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『日本改造計画』  作者: 桃太郎
改革への道(外交編)(2)
17/44

改革への道(アフリカ編)(4)

 今日は。引っ越し先から最初のリモート会議だ。まだ荷解きは万全ではない。

 が、ネット環境を最優先した結果、リモート会議には、間に合った。

 参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省アフリカ、南米支局長、宮内庁長官。

「本日は、お時間を頂戴いただき、誠にありがとうございます。」

 そう切り出すのは、司会進行を買って出た外務省事務次官である。

「こちらこそよろしくお願いします。」

 参加者全員の声が。唱和し《ハモっ》た。

「報告があるそうですね。まずは、そこからお願いしますよ。事務次官。」

「はっ。総統閣下。二つあります。一つは、アフリカからです。アフリカ支局長。」

「はっ。ご報告申し上げます。総統閣下。本日日本時間未明、アフリカで暴動発生です。

 詳細をご説明いたしましょうか。」

「続けて下さい。アフリカ支局長。」

「場所は、カメルーン共和国です。」

 PCで、地図アプリを起動して、英語版ながらカメルーン共和国を確認した。

「私の記憶が確かなら、石油産出国でありながら一人当たりGDPは、世界90位。金額は、1800ドル。つまり、年収約26万円の農業国……それがカメルーンですね。」

「仰る通り、農業は、植民地時代から始めた綿花、コーヒー、カカオのみです。

 石油発見が、経済の起爆剤になりきらなかった農業国です。総統閣下。」

 そう、受け答える事務次官だった。

「規模こそはっきりしませんが、首都ヤウンデ、ドゥアラで、デモ発生しております。

 既に、ヤウンデでは大統領府に、大勢の市民が押し寄せております。」

 後に続いて報告したアフリカ支局長だった。

「私の記憶が確かなら、日本とカメルーンの時差は、八時間だった筈。

 つまり、逆算すると、暴動開始は、前日19時から20時頃。少し遅くはないですか。」

「憶測を交えても宜しいでしょうか。総統閣下。」

「許可しますよ。アフリカ支局長。」

「その時間、日本製アニメの現地語版が、放送されていました。

 その際の『目玉焼きが乗ったパン』が、引き金になったのではないかと思われます。」

「……ああ、あれですか……確か、目玉焼きをパンに乗せて、半分に切っていましたね。そのアニメなら、見覚えがありますよ。つまり、今までやってきた事が結実した訳ですか。」

「はい。『アフリカ連邦』周辺国で、『日本製のパン』を配布。『日本アニメ』の現地放送。

 こうして、『日本製のパン』の味を想起させ、政府に『アフリカ連邦』加盟を申し立てる。

 全て、総統閣下が、予想通りに事が進んでおります。ここまで予想されていたとは……。」

「私を誰と心得る。日本の政治に誤りがあるとすれば、私の頭脳を頼らなかった事です。

 ここにいる学歴だけの無能と違う! 私から命令します。清聴傾聴敬聴しなさい。」

「はっ。」

 参加者全員の声が。唱和し《ハモっ》た。

「やるべき事は三つ。まず、人道食糧支援。勿論、彼らが欲しがる『日本製のパン』を配布。

 デモ参加者、警官、軍隊、マスコミ、露天商、通行人、分け隔てなく無料配布しなさい。」

「はっ。総統閣下。」

 そう受け答えたアフリカ支局長。

「二つ目は、陛下のご出陣です。陛下は、『アフリカ連邦大統領』を兼任しておられます。そこで、『アフリカ連邦大統領』として、カメルーンを訪問。加盟をお願いして頂きます。」

「はっ。陛下に輔弼ほひつたてまつります。総統閣下。」

「三つ目は。この『デモ』を『アフリカ連邦の春』と呼称し、全世界に報道する事。

 決して、『日本春のパン祭り』などと言う残念な名前にしてはなりません。

 そして、できる限り長期化させてください。これで、首都機能を麻痺させるのです。

 政府が、無視し続けられなくなるまで、根競べに引きずり込みなさい。」

「はっ。総統閣下。」

 そう受け答えたアフリカ支局長。

「で、報告は、二つあるそうですね。お願いしますよ。事務次官。」

「はっ。では、お願いしますよ。南米支局長。」

「はい。ご報告申し上げます。総統閣下。」

「続けて下さい。南米支局長。」

「はっ。総統閣下。実は『アフリカ連邦』加盟希望国が、名乗り出ました。南米からです。」

「ほぉ……で、何処の国か、気になるところですが、報告を続けて下さい。南米支局長。」

「メキシコ、ベネズエラの二か国、今回の加盟希望国全てが。通貨アフリカを希望です。」

「まさしく、予想通りですね。『アフリカ連邦』が、軌道に乗れば、便乗する国家がすりよる。南米であった事も含めて、総統閣下の予想通りです。

 予想を外したと言えば、カナダが、希望しなかった事くらいですか。」

「圧力を強めますか。総統閣下。」

「無理強いは、よくありません。今まで通り一か月に一度の食糧支援を継続してください。

 欲を言えば、コスタリカとニカラグアが、欲しい所です。広報を続けて下さい。」

「確かに、パナマ運河は、限界です。しかし、二つも運河を追加しますか。」

「考えなさい。パナマ運河の順番待ちは、今や四週間ですよ。輸送費高騰に拍車がかかります。後二つ追加すれば、太平洋と大西洋を結ぶ運河が、三つ。大西洋とインド洋は、四つ。

 十九世紀ならいずしらず、現在は、これだけあっても足りません。欲を言えば、マレー半島にも運河を作りたいくらいです。それより重要な事があるでしょう。」

「はい。こちらの資料を共有いたします。総統閣下。」

「拝見します。…………………………………………………………………………。」

「如何なさいましたか。総統閣下。」

「これは、駄作ですね。『リテイク(再作成)』しなさい。」

「では、具体的なご指示をお願いします。総統閣下。」

「いいですか。南米が、『アフリカ連邦』に参加したがることなど予想済み。

 故に、『地球連邦』と言う新たな枠組みを作らなければ、なりません。

 『アフリカ連邦』ならぬ『地球連邦アフリカ支部』、『地球連邦アメリカ支部』。

 他にも『地球連邦亜細亜支部』。ゆくゆくは、『地球連邦日本本部』とするのです。

 これなら、日本帝国による世界征服を達成できます。

 後は。欧州、中、露、米、印度、中東も参加させてから、『宇宙連邦政府』と改称。

 軌道エレベーターを建設し、人類の宇宙進出を実現させるのです。

 こんなショボイ権力の大統領では、人類を導くことなど不可能です。

 よって、『リテイク(再作成)』しなさい。」

「では、総統閣下、メキシコ、ベネズエラには、如何返答いたしましょう。」

「それは、『前向きに検討中』としなさい。それに、加盟に向けた準備も進めるのです。

 メキシコ、ベネズエラ、カメルーン共和国の人口合計値は、約一億九千万人です。

 よって、追加で八千億の通貨アフリカを印刷、米ドル建て国債を購入しなさい。」

「総統、私から一つ質問しても宜しいでしょうか。」

「発言を許可します。総理。」

「アフリカは、地下資源が豊富にあります。が、国民に利益が還元されていません。

 如何に、対応します。」

「簡単ですよ。問題の根源は、数通りにまとめられます。対応策も以下同文です。

 一つ、欧米や中国に不平等な採掘権を強いられている。

 一つ、大統領などの支配者が、利益を着服している。

 一つ、紛争によって、採掘どころではない。

 全て、『アフリカ連邦』が、解決中ですよ。中国は、借金を肩代わりしました。

 欧米は、植民地支配の謝罪代わりに、採掘権を放棄させました。

 大統領ごとき問題ありません。日本製のパンを配って、市民を食べさせています。

 市民とてそれが、誰のお陰か気付くでしょう。全て『アフリカ連邦大統領』のお陰だと。

 さすれば、市民革命が勃発して、直轄領にするよう、地元大統領に申し立てるでしょう。

 全て時間の問題です。」

「では、総統、紛争は如何いたします。」

「あくまでも、日本製のパンを配るのは、国民だけです。武装勢力には、渡しません。

 憲法規定で、『アフリカ連邦大統領』の許可なく武装する事は、禁止されています。

 日本製のパンを拒否してまで、武装にこだわる事が如何に愚かかすぐに悟る事でしょう。」

「成程、よくわかりました。」

「私からも質問です。私達が、配った日本製のパンを略奪した者を厳罰にするよう指示しました。勿論、その場で射殺を含めた厳罰にしていますね。」

「勿論です、総統。全て記録され、報告は上がっております。」

「手緩い首を晒しなさい。まずは、恐怖で締め上げる。その後JOJOに緩和するのです。」

「はっ。少しづつ緩和します。総統閣下。」

「質問は、まだありますよ。武装勢力……反政府ゲリラ、テロリスト、犯罪者……呼称は様々。が、本質は同じです。彼らの武器を日本製のパンと交換して武装解除させる事。

 更に、日本資本の現地法人……警備保障会社で雇用し租借地で、警備員として働かせる事。

 そう指示しました。進捗……どこまで上手くいっていますか。」

「はっ。『ある程度』にとどまっています。何故なら、武器を密輸する輩がいるからです。」

「全て予想通りですよ。ならば密輸業者の情報と引き換えに日本製のパンを渡しなさい。」

「それが……虚偽情報なのです。」

「それとて、予想通りです。虚偽情報提供者は、皆殺し。で、さらし首にしなさい。」

「……何度聞いても、やりすぎではないでしょうか。それでは、中世ですよ。総統閣下。」

「いいですか。アフリカとは、原始時代から中世の頃、植民地支配を受けたのです。

 そして、現代に放り込まれた。故に、彼らの脳内は、原始時代から中世で止まっています。

 故に、法治国家の何たるかを分かっていません。よって、紛争が終わらないのです。

 わかったら、しっかり仕事をしてください。」

 今日のリモート会議は、このように閉会した。


 * * * 



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