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第ニ章 神都の見習少女  21話  よくみかける

お読みいただきありがとうございます。

 スキルって無意識の内に出来るものだと思ってるから、意識的に魔力を加えるとかってイメージが湧かない。

こんな時って普段よく見かける・・・・・・とこにヒントがあったりするのよね。

『そうだ! 【練成】って色んなものを加工したり創ったりするんだから、旦那様はそう言うの得意なんじゃ!?』って思い付く。


「スキルに意識的して魔力を加えたりって出来るんですか?」

「むん? 何だ、そんな事で悩んでるのか?」

「えぇ。さっきの攻撃にもっと魔力を加えたいんですけど、そう言うのってした事がなくて」

「なるほどな【練成】ははなから足したり引いたりのスキルだが、お前のはそうじゃ無いからな。その年じゃ分からなくても無理はないか」


 新しい事を教えてもらえそうでちょっとわくわく。


「いいか、魔法を使う時に魔力が魔法に変わると言うか使われる感じは分かってるよな」

「はい。使う魔法によって色々感じ方はちがいますけど」

「天地流で言うところの【魔法野】から使う魔法にとって適切なルートで必要な魔力が放出される。【魔法野】は判るよな?」

「頭の中で魔力を司る部分の事ですよね」

「実際には肉体の部位ではなくてその働きをする意識エネルギーを指してる様だが、脳の一部と考える方が鍛錬なんかには有効だよな。で、その【魔法野】から送られる魔力は実際には魔法を行使するためのものじゃない」

「魔法を具現化するのは元々この世界にある魔力であって、人は世界の魔力を思い描く魔法に導くための道を造っているに過ぎない……ですよね」

「そうだ。【魔法野】から出るのはその道造りの魔力なんだが、その造り方の上手下手で魔法の結果が違って来る」

「細い道しか通せない人は弱い魔法しか使えないし、道を造る土地が荒れている人は同じ道を通すのに余分に魔力が要る」

「あぁ。魔法の鍛錬を例えると、ある魔法が通る道の作り方を覚える、出来るだけ広い道を造れる様にする、そしてその魔法の道が通る土地を整備するってことになる」

「鍛錬の成果は【魔法野】や【世界の魔力】を認識して組み上げられたものかどうかによって結果が大きく異なるんですよね」

「だな。まぁ文言は違ってもいいがな。天地流の鍛錬は当人が意識しなくてもそれが自然に遂行される仕組みが出来上がってる。鍛錬自体が性に合う合わんの差はあるが」

「それで、今の話にはどう繋がるのですか?」

「まぁちょっと待て。まず、魔法がそう言う物だとしたら、スキルは初めから【近道】が組み込まれた魔法って言ってもいいだろう」

「近道、ですか」

「そうだ。近道だから消費魔力は少なくて済む。【職人スキル】や【力のスキル】なんかはほとんど直結に近い状態だから、発現も早いし魔力消費も復元と相殺程度だ」

「なるほど」

「近道は魔法の道みたいに自分で造った道じゃないから、ちゃんと意識していないと『行けたけれどドコを通ったか分からない』ってことになる」

「あぁ、それがあたしですね」

「直ぐに出来るかどうかは分からんがな。まず【魔法野】を意識して、次にそのスキルを一番負担の少ない使い方で起動する。その状態を維持したまま、魔力野からの微弱な魔力の流れを感じ取るんだ。感じ取れればそれが近道--魔力の通り道--だから、あとはスキルを起動する時にそこを通る魔力量を意識してやれば投入魔力が調整できる。まぁ、投入量で効果が変動するスキルじゃなければ効果はないだろうがな」

「はい、とにかくやってみます。時間が足りなく成ったら今は諦めますから、めてくださいね」


 さて、あたしのスキルで一番負担が少ないのは【聴く】だ。

まず、魔法野を意識して……、うん、よし!

次にスキルで周囲の音を聴く……、スキルに響く音の範囲が拡がっていく。

で、魔力の流れを。

全く何も分からない状態が数分続く。

【魔法野】へ意識の集中を高めていく。

『あっ! これかな』

ほんとにかすかな魔力の流れ。

うん、一度掴めば段々とよく判るように。

よし、じゃあ通ってる魔力を増やし……。


「ひやぁぁ!」

「何だぁ!?」


 スキルに響く音が届く範囲が一気に拡がって、情報量が多すぎて頭がパンクしそうになっちゃた。

【聴く】のに魔力投入するのは危険だわ。

でも、魔力投入の要領は掴んだ。

じゃあ、実際に震動空間スペイシァルスーパヴァイブレイトでも出来るかどうかよね。

まず刀を抜いて、抜き放った刀身に震動空間を付与する。

刀身上で響いている震動空間スペイシァルスーパヴァイブレイトに魔力を付加していくと。

震動幅が大きくなり、周波数もぐんと高くなる。

刀を振ってみる。

うん、刀の扱いに違和感は無い。


「おい。上手くいったのか?」

「はい、切れ味が上がってると思うんですけど」

「使ってみないと分からんだろうな」

「はい。正直言って」

「まぁ、どのみち進む予定だったんだ。ぶっつけ本番も悪くはないだろう」


 旦那ギルァム様が背嚢を背負って、超大型領域へと歩きだす。

あたしも刀を収め、慌てて後を追った。


     *


『ズバッ!』『バシュッ!』『ザムッ!』なんて擬音が入ると格好かっこ良いんだろうけど、切れ味が良すぎて何の音もしない。

竜如大蛇ドラコニックボアの鎌首が音も無く斜め下へずれて、地に落ちたその瞬間に『グァダッ!!』とあたしの足元を震わせた。

とぐろから立ち上がった胴は頭を失ったことを知らぬように真っ直ぐ伸びたまま動きを止め、次の一瞬で魔核を残して頭と共に消え失せる。

実際に刀身で斬る時にはかすかな擦過音がスキルを響かせたが、震動空間を纏わせてからは空間の振動音がごく低く唸るだけで、空気を切り裂く音さえもしなくなった。

とは言え、これだけの巨塊を両断しても音がしないのはかなり違和感がある。

今は良いけど、パーティを組んだりしたらメンバーにあたしがしている事が伝わる方が良いかも知れない。

スキルで【擬音】を付加するのを真剣に考えてみようかな。


「凄いな。大魔法か、魔法と他の技の組み合わせで瞬殺するのは俺にも出来る。だが、その消費魔力の一撃で超大型を倒す奴なんて見た事も聞いた事も無い、少なくとも俺はな」


 超大型領域に入って最初に現れた竜如大蛇ドラコニックボアが、持ち上げた鎌首で襲い掛かろうとする矢先にあたしが首を斬り落としてしまったのを見た旦那ギルァム様は妙に淡々とした調子で呟いた。

旦那様には【鑑定】であたしの魔力消費が分かるみたいで、斬れ味を増した震動空間の威力にかなりの衝撃を受けたみたい。

だって、まさか一振りで超大型魔獣が消えちゃうなんて思ってもいなくて、当の本人が一番ビックリしてるんだもの。

まぁ、竜如大蛇ドラコニックボアが超大型の中で一番細長いからたまたま刀の刃渡りで首を両断してしまえたんだけど、そうでなくても急所を的確に斬ればどんな魔獣だって真っ二つにする必要は無い。

要はあたしのスキルと刀の合わせ技が超大型魔獣の強靭な体躯を切り裂いて急所に達する事ができれば合格で、余りに簡単にあたしが合格点を取ってしまったのに呆れてしまったんだと思う。


空創系着装結界シールドウェアは使えるよな?」

「はい。大丈夫です」

「お前の素早い刀捌きに固定型の障壁シールドは相性が良くないと思ってたんだが、その点空創系着装結界シールドウェアなら動きの邪魔にならずに防護可能だ。問題はかなりの魔力を注ぎ込まないと真面まともな防御力が出ない事だが、攻撃に魔法を使わんならその分余った魔力を回せばいい。魔獣が出た時点で発動しておけば、万一急所に直撃を受けても即死は免れる。今なら俺が瞬時インスタンリ再生ジェネレイトを掛けられるし、パーティを組めばサポート役が何とかするだろう」

「なるほど、闘いの間だけの発動ならかなりの魔力を注ぎ込めますね。色々教えて貰ってありがとうございます! どうやら次のが来たみたいだから、早速試してみますね!」


 空創系着装結界シールドウェアを発動した状態で闘いを繰り返す中で色々試して、1度の闘いで総魔力量の1割前後の魔力消費で収まる位が最も効果的だろうと言う事になった。

そんな感じで進んでるうちに何と、中層の終わりが近付いて来てしまったのよね。

明日もよろしくお願いします。

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