改革への道(日本編)国防
今日もリモート会議だ。参加者は、日本帝国総理である。
まずは、全員の挨拶と名乗りから始まった。
「総統、今までも無茶な事を成してきました。が、これは明らかに次元が違います。」
「野球において、本塁打とは、安打の延長です。そして、既に証明済みです。」
「それは、『歩行』しただけですよ。『兵器』では、ありません。総統。」
「駄目ですね。現行兵器は、戦車に代表される鈍足と、戦闘機に高速戦闘になります。
地形の起伏を無視し、中間速度を有する地域制圧兵器が、今後絶対必須になります。」
「だからって、開発に幾らかかると思っているんですかぁっ!」
「見積もりなら、受け取っていますよ。開発期間二十年、十兆円だそうです。
つまり、年間五千億円。それが、二十年間です。問題ないでしょう。」
「しかし、既に『つわもの計画』を動かしています。金額は、二倍になります。総統。」
「いいかね。全ての計画が、順風満帆に行くわけではありません。故に複数必要なのです。
それは、『つわもの計画』然り『人型決戦兵器』然りです。予備が必要なのです。」
「ならば、計画完了の『目標点』を下げるべきです。今のままでは終わりません。」
「駄目ですね。日本の周囲には、核保有国が、三つもあります。故に、対抗策が必要です。」
「だからと言って、外国が放った核兵器を『掴んで投げ返す』など無茶苦茶です。
それが、できなければ計画完了したとみなさないのでは、経学が終わりません。」
「私が、再考する前に、核保有国を何とかしなさい。連中が核放棄すれば解決します。」
「だからと言って、『ミルキー・マウス』ですか。実効性に乏しすぎます。」
ちなみに、『ミルキー・マウス』とは、人間に『特殊能力』を付与する改造処置だ。
脳波などを駆使し、ネズミなどの小動物を操作し、敵国基地で破壊工作を試みる。
主に、電線や通信ケーブルの切断や、中身の露出からハッキングに繋げる。
「それなら、既に成功していますよ。現在は射程や操作可能数等欠点の克服中です。」
いずれ、私自身も『改造処置』を受ける。研究所の所長には金を掴ませているからな。
「では、計画が失敗した段階で、計画を断念する訳ですね。」
「当然でしょう。」
「分かりました。その言質で、今回は、終わりにしたいと思います。」
* * *
先程、首相には、『ミルキー・マウス』と説明したが、あれは嘘だ。
既に、『ハニー・マスター』と言う『改造処置』を施術予定だ。
これは、脳波などを駆使し、熊を操作する『能力』だ。
何のために? 今回の目的は、『北方領土奪還』だ。
つまり、北海道で捕獲した熊を、秘密裡に北方領土近辺に放つ。
そして、連中には、北方領土近辺で、現地住民を襲いまくってもらう。
結果人間が逃げ出し、自然の楽園化。そこで、大統領死去を待って、領土を買い取る。
勿論、只やっただけで上手くいくはずもない。重要なのは、『隠し味』だ。
まずは、『特定害獣駆除は、自衛隊が行うもの』と言う固定観念を国民に植え付ける。
それも、十年、二十年かける。今までは、またぎ、狩人、ハンターの担当だったがな。
そうこうすれば、『ハニー・マスター』も上手くいくだろう。
そこで、実験用に熊を捕獲する。『ハニー・マスター』を用いてな。
更に、実験用熊には、人血や人肉で餌付けする。そして、『人肉好き』個体を増やす。
それらが、百匹以上になった所で、行動開始。檻に入れた熊を鎖で繋いで牽引。
勿論、船ではない。潜水艦を浮上状態で運用する。領海ぎりぎりで、遠隔で檻を解放。
後は、熊の方が、人間の匂いにつられ、人間を襲ってくれる。陸まで泳いでな。
無論、『ハニー・マスター』で、全ての熊を操作できれば問題ない。
それ故、『人血や人肉好き』と言う属性を付与する事で、補助とするのだ。
当然だが、日本領とした後、『人肉好き』の熊は、邪魔になる。よって全て駆除。
その際、『熊肉』で餌付けした『熊肉好き』の熊を育成して、北方領土に放つ。
で、適度に『共食い』させてから、自衛隊を投入すれば問題なかろう。
厄介者の熊が、日本帝国の国益にここまで役立つ。素晴らしいことだ。
ここまでの話で、疑問を持つ者もいよう。
「君の『動物愛護精神』は、どちらの方角を向いている。」
私の答えは、単純明快だ。
「『動物愛護精神』? なんだそれ? 旨いのか。」
政治家にとって最優先事項とは、自国国益、自国民優先だ。よって私も然り。
故に、『物価半減令』で、全ての小売店・サービス業を半額にさせた。
他にも、様々な改革を断行。それに比べれば、熊の権利など無用無益無駄だ。
勿論、『ミルキー・マウス』も研究中だ。これなら、脚本は、以下の通りとなる。
『ネズミの大量発生による食糧危機』
この方針で、土地を捨てて逃亡する者ないし及び餓死者で、全滅するまでやるだけだ。
勿論、外交努力を怠ったわけではない。終戦以降、莫大な金を掴ませてきた。
が、2025年現在の大統領が、憲法改正して終身独裁者になった。
更に、領土割譲も認めない。そう憲法に明記した。現状の大統領では駄目だ。
そこで、次の大統領までに、北方領土を手放す気になるよう準備を進める。
ロシアの大統領が代替わりした所で、アラスカの時の様に売却を提案する。
こんな所だろう。
* * *




