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第ニ章 神都の見習少女  15話  街が晴れる中

お読みいただきありがとうございます!

 未明の驟雨に洗い流されたみたいにすぱんっと晴れた青緑の空が広がっている。

お日さまが昇った東からぐるんと見回しても雲なんてどこにも無い。

ぐんぐん街が晴れる中、気分良く出立してきた。


「気持ち良いですねぇ」

「そうだな。ここまで晴れ上がった空を観るのは久し振りだ」

「なんだか『晴れの日~!』って、まるであたしの門出を祝ってくれてるみたいじゃないですか?」

「ふむ。まぁ良い様にとっておけ。当分の間は中層での基礎固めで危険も少ないから、お祝い気分でも大丈夫だろう。それで手を抜く様な事もないだろうしな」

「当たり前です。折角の魔窟で手を抜くなんてあり得ませんよ!」

「そのうち手を抜きたくても抜けない様になるんだが、お前ならそれも楽しんでしまいそうだな」

「えぇ、楽しみです!」


 夜明けからまだそれ程経たない。

神都から西に向かう街道をダフネの速足で進む。

横には旦那ギルァム様の黒馬で、馬の大きさと背丈の違いで話しているとずっと空を見上げている感じになる。

これまでと違って地上の魔獣をどうこうする訳じゃないから街道を道なりに進むだけ。

荷物は全部後に続くシルファが載せてるから身軽で気楽な道中なのだ。


「低層は混むんですよね」

「あぁ。初心者が経験を積むにはうってつけだからな。だから早めに行って混む前に低層を抜けてしまいたい」

「カブトやクワガタが居ない他に魔獣の違いはあるんですか?」

「階層の区分けが他よりはっきりしてるんだ。大きな魔窟だと低層の奥に大型魔獣が出たり中層の前半に超大型が入り込んだりしてるが、コガネ魔窟は低層の前半は小型魔獣で奥が中型、中層でも大型魔獣の層と超大型とがくっきりと分かれる。だから初心者でも安心して潜れる訳だ」

「なるほどぉ。小型しか出ないならライセンス取り立てでも安心できますよね」

「何言ってる。お前だって正真正銘の『取り立て』だろうが」

「あっ、本当ほんとだぁ! あはははぁ」


     *


「うわぁぁ。もういっぱいですよ」

「そうだな。やはり夜明け前に出るべきだったかぁ。まぁしようがない。ここまで来たら並ぶしかないな」


 魔窟入り口の受付には列が出来ていて受付を抜けるだけでも半時間以上は掛かりそうだが、だからと言ってまさか引き返す訳にもいかない。

成人を迎えて間が無い若い探究者達に混じって指導役らしいベテランがたまに目に付く列の最後尾に並んだ。

あたし達もあんな風に見えてるんだろうかなんて、ぼうっと考えてるところに後ろから声が掛かる。


「ギルァムさんじゃないですか。こんな所で珍しいですね」

「あぁ、君か。久し振りだな」

「えぇ、例の霊山魔窟以来ですが、今日はどうされたんですか?」


 何と、あの㊙の掟破り事件で助けた受付係のお兄さんだ。


「そっちこそどうした、転勤か?」

「はぁ。ここの責任者にね。確かに立場は上なんですが、栄転なのか左遷なのか自分でもよく分からなくて」

「どっちにしても、あの事件の影響だな」

「えぇ。まぁ給料も上がったし仕事も気楽なんでありがたいんですが、これ以上の昇進はないかも知れません」

「そうか。もし先々待遇に不満が出るようならウチの店に来てもいいぞ」

「ありがとうございます。さっきも言った通り今は不満も無いし、ずっとこのままでも困らないかも知れませんからね。それで、そちらは……。あぁ、あの時のお嬢さんにライセンスが下りたんですね」

「そうなんだ。今日が初入窟でな」

「そうでしたか。それはおめでとうございます!」

「ありがとうございます!」

「しかし、お嬢さんの力なら低層は役不足でしょう?」

「そうなんだが。並ばんことには中層に下りることも出来ないからなぁ」

「あぁ、御存じないんですね。あまりに低層が混むので私の権限で2層目への最短ルートを専用に確保したんです。入り口も別で……。あぁ、なるほどぉ誰も居ないから分かりませんよね。こちらです、どうぞ」


 よく見ると確かに少し離れたところに受付カウンターがある。

でも係員の姿がないから、知らない者にはその存在すら分からないでしょうね。


「いやぁ、失礼しました。では、ライセンスをご提示下さい」

「なんだい。責任者自ら受付か?」

「えぇ、人手が足りない時はこんなものです。はい、上級相当の記録と、こちらは無記録の仮ライセンスですね。上級者の付き添いで中層入窟と言う事で間違いありませんか?」

「はい。お願いします」

「承知しました。それではどうぞ」


 受付を通り抜けると再度一般受付の入り口に合流するのだが、その間は設置型の柵で区切られている。

こちら側は荷物を背負った大柄な男性なら1人がぎりぎりの幅だけど、人っ子一人居ないのでスイスイと進むことが出来る。

魔窟自体を改造したり何か手を加えてもしばらくすると復元してしまうけれど、載せるだけの柵が排除される事はない。

入り口付近は小型魔獣も滅多に現れないので、ある程度の強度があれば時折メンテナンスをするだけで維持できるだろう。

柵のあちら側には既にいくつかの分岐が在ったけれど、こっちは一本道のまま分岐路の1つに入る事になった。

おそらくこの先が2層目への降り口に直結しているのよね。

低層が混んでるといっても入り口と第1層だけをやり過ごしてしまえば、あとは他の探究者を追い抜く程度の事は造作ない筈。

へぇ、コガネ魔窟の新しい責任者さんは中々頭が良いみたい。

さっき旦那ギルァム様がスカウト染みた話をしたのって責任を感じたとかもあるだろうけど、【鑑定】とかでその辺りの能力も見越した上での事に違いないわ。

なんて抜け目がないんでしょう。


 第2層に下りるまでは小型魔獣が一二いちに頭で襲って来るだけ。

あたしたちは歩みも止めずにナイフで急所を突いて放って行くんだけど、初級者さん達の間では結構騒がしい活劇になってたりするみたい。

小型魔獣なんて地上にも居るんだからそこで演習して来ればいいのにね。

第2層への降り口で初心者さん達と合流になるんだけど、この辺りはそんなに混み合っていない。

やっぱり小型魔獣に手古摺る初級者が結構いるのよね。

探究者が自己責任って言うのは常識になってるけど、仮ライセンスの試験があんなに面倒だったのに普通のライセンスを持ってる人達がこれじゃ全くの拍子抜け。

旦那ギルァム様に訊いてみると『4度目の入窟で第2層に到達出来ない者のライセンスはその時点で失効するんだ』なんて初耳じゃない!

まぁあたしにその心配は無いから言わなかっただけでしょうけど。

そう聴くと地上演習もしていない探究者が多い理由が分かった気がする。

これは【選別】なのよね。

才能さえあればぶっつけ本番でも第1層を抜けるのは難しくない筈だし、才能も無いのに何の準備も努力もしない輩が残ってもしようがない。

だからそんな人達には先輩の誰もアドバイスなんてくれないんだ。

多分入り口でベテラン探究者と一緒に居た初級者達はきっと何かの縁があるか、お金を払ったか。

まぁそれだって努力のうちだからいいんでしょ。

小型魔獣さえ安全確実に倒せる様になれば地上の討伐任務をこなせる立派な探究者になれるんだから。


 あたし達は第2層に下りると他の探究者達を追い越してどんどん進んだ。

小型魔獣は徐々に群れが大きくなってくるけど何の障害にもならない。

5層目は10頭近い群ればかり、ここまで来ると他の探究者は極端に少なくなる。

群れ単位で倒すのが面倒だから直接攻撃してくる魔獣だけを倒しながら進んで、4つ位群れが集まったところに灼熱バーン襲雷サンダーボルトを二人掛けして殲滅する事にした。

そしてやっと6層目。

まだ低層の半ばだけど、ここからは中型魔獣の領域。

やっと少し歯ごたえのある魔獣が現れる。

さぁ最初はツノヤマイヌそれともオオヅメネコ?

地上では見れない飛行型のシロバネタカやヤミガラスが出て来たら嬉しいかも。

明日もよろしくお願いします♪

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