熊くまべあぁ
今日もリモート会議だ。参加者は、陛下と宮内庁長官、日本帝国総理である。
「本日は、ご参加ありがとうございます。」
宮内庁長官のご挨拶から始まった。
「私から、質問があります。お願いしますよ。総統。」
「はっ。何なりとお申し付けくださいませ。陛下。」
「まず、北海道に勤務する裁判官を全て『無期懲役刑』にしたというのは、事実ですか。」
「はっ。お答え申し上げます。事実との相違点訂正と経緯にございます。
まず、北海道高等裁判所に勤務する裁判官全員、並びに北海道公安委員会委員長です。
彼ら全員を『無期懲役刑』に処しました。また、北海道公安委員残る全員を懲戒免職。
尚、札幌方面滝川警察署署長と副署長、北海道警察部長以上は、減俸三割三十年。
課長以上は、一割十年。更に、北海道知事、北海道砂川市市長、減俸一割一年。
以上が事実との相違点訂正点になります。
では、次に経緯についてご報告申し上げます。北海道における熊被害者数です。
2024年の数字で、約80件。尚、目撃件数は、約二千件になります。」
「そんなに! それだけの国民が、熊に襲われて……報告を続けて下さい。」
「はっ。2018年の話になりますが、地元猟友会の狩猟者が、北海道と道警の依頼で熊を射殺しました。当該狩猟者に対し、北海道公安委員会が、猟銃免許を取り消したのです。」
「取り消し? ……報告を続けて下さい。」
「はっ。狩猟者は、道警と道職員の立ち合いの基、法規制などに配慮した上、熊を射殺しました。が、後日北海道公安委員会が、当該資料者の猟銃免許を取り消したのです。
そこで、狩猟者と、公安委員会とで、法廷で争うこととなったのです。」
「成程、それは裁判結果から報告をお願いしますよ。」
「はっ。北海道地裁は、取り消し『無効』を申しつけました。」
「成程、地裁は、狩猟者と立ち合った者達の判断を『問題なし』と判断した訳ですね。」
「仰る通りにございます。勿論、建物や人間に被害があった証拠はございません。
即ち、一発の射撃で熊に命中させ、弾丸は貫通することなく熊の体内に留まった訳です。」
「成程。現場に弾丸が存在する証拠がない以上、貫通はありえない。分かりました。」
「が、問題があるのは、高等裁判所の判断にございます。」
「つまり、高裁は地裁が『問題なし』と判断した案件を『問題あり』と判断した訳ですね。」
「仰る通りにございます。こちらをご覧ください。高裁の判決文になります。」
ちなみに、書かれている内容は、『跳弾の可能性、人的被害の可能性に鑑みる』である。
これだけで、『可能性』だけで、『猟銃免許取り消しは妥当』だと言う事だ。
「………………成程。では、あなたの意見を伺いましょう。総統。」
「私は、政治家です。即ち、国民が、獣に害されるなら、害獣を殺処分する所存です。
今回の一件、獣の肩を持ち、国民の生命財産を危険に晒します。私は、許せません。」
「成程。で、処罰にした訳ですね。すると、道知事と市長は、判断の誤りとなります。
が、北海道滝川警察署の署長と副署長は、何故です。」
「実は、北海道滝川署から北海道公安委員会に対し、猟銃免許取消を上申したそうです。
尚、北海道砂川市は、滝川署の管轄になります。」
「成程。で、今回の裁判そのものの発端は、滝川署にあった訳ですね。」
「はっ。今回の一件、最高裁に移る事でしょう。その際、私の処分に配慮する事疑い無し。
さすれば、獣の肩を持つ判決は、成しえないでしょう。更に、法改正も行います。」
「必要ですか。法改正。」
「今後は、防衛省……自衛隊の管轄に致します。が、出動要請には、法規制がございます。
即ち、都道府県知事以上の権限が必要となります。これを市区町村長まで緩和します。」
「成程。そういう意味での法改正ですか。分かりました。」
「また、地元猟友会への報酬も見直します。まずは、『演習』と言う名目で駆除します。」
「分かりました。では、カメルーンの件共々、あなたが、考える通り進めなさい。」
「はっ。」
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