった!

 何もかも、俺が! 大統領が! くれてやったんだぁっ!」

「如何致しましょう。大統領。」

「発砲だぁっ! 連中がやめるまで、撃って撃って撃ちまくれ!」

「しかし、そんな事をすれば、日本……『連邦大統領』が、介入する事必至です。大統領。」

「そうだ! 英国から資金援助してもらって購入した『アレ』が、あるじゃあないか。

 『アレ』で、英国がやっていた様に皆殺しにしろ。証拠も隠滅できる。一石二鳥だ。」

「……………………………………かしこまりました。大統領。」


 * * * 


 今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省アフリカ支局長だ。

「挨拶など不要。緊急報告だそうですね。まず、報告しなさい。」

「はっ。アフリカ支局長より、報告申し上げます。総統閣下。」

「はっ。報告申し上げます。時刻は現地時間昨日正午頃、場所はタンザニア大統領府、

 大規模なデモ発生、政府がデモ隊に戦闘ヘリを投入、結果生存者零人です。総統閣下。」

「宜しい。では、私の指示も予定通りと心得なさい。」

「はっ。復唱致します。『前回会議の指示内容通り行動します』。以上です。総統閣下。」

「しかし……まさしく『事実は小説より奇なり』ですね。全て総統の予想通りですよ。」

「加えて言うなら『漫画より滑稽』で『アニメより卑猥』ですよ。私からは、以上。

 特に質問はありませんか。…………………………では、以上で本日の会議は終了。」


 * * * 


「大統領! てぇーーへんだぁっ!」

「どうした。騒々しい。」

「これをご覧くださいぃぃぃっ!」

 秘書官が示した携帯用液晶パネルにはタンザニア政府が英国から購入した戦闘ヘリが、自国民を薙ぎ払う様子が、動画として映し出されていた。

「薙ぎ払え! どうした! それでも世界で最も邪悪な種族の末裔か!」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの大統領執務室に存在しない。

 某殿下とも無関係に相違ない。

「何故だ! 何故、この映像が! 何処から漏れた!」

「現在調査中です。しかし、カメラアングルからすると、大統領府の監視カメラです。」

「まさか、内通者か!」

「あり得ます。しかし、そこまで調査するとなると時間と手間がかかります。

 それにもまして問題なのは、既に拡散速度が、抑え込みを遥かに凌駕している事です。」

「何だと! 抑え込みできてないのか。」

「既に、欧米日本、『アフリカ連邦』で、報道されています。インターネットでも、

 10万以上のイイネが、付く始末です! 如何致しましょう。大統領。」

「大統領っ! 報告します。」

 開きっぱなしの扉の前に立っていたのは、別な秘書官だった。

「『アフリカ連邦大統領』よりリモート会議出席命令が届きました。」

「………………………………おのれぇっ! 謀ったなぁぁぁっ! 日本めぇっ!」


 * * * 



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