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我らゲーム部!  作者: 春風 ほたる
鬼ごっこ
26/27

突如として始まる校内放送

 始まりあれば、必ず終わりは存在する。

 それを体現するかのように、那由多たち三人がいる教室内に加奈と碧依の二人が現れた。

 加奈は今現在、碧依に首根っこを掴まれている。


「捕まえたー」


「わーん。捕まっちゃったよー」


 そう、これは碧依が加奈との勝負に勝ったことを意味していた。


 それはもう白熱した戦いだった。碧依がやっとの思いで加奈に追いつき、タッチしようとしたところで加奈は姿勢を変えて避け、すぐさま猛ダッシュ。碧依が先回りしたら加奈は急停止し、反対側に猛ダッシュ。そんなことを数分間ぶっ続けでやり、やっとの思いで捕まえたのだった。


 碧依は今加奈の首根っこを掴んでいる方とは反対の手でピースをしており、加奈はえーんえーんと泣き真似をしていた。何処からどう見ても碧依の完全勝利である。良かったね、碧依。


「おや? 楽しそうだね」


 と、そこに景が突然現れた。因みに景は今、美羽をお姫様抱っこしている。

 美羽をお姫様抱っこした状態のままぐるりと周りを見渡す景。ふむ成程。加奈と碧依の勝負は碧依の勝ちか。碧依よく勝てたね、あの加奈に。

 景は一瞬にして状況を把握した。


「およよ? 景くんは何故美羽ちゃんを抱っこしているんだい?」


 泣き真似を止め、景に視線を合わせた加奈が景に問う。加奈が今言ったのは、この場に居る誰もが疑問に思っていることだ。


「ああこれかい? 実は先程美羽が気絶してしまってね。そのままにもしておけないから、こうして連れてきたのさ」


 それを聞いてこの場に居る皆が思った。『ああ、またか』と。また景が美羽を堕としたのか、と。全く、景にも困ったもんである。


 だがしかし、景にその自覚は無い。景は景で美羽には困ったもんだと思っている。美羽にはもっと身体を強くして、気絶しないようにしてほしいと。心配になるからさ、と。いやいや、景のせいでこうなってるんだよ? ちょっとは自覚して?


 景はそっと美羽を下ろし、静かに寝かせた。


 因みに寝かせた場所は冷たい床の上ではない。きちんとフカフカな布団の上だ。……いや、ちょっと待て。何故布団がこの場にある? 緋音よ、その布団何処から持ってきた?


 キーンコーンカーンコーン。


 崚太がこの状況にツッコミを入れようとしたところで、唐突にチャイムが鳴る。それに対しゲーム部は、皆一様に首を傾げた。だってこんな時間にチャイムが鳴るなんておかしいもの。これはゲームの終わりのチャイムではない。じゃあ何だろう? 皆見当が付かない。


「あ~あ~。マイクテスゥマイクテスゥ~」


 いきなり始まった放送から、とても聞きなじみのある声がした。ゲーム部の皆はそれにピクリとそれぞれ反応する。いきなり放送を始めた人物は、そんなことは構わず続けるのだった。


「ゲーム部の皆さ~ん、聞こえますかぁ~。私ですぅ~」


 放送を始めた犯人、それはつぐみだった。名乗らなくても声で分かる。

 それはそうと皆思った。あいつ何してんの? と。


「私こと黒咲つぐみはぁ~、今放送室に居ますぅ~。私はこれからとある場所に隠れるつもりですのでぇ~、景さんと碧依さんは頑張って探してみて下さ~い。ではではぁ~」


 キーンコーンカーンコーン。


 プツンとこれまたいきなり放送が終わる。

 教室内に訪れる沈黙。それを破ったのは今回のゲームにおいて鬼である、碧依だった。


「けー」


 碧依は景に話しかける。


「何だい?」


 景もそれに対し、すぐさま返事を返した。こんな状況でも返事が遅れない景、流石である。冷静な男だ。


「ぼくはとある場所の心当たりがある。だからけーは今から全速力で放送室に向かって」


 碧依は今からそのとある場所に向かうから、景は今つぐみが居る放送室に向かってほしいと言うのだ。そうしたら多分、つぐみを捕まえることができるからと。


 碧依の意図を瞬時に理解し、景は碧依に対しこう返した。


「了解」


 景かっこいい。


 瞬時に行動する景と碧依の二人。二人は同時にこの教室内から飛び出していったのだった。

 それを見送る那由多、緋音、崚太、加奈の四人。崚太は景と碧依の二人を見送った後、四人の中で真っ先に口を開いた。


「それにしてもどういうことだ?」


 崚太、そんな抽象的な質問だと皆に伝わらないよ。


「どういうことって?」


 ほらな。那由多ありがとう、聞き返してくれて。


「いやだってよ、つぐみはこんまま放送なんかせず隠れてりゃいいだろ? なのに何でわざわざ自分の居場所知らせたんだ?」


 崚太にはそれが分からないらしい。何故つぐみはわざわざ自分から不利になるような行動をしたのか。


「どうせいつもの理由じゃないかしら」


 ガバッと美羽がいきなり起き上がり、そんなことを言った。

 いや美羽、その起き上がり方怖いよ。ホラーだよ。ほら皆黙りこくっちゃったじゃん。多分会話の内容入ってきてないよ。


「おう、藤城。いつものって?」


 前言撤回。崚太は会話の内容入って来てた。流石崚太。他の者とは胆力が違う。


「ほらあれよ。どうせ寂しかったからとかいう理由でしょ」


 美羽が呆れたようにそう告げる。それに対し皆『あ~』と納得するのだった。

次回投稿予定は明日の同時刻です。

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