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我らゲーム部!  作者: 春風 ほたる
かくれんぼ
7/27

寂しかったからですぅ

 美羽に続いて全員の視線がつぐみへと注がれる。


「「「……」」」


 成程。視線を向けてもなお、三人はまだ状況を呑み込めていないようだ。全員が全員こう言いたそうである。「え? いつから居たの?」と。


 そうして少しの間流れる沈黙。その沈黙を破るためか、はたまた空気を読んだのかは分からないがつぐみは自身の頬に片手を添えてこう言った。


「見つかっちゃいましたぁ」


 この「あららうふふ」と言い出しそうなミステリアスなお姉さんチックな人物が、何を隠そう黒咲つぐみである。ゲーム部部員で、今回のかくれんぼにおいては隠れる側の人間だ。因みにお姉さんチックと言ったものの、実際にはお姉さんなどではない。美羽たちと同い年だ。ただ雰囲気がちょっと大人びているだけである。


 全身の雰囲気は大人びているものの、実はこういう後ろに急に現れたりするいたずらが好きだったりする。そういう茶目っ気もあるのだ。


「うおぅ!? いつから居たんだよ!?」


 一拍遅れて崚太は驚き、つぐみにそう尋ねた。わけが分からなくても取り敢えず口を出す崚太、流石である。他の者とは胆力が違う。


「ずっとぉ、居ましたよぉ」


 ここだけ切り取ると軽くホラーだ。つぐみの妖艶な声も相まって、余計ホラー味を際立たせている。


 そんなことは構わず、つぐみは続けた。


「普通にぃ、皆さんの後ろを歩いてましたしぃ。返事もしてましたよぉ」


 つぐみが言うには、もうずっと前からこの集団に合流していたらしい。詳しく言うと、崚太が美羽たちに合流して一分ほど経ってからかな。そして今の今まで誰にも気付かれずに後ろを歩いていたそうだ。時折会話に返事も挟みながら。そんな状態で誰にも気付かれないとは軽くホラーである。つぐみ恐るべし。


 ああ、一応補足しておこう。つぐみに気が付かなかったのは、何も美羽たちが鈍感なわけではない。美羽たちは、というか美羽は特に人の気配に敏感な方である。ただつぐみの気配の消し方が異常なだけなのだ。声も出して足音もさせていたのに誰にも気が付かれないとは……。一体どんな気配の消し方をしているんだろうか。全くの謎である。


「美羽はいつから気が付いていたのかい?」


 ――つぐみが僕たちの後ろを付いて来ていることに。


 確かにそうだ。景たちは美羽が「つぐみ、見つけた」と言ってからつぐみの存在に気が付いたのだ。だとすれば必然的に美羽は景たちよりも先に、つぐみの存在に気が付いていたということになる。美羽は一体いつ、つぐみの存在に気が付いたのだろうか?


「そうね。ついさっきよ」


 美羽がつぐみの存在に気が付いたのは、美羽の言う通り本当についさっきだ。詳しく言えば、崚太が「誰も見つかんねーな」とぼやいた辺りである。その時に人の気配に敏感な美羽でもやっと、つぐみの存在に気が付いたのだ。もう一度言おう。つぐみ恐るべし。


 それはそうと、美羽はどうやってつぐみの存在に気が付いたのだろうか? というのも崚太が合流してから一度も美羽は後ろを振り返っていない。なのに崚太の後ろにつぐみが居ることに、崚太より先に気が付いたのだ。本当にどうやって気が付いたのだろうか? 後ろに目でも付いてんのかな。


「つぐみはなんで私たちの後ろを付いて来ていたのかしら」


 かくれんぼなのに、と心の中で付け足す美羽。


 そうは言ったものの、美羽は大体分かっていた。何故つぐみが何で自分たちの後ろを付いてくるという、わざわざ見つかりやすい隠れ方をしたのかその理由は。


「そりゃあ寂しかったからですよぉ」


 曰く、つぐみは独りぼっちでいることが寂しくなったそうだ。そして一つの場所に身を潜めるのを止め、美羽たちに付いて来ていたというわけだ。


 それでも、動く美羽たちに付いて来てもなおかくれんぼということを忘れず、身を潜められるつぐみってすごくないか? 一体何者なのだろう。前世忍者だったりするのかな。いやでも、忍者でさえも普通物陰に隠れるよな。全身隠れず気配だけ消して身を潜められるつぐみとは一体、何者なのだろうか。しかも会話に混ざるという神業付きだ。謎は深まるばかり。


 にしてもそんな隠れ方をした理由が寂しかったから、か。全く、お姉さんチックな見た目をして可愛いところあるじゃないか。


「やっぱりね。そうだと思ったわ」


 美羽の予想通りの返答が返ってきて美羽はなにやら満足そうな顔をしている。笑ってはいないものの、景には分かる。崚太には分からないだろうが。


 そんな美羽に対し、景は何を思ったのだろうか。いきなり美羽の頭をぽむっとして撫でぐりする。


 美羽はその行動に一々驚きはしない。何故ならいつものことだから。美羽にとって景に撫でぐりされるという行動は、もはや普通になっている。


 普通になっている、驚きはしないものの何やら美羽は満足そう。この満足そうな顔は先程の満足そうな顔とはちょっと違う。何て言えばいいか分からないが、さっきよりもなんていうかこうへにゃっとしている。そう、一日の終わりにお風呂へ入った時みたいに。


 美羽にとって景に撫でられるというこの行為は、何とも安心する行為なのだ。

次回投稿予定は明日の同時刻です。

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