改革への道(EU非加盟国編)(2)
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省欧州支局長だ。
「挨拶は、不要です。まず、報告しなさい。事務次官。」
「はっ。欧州支局長より報告申し上げます。総統閣下。」
「はっ。報告申し上げます。英国首都で、デモが発生致しました。総統閣下。」
「では、デモ隊の要求と規模も併せて報告しなさい。」
「はっ。デモの規模は約100人、要求は『渡航費用を寄こせ』。以上です。総統閣下。」
「成程、では『人道食糧支援』をして下さい。日本製のパンと水を渡すのです。」
「はっ。復唱します。『人道食糧支援』として日本製のパンと水を渡します。総統閣下。」
「宜しいです。私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *
翌日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省欧州支局長だ。
「挨拶は、不要です。まず、報告しなさい。事務次官。」
「はっ。欧州支局長より報告申し上げます。総統閣下。」
「はっ。英国首都でご命令を実行しました。その結果報告にございます。デモの規模が、
拡大しております。正確な数は不明ながら勢い止まりません。総統閣下。」
「分かりました。私から支持する事は、二つあります。一つ可能な限り詳細な数の把握。
一つ昨日同様の人道食糧支援の継続。以上です。復唱しなさい。」
「はっ。『一つ可能な限り詳細な数の把握。一つ昨日同様の人道食糧支援の継続。』
以上復唱致しました。総統閣下。」
「宜しいです。私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *
同日午後、欧州支局長からの報告によると倫敦のデモが千人を超えた。
勿論、千人分の食料と水を届けさせた。
ここまでは、私の『計画』通りだ。
が、まだ足りない。これをもっと大事、社会現象にまで押し上げるべし。
そうすれば、白人からも『政府こそ渡航費用を支払え』と言う意見が噴出するだろう。
後は、政府が民意に屈する日も近いと信じて待つのみだ。
* * *
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省欧州支局長だ。
「今日は緊急招集と言う事でした。挨拶は、不要です。まず、報告しなさい。事務次官。」
「はっ。欧州支局長より報告申し上げます。総統閣下。」
「はっ。報告申し上げます。英国首都デモの件です。大変な事態になりました。総統閣下。」
「勿体付けないで、報告しなさい。欧州支局長。」
「はっ。報告申し上げます。『鎮圧されました。』現状デモは、零人です。総統閣下。」
「では、5W1Hの観点から『鎮圧内容』を報告して下さい。支局長。」
「はっ。報告申し上げます。日本時間未明、現地時間正午頃、政府がデモ隊に発砲。
デモ隊、マスコミ、野次馬、わが国の食料配給者も巻き添えになりました。
また、死者、生存者など人数は、正確には不明です。総統閣下。」
「では、死者、生存者など人数の把握には、どれだけの時間を要しますか。」
「はっ。報告申し上げます。『絶望的』です。理由も併せて報告申し上げます。総統閣下。
英国政府は、WAH-64……通称『アパッチ』を36機投入致しました。」
思わず机を叩いた。盛大な音に叱責を受けたが如く沈黙した欧州支局長。
「…………私の記憶が確かなら、『アパッチ』とは、戦闘ヘリです。
機体下部に装備されたバルカン砲が、直撃すれば人体など水風船の如く破裂する。
そんなものをデモの鎮圧に投入した。そう報告したのですね。支局長。」
「はっ。結果として死体の判別が不可能な状態です。総統閣下。」
「分かりました。邦人が巻き添えになった件、正式な外交ルートを通じて抗議します。
具体的な文面は、後程作成しますので、待ちなさい。質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、防衛省事務次官だ。
「本日は、御呼び立てし恐縮の至り。まずは、本題に入らせて下さい。事務次官。」
「とんでもない。こちらこそ恐縮の至りです。何なりとお申しつけ下さい。総統閣下。」
「では、お言葉に甘えて、英国に必要な人数の陸戦部隊を派遣して下さい。
名目は邦人警護です。よって、人員の選出は全てお任せしますよ。事務次官。」
「はっ。『邦人警護の為、英国に必要な人数の陸戦部隊を派遣する事』。
以上、復唱致しました。総統閣下。」
「私の記憶が確かなら、英国在住邦人人数は、約一万数千人です。彼らを守って下さい。
宜しくお願い致しますよ。事務次官。」
「はっ。必ずや日本人の生命財産を守って見せます。総統閣下。」
「宜しいです。私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *




