改革への道(カメルーン編)
「『アフリカ連邦大統領』です。」
完璧なフランス語で、ご挨拶するのは、陛下であらせられる。
「カメルーン大統領です。」
こちらも流暢なフランス語で、挨拶を返す。
「大変だったでしょう。なにしろ、現在首都は、足の踏み場もない状態でしたから。」
「御心配には、及びません。我が国の優秀な人材が、ヘリを用意してくれました。
それより、今首都に押し寄せているカメルーン国民の皆さん、数千人に登るのでしたね。」
「恐縮です。そのせいで、車も何も通行不可能な状態でして、首都機能は完全麻痺状態。
ヘリでも使わないと、大尾登両府まで到着できません。
ですが、ヘリならこちらで用立てしましたものを。恐縮の至りです。」
「いえ、押しかける立場である以上、交通手段は、こちらで用意させて頂きます。
で、『アフリカ連邦大統領』としましては、現状を憂慮しております。
何とか、解決に向けご協力させて頂けないかと、はせ参じた次第です。」
「何が『協力』だ。お前らが、日本製のパンを配ったせいだろう。」
カメルーン大統領の「恐縮です。」は、「何が『協力』だ。お前らが、日本製のパンを配っ たせいだろう。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
「しかし、『アフリカ連邦』加盟には、障害が多く世論をまとめることが困難です。」
「おや、『障害』ですか。私が聞く所によると、大統領が自身を独裁者の立場維持の障害となりえる為、『アフリカ連邦』加盟に難色を示しているそうですが。」
陛下の「では、『障害』の内容を教えて頂けますか。」は、「おや、『障害』ですか。私が聞く所によると、大統領が自身を独裁者の立場維持の障害となりえる為、『アフリカ連邦』加盟に難色を示しているそうですが。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
「それでは、『アフリカ連邦憲章』よりも我が国の憲法が、優先順位下位になります。
すると、『アフリカ連邦憲章』にある『多夫多妻』を優先させなければなりません。
その場合、我が国において多数を占めているキリスト教徒の反発を招きます。
ご斟酌の程、何卒宜しくお願い致します。」
「多数? カメルーンの宗教人口分布は、キリスト教4,イスラム教3、土着信仰3と聞き及んでおります。見え透いた嘘は、やめて頂きたい。」
陛下の「そういう事情であれば、最大限配慮させて頂きます。」は、「多数? カメルーンの宗教人口分布は、キリスト教4,イスラム教3、土着信仰3と聞き及んでおります。見え透いた嘘は、やめて頂きたい。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
「何でしたら、今回の騒動も解決させましょう。如何です。加盟して頂けませんか。」
「……………………………………現状を回復させた暁には、前向きに検討します。」
「分かりました。本日は、退散いたします。有意義なお時間、感謝申し上げます。」
こうして、『アフリカ連邦大統領』とカメルーン大統領との第一回会談は、終わった。
* * *
こうして、『玉音演説』を始める次第となった。
「『アフリカ連邦大統領』です。」
完璧なフランス語で、ご挨拶するのは、陛下であらせられる。
「本日は、『アフリカ連邦大統領』としてカメルーンを訪問できたこと誠に感謝の至り。
そこで、大変僭越ながら、皆さんに伺いたい。
皆さん、家族はいらっしゃますか。
皆さん、家を離れて如何程時間が経過しましたか。
皆さんの家族が、貴方の不在を心配に思わないのでしょうか。
そこで、大変恐縮ながら、皆さんにお願いがございます。
家にお帰りになってください。そして、ご家族を安心させてください。
更に、朗報です。カメルーン大統領は、『アフリカ連邦』加盟を『前向きに検討する』。
そう、仰いました。ですから、今日は帰宅し、ご家族と共にお待ちください。
あなたがたが、選挙で選んだ大統領閣下の発言を信じてお待ちください。
そして、これからご帰宅なされる皆さんには、お土産もございます。
どうか、ご帰宅してください。重ねてお願いいたします。」
この後、待機していた自衛隊の誘導に従って、お土産を受け取り、帰宅した群衆だった。
* * *
これは、カメルーンに限らず、『アフリカ連邦』加盟国全てに適用する事だ。
大統領の任期満了ないし及び独裁者の死去に伴い、住民投票を実施する。
で、直轄領とするか、次の大統領選挙を実施するか、決定させる。
民意を無視して大統領を世襲するようなら、経済制裁として、食糧支援を減らす。
で、住民にどのような政治を求めるか、問うのだ。
ここで、おとなしく世襲大統領に従う国民なら、その意思を尊重する。
これを、直轄領になる事を望むまで繰り返す。
何れ、アフリカを全て大統領の直轄領にするまで続ける。
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